皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
ご存知のように、近江楽堂ではこれまで6回のバッハ・マスタークラスを開催し、たくさんの方々においでいただきました。あの場所での心地よさにすっかり味を占めた私が、なんとかこのような会を続けていきたいものだと考えてまいりましたことを、クラスにおいで下さった方はご存知です。あの会を発展的に継続するのに相応しい名前はないかと思案した結果、『ガット・カフェ』とすることに致しました。生々しい、とおっしゃる方もおありかもしれませんが、ガットの原料についてはあまり想像力を逞しくせず、象徴的な意味合いだけを考えて下さるようお願い致します。
『ガット』についていまさらご説明するまでもないでしょう。私の考えでは、弦楽器というものはまずガットを張って弾くようにできているものであり、そこから出発することは当然です。このことについては今まで何度も書いたり話したりしていますが、この会でまた、さらにお話できることでしょう。
では、なぜ『カフェ』か。それは『教室』とか、ありきたりの『レッスン』にはしたくない、ということなのです。一人が弾き一人が教え、回りが見学する、という決まりきった一方通行ではなく、また学校で行われる個人レッスンのようでもなく、ふと入ったカフェでは熱い議論が展開していた、というような場所にしたいのです。もちろん、申し込みもお受けしますし、来た人皆が弾くわけではありませんから、そこまで偶発的にはなり得ませんが、質問、意見は随時自由、毎回のテーマから出発してどのような方向へでも話が進展できるようにはしたいのです。
本当のカフェのようにコーヒーやビール、ワインなどを飲みながら、というのはどうやら規則違反でできないそうですが、それに近い雰囲気を作りたいと思います。一つの曲、ひとつの音についても、また弓や楽器の持ち方についても、あるいは練習の仕方についても、のんびりと吟味する、はたまたどうしてこんなことをやっているのだろう、音楽する意味とは、演奏とは、というふうに考えを発展させていく、そのような場所を皆さんと一緒に作っていきたいのです。どのみち、大学者でも哲学者でもない一チェロ弾きがやることですから、そう遠くへ話が進むと助けていただかなくてはなりませんが、それもまたカフェ的な一興でしょう。途中で話し手が変わってしまったっていいではありませんか?
しかしそうは言っても、その日の午後中楽器片手に話だけではつまりませんから、夜はそのテーマに因んだコンサートを催すことにしたいと思います。第1回、5月21日にはヴィヴァルディのソナタを題材にしたいと思っておりますが、その夜にはヴィヴァルディを含むイタリアンのチェロ音楽をお聴きいただきましょう。また、演奏してくださる、つまりカフェの時間に題材の音を提供してくださる中でとりわけ素晴らしい方には、そのコンサートで1曲弾いていただくこともあり得ましょう。
このような企ての意味を感じていただくため、受講・聴講料も今までとは趣向を変えたいと思います。受講する方は準備が必要ですし、話題を提供するわけですからその労力を買って、夜のコンサートも含め3000円。コンサートに出られた時のギャラはその都度ご相談致しましょう(?) 聴講する方はそのような準備が必要ないので、コンサートを含めて4500円。コンサートだけに来る方は一番楽なので6000円。いかがでしょうか?
さて、あなたは話題を提供する、参加する、傍観する(いやいや、ただ楽しむ)、どれになさいますか。提供する方への条件は一つ、その曲を間違わず、止まらず、人の前で弾けること。ひょっとしたらその晩もう一度弾くかも知れないのですから!
淹れたてのコーヒーのように香りたかい響きとともに、あなたの知的興味と音楽的要求を満たす(かもしれない)『ガット・カフェ』へどうぞ!!
