LOVE IS ON OUR SIDE

 空の白み始めた頃、腕の中に眠っている少女を起こさぬ様に、そっとベッドを抜け出しシャワーを浴びに行く。ふと、振り返るとゆったりと安心しきった少女の横顔が目に入る。
 寝顔も可愛いな、とそんな事を考え知らず知らずの内に微笑む。と同時に、身体の中に熱い物が駆け巡る。まだ、愛し足りない。一晩中愛し合い、求め合っていたと言うのに。
「冷たいシャワーが必要だな。」
 苦笑しつつ、立ち去り難い想いを押え、オスカーは熱く燃える身体を冷ましに行った。

 本当の所、愛の告白をして、すぐに愛し合うつもりはなかった。何しろ、自分と彼女は経験が違い過ぎる。幼さの残る彼女が未経験だと言う事を考慮しても、当分はプラトニックにするつもりだったのだ。あの時までは。
 愛の告白をした後の彼女の瞳の一途さに、思わずキスをした。それがオスカーの自制心を崩してしまった。ほんの軽いキスのつもりが、燃える様に激しいキスになり、そのままふと気付いた時には自分でもどうしようも無い位燃え上がってしまった。
 何時の間にかアンジェリークの身体から一枚一枚布が剥がされ、巧みな愛撫に未経験な身体が反応する。多分、アンジェリークが一言「やめて」と言えば、オスカーも正気に返ったと思う。が、未知の感覚に溺れていた彼女はその一言をとうとう言えず、オスカーもまた愛する少女の敏感な反応に溺れて最後まで突き進んでしまったのだ。
 自制心を無くし未熟な少年の様に振る舞ってしまった事で、オスカーは自分自身に腹を立てた。
 もっと、彼女を大切に扱うつもりだったのに。少しづつ愛の言葉を囁き、キスに慣れさせ、戯れる様な愛撫をし。それなのに、自分の欲求に負け、最初と最後が入れ替わってしまった。
 彼女が突然の事に驚いてはいても嫌がっていなかった事だけが、オスカーにとって救いだった。
 だから、決めたのだ。暫くは自制しようと。
 アンジェリークの柔かい肌を求めて、身体が熱くなった時は冷たい水を浴びて我慢した。キスをしている時もなるべく自分でブレーキがかけられるうちに止めた。
 彼女自身がオスカーを求める様になるまで、ギリギリまで自制する事にし。
 昨夜、夜の公園を二人きりで歩いている時ふとした事で体が触れ合い、オスカーは待ちわびた時が来たのを悟ったのだ。
 オスカーの私邸に連れてこられたアンジェリークは、最初のうちこそ不安そうにしていたものの、優しいキスと愛撫に全てを忘れた。そして自分からもおずおずと未熟な愛撫を返し、オスカーを燃え上がらせた。
 二人は一晩中、愛の言葉を囁き続け、肌を重ねあった。彼女が疲れ眠るまで。

 シャワーを浴びて出てくると、アンジェリークは既に起きていた。
 昨夜の名残か少し肌を上気させ、何処から見つけたのか、オスカーの彼女には大きすぎるシャツを着て。
 シャツの裾から覗く脚や開き過ぎた襟元に見える胸が、オスカーの冷ました情熱にまた火を付ける。彼女は、自分がどんな風に見えるか判っているのだろうか?
