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『日本橋』 青空文庫
やがてお千世が着るようになったのを、後にお孝が気が狂ってから、ふと下に着て舞扇を弄んだ、稲葉家の二階の欄干に青柳の糸とともに乱れた、縺るる玉の緒の可哀を曳く、燃え立つ緋と、冷い浅黄と、段染の麻の葉|鹿の子は、この時見立てたのである事を、ちょっとここで云って置きたい。
序に記すべき事がある。それは、一石橋からこの火の番の辻に来る、途中で清葉に逢った前。
縁日はもう引汐の、黒い渚は掃いたように静まった河岸の側で、さかり場からはずッと下って、西河岸の袂あたりに、そこへ……その夜は、紅い涎掛の飴屋が出ていた。
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