カフェ主人、鈴木 秀美
第1回の集い | 2000年 5月21日(日) 14時より21時(コンサートは19時より) |
ホスト | 鈴木 秀美 (すずき・ひでみ、チェロ) |
お話相手 | 小島 芳子 (こじま・よしこ、チェンバロ) |
カフェの場所 | 東京オペラシティ近江楽堂(おうみがくどう)内 (新宿区西新宿 3-20-2 3F 電話 03-5353-6937) |
テーマ | ヴィヴァルディ、6曲のチェロ・ソナタの中から1曲。 楽譜は筆写譜でなければショット版かリコルディ版を使用 |
コンサート | 「メニュ」 <Gut
Cafe Menu> (00/04/12) ドメニコ・ガブリエッリ:ソナタ ドメニコ・ガブリエッリ:リチェルカーレ 第5,7番 ヴィヴァルディ:ソナタ e minor ペルゴレージ:シンフォニア F major Sig.マルティーノ:ソナタ第3番 G major ジェミニアーに:ソナタ a minor ヴィヴァルディ:ソナタ第6番 B flat major このメニュのココロは、Gamma, ut, re, mi, fa, sol, la, si-bemol。いかがかな? ヒント:このメニュ、Gamma-ut-re-mi-fa-sol-la-si 以外の読み方は、Bolognese-Pescatore(Veneto)-Napolitana-(???surprise)-Lucchese (con gusto francese)-Veneto ancora. ヨロシク。
カフェ主人 敬白
*最後の"謎かけ”(?)の答えは、こちら(公式HPの「最新情報(4/12付)」)をご覧ください! (私は最初、てっきりパスタの名前を並べただけかと思ってしまいました!) なお、当日の食材の仕入れの都合等(?!)により、ひょっとすると変更もあり得るそうです。(矢口) |
参加料 | 演奏で参加される方 3,000円、聴講を楽しまれる方 4,500円、 コンサートのみ楽しまれる方 6,000円。 いずれも入退場自由 |
次回以降の 予定 |
7月2日(日)、9月3日(日)、11月16日(木)、いずれも近江楽堂で |
協 賛 :近江楽堂・松木アートオフィス
お申込み・お問合せ:バッハ・コレギウム・ジャパン
〔〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-29-7-402/ Tel 03-3226-5333 Fax 03-5362-5445〕
鈴木
秀美 Gut Cafe III
9/3 (Sun.) 近江楽堂(東京オペラシティ3F)
14:00- Lesson & Lecture
19:00- Concert
聴講:\4,500 受講:\3,000 ミニコンサートのみ:\6,000
ゲスト:寺神戸 亮 (てらかど りょう/ヴァイオリン)
コンサート曲目:
・ドッツァウアのエチュードから、第一巻より2,6,33,34番、第2巻より38,39,40,58番、第4巻より一曲
・デュポール/「メソード」巻末の21のエチュード第1番
・ドッツァウア/ロッシーニの「ウィリアム・テル」の主題によるデュオ・コンチェルタント
(ヴァイオリン:寺神戸亮、チェロ:鈴木秀美)
予告:次回(11/16)は、バッハ・イヤーにちなみ、復習になりますがバッハの無伴奏チェロ組曲を題材と
するそうです。何番かは受講者が自分で選べるとのこと。楽しみです。(00/09/04記)
受講・聴講・コンサートチケット 取扱い
バッハ・コレギウム・ジャパン事務局: TEL 03-3226-5333 FAX 03-5362-5445
目からウロコ?のチェロ・エチュード集 『デュポールとドッツァウア』
エチュードとは音楽なのか、音楽たり得るのか、と思われますか?私たちはあまりにもしばしば、これらの名前が尊敬するべき先達チェリストのものであることを忘れてはいないでしょうか。そう、必ずしもそれらの全てが人前で弾くことを想定はしていないかもしれません。また、指や弓の訓練のため、筋力トレーニングの様相を呈しているものもあって、どれでもが楽しめるものでないことはたしかです。しかし、重要なチェリストだった彼らの音楽には、何か良い味もまたしっかりと存在するのです。
ドッツァウアは、このようなエチュードだけではなく数多くの作品を書いています。チェロ2台、チェロとヴァイオリンなどのデュエット、室内楽、ミサ... デュポールのエチュードは、重要な文献でもある実に立派なチェロ・メソードの最後に載っているもので、この本こそが現代のチェロ奏法の基本、根幹をなすものなのです。