「ねぇ、オスカー様?」
「ん?」
 上目がちにオスカーに話し掛ける彼女に、優しくしなくては、と思う。少なくとも今は。
 が、オスカーのそんな気持ちを知らず、アンジェリークはとんでもない事を言い出した。
「男の人って、やっぱり胸の大きい女の人の方が好きなの?」
「いや、それは……」
 一瞬答えに詰まる。何故、そんな事を訊くのだろう。そしてはたと思い当たる。
 もしかして彼女は、暫くオスカーが自制していたのを誤解していたのではないだろうか。
 彼女を大切に思うが故にあえて抱かないでいたのに、一度抱いたきり暫く放っておかれた事で彼女なりに色々と考え。それが胸の大きさのせいと考える辺りがまだ、子供だな、と思う。と同時に愛おしくなる。
「なんでそんな事訊くんだ?ん?」
「きゃっ。」
 ベッドの上に座っていたアンジェリークを勢いよく押し倒す。アンジェリークの驚きの叫びは、すぐに羞恥のそれと変わる。
「い…やんっ、オスカー様っ。また?」
 オスカーはアンジェリークの着ていたシャツの大きく開いた胸元を更に押し広げ、露になった形の良い胸に唇を当てた。既に、昨夜の行為の跡が残る肌に新たな跡を残す。
「んっ。」
 すっかり敏感になった肌を巧みな愛撫で更に敏感にされ、アンジェリークは押さえた喘ぎ声を漏らした。
「君が悪いんだぜ。アンジェリーク。」
 胸元から少しづつ移動していったオスカーの唇は、アンジェリークの白い首筋に辿り着き、柔らかな甘い肌を味わい始める。
「あんっ。」
 オスカーに抱かれるとたちまち思考力の無くなってしまうアンジェリークは、オスカーのなすがままに、ゆっくりと愛撫する様にシャツを脱がされた事に気が付かなかった。
 羞恥で真っ赤に染まったアンジェリークの顔を見ながら、胸の蕾を含み、転がす。その度にアンジェリークの身体は敏感に反応する。
「二回でも三回でも、永遠でも足りない位だ。この俺をこんなに夢中にさせるなんてな。」
「やっ…」
 本当に、何回でも足りない。無垢な少女が大人の女性として花開くのを見、反応する様を見るのは自分でも初めての経験だ。彼女の全てが欲しい、と思う。
「あっ…オ…オスカー様………」
 柔らかな首筋に唇を当てながら、手は胸を包み愛撫する。そして、胸から平らな腹部へ、腹部から一番敏感で繊細な部分へと指を走らせる。
「ふあっ。」
 ビクン、と身体が弓なりになり、アンジェリークの両足が押し広げられる。何をされているか理解した時には既に、オスカーの唇は柔らかな花弁を探し当て、蜜を吸い始めていた。
「やんっ、だめえっ。そんなトコロ………」
 懸命にオスカーを押し戻そうとするが、両足をしっかり押え込まれている上、力が出ない。結果、悪戯にオスカーを刺激するばかりなうえ、アンジェリーク自身も高まっていった。
 繊細な花弁を味わい、弄んだオスカーの舌は再びアンジェリークの胸に行き、首を回り耳の後ろに行きつく。アンジェリークの胸の蕾は固く尖り、蜜の溢れる花弁と共にオスカーの優しい愛撫になす術も無かった。
「い…やんっ……いじめないでっ……」
「苛める?そんな事する訳ないだろう?」
 吐息交じりに泣きそうな声で訴えると、オスカーの心外そうな返事が返る。
「だって……オスカー様………」
 アンジェリークの訴えの間も、オスカーの指は柔らかで敏感な花弁を愛撫し続ける。
 膝の上に座らせ、優しく愛撫する度、アンジェリークの身体は敏感に反応する。まだ、然程経験が無いので自分からどうして良いのか判らないアンジェリークは、オスカーの愛撫にされるがままになっていた。そして反応する度柔かい肢をくねらせ、オスカーはますます燃え上がっていく。
「そ…そんなにさわっちゃ、イヤあ…んっ、だめ…えっ…」
 オスカーの指が花弁の中心を探し当て、ゆっくりと愛撫し、アンジェリークの興奮もますます高まり。
「あ!」
 胸の固く尖った蕾を噛まれ、思わず叫ぶ。
「あ、あんっ。」
 首筋と、胸の蕾と、敏感な花弁の3ヶ所を同時に愛撫され、しどけない声を立てる。
「はあ…んっ。あ…っ。」
 一晩中していた愛の行為の熱も冷めやらぬうち、こんなにも反応する自分がアンジェリークには信じられなかった。が、確かにこの喘ぎ声をたてているのは自分なのだ。そうおぼろげながら考えるとますます顔が火照り赤くなる。
「あっ…!」
 オスカーの指は更に花弁の深部へと入り込み、先端へ戻り、敏感な部分を弄ぶのを繰り返す。その度にアンジェリークの身体は燃え上がる。
「だっ…めっ、そんな…っ、動かしちゃ…。」
 アンジェリークの訴えとは逆に、オスカーの愛撫は更に激しさを増した。
「やっ…ん、あ、ああんっ。」
 胸の蕾を吸いながら、ゆっくりと仰向けに寝かせると、アンジェリークの反応が少し鈍くなる。
