検索結果詳細


 『五大力』 従吾所好

 此方は、面を取戻す……其の話が入組むので、材木屋の主人も、断つて、と云ふ。昨夜は木場の其の霞の座敷で泊りました。可厭な事には、病人が、何時誰に聞くつて事なしに、死んだ婦の、不断、饒舌つたり、言つたりした事を覚えて、同一やうに、遣るんですつて。辻褄の合はない、続きのない、蒼空へ、颯と雨が降るやうに――小弥太さん――と呼ぶ事がありましてね、其処に居るやうです。えゝ、腹の中に、天井裏に、屋の棟に……
 此方も悩み抜いて、夜が明けたと、思ふと、がつかりして、埒くちはありません。正午〈ひる〉まで寝て、それから此方へ参つたんです。
 帰る時分には、霞は、すや/\と寝て居ました。――

 965/1139 966/1139 967/1139


  [Index]