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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

学円 谷の姫百合も緋色《ひいろ》に咲けば、何もそれに不思議はない。が、この通り、山ばかり、重《かさな》り累《かさな》る、あの、巓《いただき》を思うにつけて、……夕焼雲が、めらめらと巌《いわお》に焼込《やけこ》むようにも見える。こりゃ、前垂より、雪女郎で凄《すご》うても、中の河内が可《い》いかも分らん。何にしろ、暑い事じゃね。――やっとここで呼吸《いき》をついた。

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