 感じなくなった訳では無さそうだな、とオスカーは更に胸に両手を当て、二つの蕾を交互に吸う。と、潤んだ瞳が何かを訴えるように宙を見詰めた。
「アンジェリーク。そろそろ……か?」
 オスカーの問いにコクン、と頷く。
 アンジェリークの肯定に、オスカーはすっかり受け入れる準備の出来たアンジェリークの身体に己を差し入れた。
「!」
 声にならない声をあげると同時に、オスカーの腰が動き、アンジェリークもそれに合せて動き出す。動く度に、喘ぎ声が漏れる。
 オスカーの熱い情熱がアンジェリークの身体を貫き、広げられた両足は自然にオスカーの腰に絡まる。
「…つっ。」
「痛いのか?」
 アンジェリークの小さな叫びにオスカーは一旦動きを止める。
「だ…だいじょうぶ。」
 心配そうオスカーを安心させたくて、涙交じりながら、ゆっくりと微笑む。
「まだちょっと………慣れて…ないから…。平気……続けて……」
「無理しなくてもいいんだぜ?」
 オスカーは少し後悔していた。こんなに短時間に何度も抱くんじゃなかった。彼女は壊れそうじゃないか。まだ、愛し合う事に慣れていない少女に無理をさせてしまった。
 しかし、オスカーの心配をよそにアンジェリークは大丈夫、と答えた。
「だって痛い原因はオスカー様の……」
「俺の?」
 胸を揉まれながら、アンジェリークはつかえつかえ、言葉を続ける。真っ赤になって言いにくそうに。
「お……大きいんですもの…」
 一瞬オスカーの頭の中が真っ白になった。理解し、赤くなる。
 経験の浅いアンジェリークには、オスカーのそれは少々大きく、たとえどんなに上手くても痛みを伴う物なのだと、この時初めて納得いった。
「それは…悪かったな。慣れてもらうしかないぜ。」
「きゃん。」
 照れ笑いをしながら、アンジェリークの腰を更に引き寄せる。
「自分の事で頭が一杯で、君の事にまで気が回らなかったぜ。あんまり君が素晴らしいんでな。」
 頬に唇を寄せ、そっと囁く様に言う。と、アンジェリークは夢見るような表情になり、つかえながら本当かどうか確かめる。
「嘘なもんか。でなければこんなに夢中になったりしないぜ。」
 ぎゅっと抱き締め、再びアンジェリークの身体に分け入る。何度も、何度も。
 激しい動きに何時の間にかオスカーにしがみ付いていたアンジェリークの両腕は離れ、きつくシーツを掴んでいた。そして何度も堪える様に、叫ぶ様に喘ぎ声が口から漏れていく。
「あ?」
 一瞬、理解できない温かい何かがアンジェリークの身体の中に入った。
 オスカーは脱力してアンジェリークの身体の上に重なっていた。
「な…なに?」
 胸を掴まれ、うつ伏せにされながら、何とか首を動かしオスカーの顔を見ようと努力する。
「あんまり………可愛い声で叫ぶから我慢できなくなっちまったぜ。」
 アンジェリークの可愛らしい、まだ初な反応も手伝って、オスカーは予定していたようにアンジェリークの身体の外に自分を出す事が出来なかった。ただ、アンジェリークも同時に絶頂を迎えたらしい事は判ったのでそれが救いと言えば救いだったが。
「小悪魔だぜ、君は………」
 背後からそっと胸を持ち上げ、肩に口付ける。激しい愛の行為に、肌は少ししっとりと濡れていた。
「わ…私………」
 アンジェリークが喘ぎながら、言う。
「もうちょっと経験があったら………オスカー様が満足できるかしらって…‥」
「冗談でもそんな事言うもんじゃないぜ。」
 思わず、ぎゅっと強く胸を握り、アンジェリークが声を上げた。
「やんっ。」
 背後から腰を引き寄せ、動かす。何度も、何度も。蜜に溢れた花弁の中でオスカーが幾度と無く侵入していき、その度にアンジェリークの喘ぎ声が漏れる。
「愛し合う方法なんて俺が教えてやるから、他の男に教わろうなんて考えるんじゃないぜ。」
「あっ、あんっ。」
 アンジェリークの声が再び熱を帯びる。
「結構嫉妬深いんだぜ、君に関しては………な。」
「オスカー様…」
 にっこりと笑って言うオスカーを、息を弾ませながら見詰める。
 オスカーは、本当に自分で良いと言ったんだろうか?そんな疑問がアンジェリークの頭を巡ったが、愚問だ、とすぐに思う。今までの行為が物語っているではないか。
 だから、自分も正直に言う事にした。今まで思っていて口に出さなかった事。言ったら嫌われるかも、と思って言えなかった事を。
「私も……嫉妬深いかも………」
「ほう?」
 吐息交じりに話し始める。言い始めれば、続けるのは簡単だった。
「だって……オスカー様ったら、綺麗な女の人をいつも連れて歩いて……いつもいつもよ。嫉妬しないでいられなかった。」
 まだオスカーに何も言えないでいた頃。何も言われなかった頃。オスカーの周りにはいつも美しい女性が居た。見る度に、自分なんか相手にされない。そう思い知らされた。
 だから今、この状況が実は一番信じられない。本当は夢ではないだろうか?