誰でもが少しは通ってきたであろうこれらのエチュード、一体これはオンガクになるのか。どう弾けばいいのか?どうぞ、見に、聴きに、試しにいらしてください。子供のときにやったものをガット弦の上で再び試してみるのは一興以上のものです。そして、ドッツァウアは言うまでもなく19世紀の人間ではありますが、彼の作品は、バロックを勉強するものにとって実に役に立つのであります。
決定ではありませんが、レッスンの時間をいつもより長くし、コンサートは引き続いて、しかし短めに、としようと考えています。
本当は、数ある素晴らしい2台のチェロのデュエットから何かをご披露したいところなのですが、一緒にやっていただく方を見つけるのも、また練習をするのも殆ど無理な状態です。このような事情で、小島芳子さんに続いて無理をお願いしたのは
寺神戸 亮 君。ドッツァウア作曲、ウィリアム・テルの主題によるDuo Concertantをお聴きいただく予定です。
選曲&楽譜
ピッチ&楽器
ピッチは440、弓やチェロもモダン、バロックどちらでも構いません。もちろん、バロック弓でこういうものを弾くのは時代的には間違いですが、なおそこから多くを勉強することが出来ます。
鈴木 秀美 Gut Cafe 6 〜ボッケリーニの魅力を探る〜
カフェ愛好者の皆さま、
ご報告が遅くなって申し訳ありませんでした。先日は5回目のカフェにおいでくださって有難うございました。近頃はなかなか聴くことの出来ない感のあるテレマンのシンプルな音楽、めったに演奏されないJ.C.F.バッハのソナタの細部にこだわった表現など、お楽しみいただけたでしょうか。また夜のコンサートで取り上げた文字通り手に汗握るA.クラフトのソナタとこれまた珍しいベートーヴェンのデュエットも、ただヒヤヒヤするだけでなく幾らかはお楽しみになれたことを願っております。クラフトのソナタは、その難易度もさることながら、特徴的な音型やチェロ独特の表現など、ハイドンとの情報交換とでもいうべき感じをお聞き取りになれたでしょうか。今回は、一つのコンサートの中でバロックとクラシック両方を使うという、普段私が自分に課している禁則を犯してのものでしたので、どのような印象を持たれたか少々心配でもあります。人には言えないぐらいわずかな練習でコンサートに付き合ってくださった共演者の方々に、改めてお礼を申し上げます。
さて、次回 5月12日は、ある意味ではチェロ音楽の最高峰ともいえるボッケリーニを取り上げます。おそらく歴史上もっとも優れたチェロ奏者であった彼の音楽の魅力は、実はとても壊れやすい微かな色彩変化の妙や、どこにもメロディが見当たらないまま何小節もつづく雰囲気など、いわゆるウィーン古典派とは全く違ったところにあります。そのせいか、彼の音楽は歴史上多くの無残な扱いや改竄の憂き目に遭っております。現代のチェロ奏者たちも、彼を理想的に取り扱っているとは言えません。演奏の問題、楽器の問題、そして出版の問題など、多くの課題を提供してくれるボッケリーニの真の魅力を探る時間になればと思っています。また夜のコンサートでは、チェロ・ソナタだけでなく何らかの室内楽をお聞かせできるように準備したいと思っています。本当は『日曜日の午後』にこそ相応しいボッケリーニ、残念ながら次回は土曜日の午後ですが、どうぞ皆さま奮ってご参加ください。
なお、カフェではチェロ・ソナタを3曲程度題材として取り上げたいと思います。ボッケリーニの場合、これならよいと明言できる出版譜がございませんので、筆写譜を3つほど事務所に準備する予定です。どうぞ皆さまご利用ください。
おそらく歴史上もっとも優れたチェリストであったボッケリーニ。後半生をスペインで過ごした彼の作品には独特の雰囲気がありますが、遠隔地にいたためもあって当時から有名出版社の改竄にあい、現代もまた演奏・出版の両方で心ない扱いや誤解を受けています。ソナタやコンチェルトなどの有名な作品を通してそれらの経緯を知り、使用楽器や出版物の問題についても語る場にしたいと思います。
コンサートではボッケリーニの神髄である室内楽をお楽しみいただきましょう。
ガット・ファンの皆々様、
如何お過ごしでいらっしゃいますか。
さて、第6回のカフェが目前、今週土曜日に迫ってまいりました。今回のメニューは「ボッケリーニ」!
