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 『五大力』 従吾所好

 大概なものでも、――叔父さん、其を、何と……袖へ花片が散つて掛つたのも、其のまゝにしようか、払はうか、と一時苦労をする女。土左衛門の、そんな顔を見て、気に為ないで居られますか。何うしよう、何うしよう、あんな顔に成つたらどうしよう、と其ばかりを苦に病んで、寝ても忘れられなかつた果は、――霞は気が違つて了ひました。……
 自分では、霞は、……それですから、目の球が両方、頬辺の上まで下つて、額が抜上つて、腹ばかり膨んで、身体は骨と皮ばかりと、狂つた心で、然う固く信じて居ます。
 ――ですから昨夜、夜中に、深川の河岸の材木の中で、私が其面を見着けました時、――貴方は、大事な面を剥〈ぬ〉がせて、目のぶら下つたのを見たいのですか、ばあ――」

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