 しかし、アンジェリークのそんな考えとは裏腹にオスカーの愛の行為は深まる一方だった。
「今は君だけだ。君以外目に入らない。」
 オスカーの腕が、アンジェリークの身体を隅から探り、敏感な所を感じ取ると、すぐに愛撫し陥落させる。その度にアンジェリークの悶えるような喘ぎ声が漏れていった。
「今までさまよっていたのは君を探す為だから。もう迷わない。」
 長い、長い口付け。オスカーの言葉を証明するかのように。
 再び、二人は愛の行為に溺れていった。

 すっかり日が高くなった頃ようやく二人の恋人同士は落ち着いた。まだ、服は着ていなかったけれど。
「オスカー様ったら。何回やれば気が済むんですか、もう………」
 赤くなりながらアンジェリークが言うと、機嫌の良い晴れやかな顔でオスカーが答える。
「何回でも気が済むって事はないぜ。君の体が心配だから止めたけどな。」
 首筋にキスする事を忘れずに。
「そう言えば胸がどうのって言ってたよな。」
「えっ?ええ。」
 突然の言葉に一瞬アンジェリークは何を言われたのか判らなかった。でもそう言えば、確かにそんな事を言った気がする。長い長い愛の行為の前に。
「俺に限って言うなら胸の大小は関係無い。俺が好きなのはアンジェリーク、君の胸であって他の女の胸じゃあ意味は無いぜ。」
「あら…」
 きっぱり、と言うオスカーに思わず頬を染める。
「まあ、そうだな――」
 ニヤリ、とオスカーの口元が面白そうに歪み。
「強いて理想をあげるなら、だ。」
 言うと同時にアンジェリークの肩を引き寄せる。
 アンジェリークにしてみれば、またか、と思う動きだった。
「抱き締めて手に触れた時、俺の手の動きや唇に触れて。」
「やん。」
 言いながら、膝の上に座らせてオスカーの手は毛布に包まれたアンジェリークの胸をまた露にし、愛撫して柔らかな蕾を啄ばむ。
「あんっ。」
 思わず、声を上げる。身体中オスカーの愛撫の跡が残り、まだ熱を帯びて敏感になっている肌は簡単に反応する。
「敏感に反応してくれる、そんな胸が理想だぜ。」
「やんっ。」
 吸われた胸をつん、と指ではじかれ声を上げる。
 本当の事を言えば、アンジェリークの胸の大きさは確かに今まで付き合ってきた女性に比べれば大きいとは言えず、普通としか言いようが無い。胸の大きいだけの女性ならいくらでも知っている。が、まだ未熟で未発達な彼女の年齢から考えるに、充分な大きさだ、と思う。多分、この先オスカーとの愛が深まるにつれ、身体の方も成熟しそれこそアンジェリーク自身が自信の持てるプロポーションになるだろう事は容易に想像できた。
 だが、そんな事は問題では無い。本当に、彼女自身だからこそ意味があるのだ。彼女が愛されている、と言う自覚は多分この先当分無いだろう。どちらかと言えば自信を失う事の方が多いと思う。
 それでも。
「もう一度やるかい?」
「知りません。」
 ぷい、と横を向いたアンジェリークを見ながら、オスカーは楽しい幸せな気分に浸っていた。
 彼女が可愛くて仕方なくて。絶対に手放したくない、大切な宝物を手に入れた喜びを、当分は胸に秘めていこうと思った。

−FIN−

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