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 『婦系図』 青空文庫

 と歌の方も衣食みちみちのあとは、虫蝕《むしくい》と、雨染《あまじ》みと、摺剥《すりむ》けたので分らぬが、上に、業平《なりひら》と小町のようなのが対向《さしむか》いで、前に土器《かわらけ》を控えると、万歳烏帽子《まんざいえぼし》が五人ばかり、ずらりと拝伏した処が描いてある。いかさまにも大吉に相違ない。
 主税は、お妙の背後《うしろ》姿を見送って、風が染みるような懐手で、俯向き勝ちに薬師堂の方へ歩行《ある》いて来て、ここに露店の中に、三世相がひっくりかえって、これ見よ、と言わないばかりなのに目が留まって、漫《そぞろ》に手に取って、相性の処を開けたのであった。

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