この作曲家を本当に知っている人は、僕がこうしてわざわざ括弧と「!」マークまでをつけてこの名前を呼ぶ気持ちを解って下さるでしょう。ご存じない方は...土曜日にいらっしゃれば解る、ハズです。
特に何といってもチェロ奏者にとっては、ボッケリーニはサイコーなのです。彼が蓄音機よりずっと先に亡くなってしまったのがなんとも残念ですが、書かれているものから考えるなら、彼は文句なく歴史上もっとも優れた、そしてステキなチェロ弾きでした。
後半生をスペインで過ごした彼は、独特の雰囲気をもつ音楽を作り上げました。自身がチェロの達人であったこと、そしてスペイン駐在大使を通して繋がりを持ったプロイセンのフリードリヒ・ヴィルヘルム2世がチェロを嗜んだことが、彼にチェロ大活躍の特殊な曲を多数書かせました。一般的によく知られているのはごく僅かなソナタとコンチェルト程度ですが、彼の本領は室内楽、それもチェロ2本のクインテットです。
カフェで詳しくお話したいと思いますが、ボッケリーニがあまり知られていないのには大まかに言って3つの理由があります。一つは彼の作風がウィーン古典派のように扱ってもうまく行かないこと。もう一つは嘆かわしい編曲や改竄的出版によって彼の作品の魅力が正しく伝わっていないこと。最後に、モダン楽器や殊にスチール弦ではその魅力を伝えられないことです。ピアティゴルスキーやイ・ムジチのピーナ・カルミレッリなど、今までにボッケリーニ・リヴァイヴァルを目指した人は何人かいました。しかし大時代的な表現と編曲、そして現代の楽器の扱いは逆効果だったかもしれません。大きなホールで弾くこともボッケリーニをダメにしてしまいます。
カフェでボッケリーニを取り上げるにあたって、彼の室内楽の面白さをお伝えしないではいられないと思い、「豪華」なゲストに友情出演をお願いして、ソナタからトリオ、そしてクインテットと、全部で6曲をコンサートでお届けします。ヴァイオリン、ヴィオラの面々はもうよくご存知の方々です。チェロの古川展生君は言うまでもなく東京都交響楽団の首席奏者として活躍しておられますが、オリジナル楽器、ガット弦、そしてこのような音楽のアプローチに強い興味を持たれて『急速接近中』、ホットな人材です。
ボッケリーニは、本当は日曜日の午後に聴くのが一番。そのように緩んだ気持ちのよい音楽なのです。しかし何とかそれに近い土曜日の午後と夜、週末の心地よい時間を近江楽堂で、真に柔らかい弦の響きのシャワーの中で過ごすのは如何でしょうか。どうぞお友達も多数お誘い合わせの上、究極のバーチャル・カフェへ!!
日時:2001年 5月12日(土)
場所:近江楽堂 (おうみがくどう 東京オペラシティ3階)
時間:14:00〜 Lesson&Lecture、19:00〜 Concert
ゲスト:高田あずみ・竹嶋祐子(ヴァイオリン)、森田芳子(ヴィオラ)、古川展生(チェロ)
コンサート・プログラム:
ボッケリーニ/* Quintet in E-flat major G. 304
* Trio in c minor G. 96
* Sonata in B-flat major G. 565
* Sonata in A major G. 13
* Quintet in E major G. 275
* Quintet in F major G. 338
*ボッケリーニの魅力は何といっても室内楽、中でもチェロ2台を含むクインテットは独特の
響きです。シューベルトは絶対ボッケリーニを知っていたに違いない、とビルスマは言って
いました。どうぞ、お楽しみに! (店主敬白)
入場料:受講・・・3000円、 聴講・・・4500円、 コンサートのみ・・・6000円
※受講生、聴講生は上記料金でコンサートもお楽しみいただけます。
*資料準備などのため、予めお電話でご予約下さい。料金は当日精算となります。
ご予約は・・・
バッハ・コレギウム・ジャパン事務局:TEL 03-3226-5333
皆様のご来場をお待ちしております。初めての方もお気軽にどうぞ。
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