エイリアン2


ALIENS

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作成日 2002/4/21

リドリー・スッコトの「エイリアン」が日本公開されたのは’79年7月のこと。

後に「トータル・リコール」の原案・脚本を書くダン・オバノンとロナルド・シャセットが原案
をまとめ、オバノンが脚本を執筆、CF界出身のスコット(「ブレード・ランナー」)が監督に
当たった。凶悪エイリアンのデザインはスイスの異色アーティスト、H・R・ギガーが担当、
「キング・コング」のカルロ・ランバルディがエイリアン頭部の造形とメカニカルを製作した。
SFXは「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」のブライアン・ジョンソンらが担当、ギガー、ランバ
ルディ、ジョンソン(他2名)はアカデミー特別業績賞(視覚効果)を受賞した。

アイデアは’58年の「恐怖の火星探検」(TV公開)に酷似していた。しかしオバノンの脚本
は宇宙船という密室の中の恐怖をビビッドに描き、スコット監督がCFでならしたスタイリッシュ
な映像でそれを鮮烈にフィルムに定着させた。特筆ものはやはりギガーによるエイリアンのデザイ
ン。以降、彼の影響を受けたモンスターが銀幕を跋扈することになったのだから。またこの作品で
スターとなったシガーニィ・ウィーバーの好演も忘れるわけにはいかない。従来、SF・恐怖映画
の女性は怪物に会うと悲鳴を上げ、気絶するのがつねだったが、有能な航海士に扮した彼女はおび
えながらも最強の生きものに立ち向かっていくのだ。こうしたヒロイン像は’78年の「ハロウィン」
とともにSF・恐怖映画の強い女性の先駆けとなった。

それから8年後、続編が製作され公開された。それが本作だ。作品がヒットすると続編が作られる
のは映画業界の常識。「エイリアン」も早い時期から続編製作が噂されていた。しかし、前作で
製作を担当したゴードン・キャロル、デイビッド・ガイラー、ウォルター・ヒルのトリオはじっくり
構えていた。それぞれが製作者、脚本家、監督として多忙だったこともあるだろうが、続編を撮る
ことができる監督の登場を待っていたのだ。’84年、ガイラーとヒルは1本の映画を見て、続編を
作れるのはこの男しかいないと判断する。見た映画は「ターミネーター」、監督の名はジェームズ・キャ
メロンだった。

キャメロンは’54年生まれ、コミックス・アーティストから作家に志望を変更、さらに食べるため
にトラック運転手していた’80年ごろにロジャー・コーマンのニュー・ワールド映画の職を得て、
映画界に転身した。「宇宙の7人」や「ニューヨーク1997」でプロダクション・デザインや
SFXの仕事を経験、’82年「殺人魚フライング・キラー」で監督デビューを果たす。が、これは不
本意なものに終わった。その後ニュー・ワールドの同僚だった妻君ゲイル・アン・ハードをプロデュ
ーサーに製作したのが「ターミネーター」で、一躍注目の監督となった。なお「エイリアン2」に
続く「アビス」撮影中にハードと離婚、「ブルースチール」のキャスリン・ビグロー監督と再婚した。

抜擢されて「エイリアン2」の監督となったキャメロンはまず脚本づくりから着手した。続編が
つまらないのは、ヒットした前作の怪物やキャラクターに頼るばかりで、ストーリーがないがしろ
にされたためであることが多かったからだ。

キャメロンのアイデアは前作のファンを驚かすものだった。ファンは自分勝手に続編の予想をする
ものだが、彼は予想の裏を完全にかいた。ノストロモ号の救命艇ナルキッソスは地球への軌道を外れ、
リプリーが救出されたのは事件から57年後のことだった。詳しくは作品をみればわかるので多くの
説明はしないが、57年の不在の間に地位も仕事も家族も失い、しかもエイリアンの恐怖に悩むリプリー
は、悪夢と対決するためにエイリアンと遭遇した惑星アチェロンに再度向かうのだ。

こうした動機の説明が冒頭20分ほどに凝縮して描かれる。好調な滑りだしだ。軍事用輸送船スラコ号
内の集団演技(前作の登場人物は7人だったが、続編は15人)も巧み。アチェロンで唯一の生存者、
少女ニュートを救出後は戦闘の連続。その迫力がたまらない。ちなみにリプリーのニュートに寄せる
愛情は、彼女が不在の間にガンで死んだ娘(映画には直接描かれないが、ノベライズにくわしい)に
対するそれであり、クライマックスのエイリアン・クィーンとの戦いも娘を守り、助けたいという母性
のなせるわざだった。一方、エイリアン・クィーンの戦いも自分の子供たち(エイリアンの群れ)を
殺されたうらみによるもので、ラストは母性愛の究極の戦いだったと解釈することができる。

そんな理屈ははともかく、この作品の密度の濃さは並じゃない。人間ドラマがあり、宇宙空間の映像、
未来の銃器やパワー・ローダーといったアイデアを間にはさみながら、ラストの戦闘に突き進む。
138分とかなりの長尺の作品ながら、強烈なビジュアルの連続でだれるところがない。

アカデミー特殊効果賞受賞のSFXにもふれておこう。受賞者はロバート・スコタク、スタン・ウィン
ストン、ジョン・リチャードソン、スザンヌ・ベンソンの4人で、それぞれオプチカル、クリーチャー
製作、フロア・エフェクト、ミニチュアその他造形の代表者である。なかでもウィンストン率いる
クリーチャー・クルーの活躍が目覚ましい。前作のギガー・デザインのエイリアンに加えてエイリア
ン・クィーンという怪物を製作、ラストの大きな見せ場を作った。なお、クィーンのコンセプトは自身
優れたイラストレーターであるキャメロンのものだ。

「エイリアン2」はキャメロン監督の実力を如何なく発揮した作品だ。エンターテインメント作品と
しては完璧。いまやSFの名作の一本に数えられるほどだ。ブレーキの壊れたローラーコースターに
乗って走るような恐怖と快感がここにある。(冨谷 洋) フォックスビデオ 「エイリアン2」より




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