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 『五大力』 従吾所好

 欄干の下を通ると見ると、水草の根が切れたやうに、底から、ぼろ/\と静かな水銀の泡が立つて、ぶくりと仰向に成つた顔が、其の赤めくれの、どろんと目球がぶら下つて、――私は話すのも気の毒です――一目見るうちに、何うしたんだか、手は手、足は足と一ツづゝに岐れて、首も離れた、乳のついた、腹ばかりが、先へ立つて、ずる/\引ずつて流れて行く。
 大概なものでも、――叔父さん、其を、何と……袖へ花片が散つて掛つたのも、其のまゝにしようか、払はうか、と一時苦労をする女。土左衛門の、そんなを見て、気に為ないで居られますか。何うしよう、何うしよう、あんなに成つたらどうしよう、と其ばかりを苦に病んで、寝ても忘れられなかつた果は、――霞は気が違つて了ひました。……

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