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『天守物語』
泉鏡花を読む
薄 其の儀は畏《かしこま》りました。お前様、まあ、それよりも、おめしかへを遊ばしまし、おめしものが濡れまして、お気味が悪うござりませう。
夫人 おかげで濡れはしなかつた。気味の悪い事もないけれど、隔てぬ中の女同士も、お亀様に、此のまゝでは失礼だらう。(立つ)着換へませうか。
女郎花 次手《ついで》に、お髪《ぐし》も、夫人様《だんなさま》。
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