朗読・映像とともに聴く ドイツ浪漫ファンタジー
「美しきマゲローネの物語」

          
【日時】 2008年 3月28日(金) 19時開演
【会場】 トッパンホール(東京/ 飯田橋)
【曲目】 「美しきマゲローネの物語」Op.33(ルートヴィヒ・ティーク作/ ヨハネス・ブラームス曲)
      [Romanzen aus Magelone]Op.33(J.L.Tick=J.Brahms)
【出演】 バスバリトン:ドミニク・ヴェルナー Dominik Worner
      ピアノ:鈴木優人
      朗読:横田栄司
【演出・映像】アートディレクション:田村吾郎、油絵・映像:深澤健作
【舞台監督】 田邉真理
【日本語朗読原稿】 大矢晴代氏による

【チケット販売】¥4,000 (全席自由)
     バッハ・コレギウム・ジャパン事務局 03-3226-5333
     トッパンホールチケットセンター  03-5840-2222  
     イープラス  http://eplus.jp/sys/main.jsp
【共催・企画】 Dominik Worner・鈴木優人・田村吾郎
【企画協力】  笠松泰洋
【協力】 クリスティ・デジタル・システムズ日本支社、トッパンホール
【後援】 ドイツ連邦共和国大使館 東京、GOETHE-INSTITUT JAPAN ドイツ文化センター
      東京藝術大学 音楽学部 同声会
【マネジメント】 バッハ・コレギウム・ジャパン

【はじめに】
 当企画はドイツ浪漫派の真髄、ティークによる詩、ブラームスによる音楽からなるドイツ・リート作品の傑作「美しきマゲローネの物語」を新しい視点から捉え、新しい芸術の形を提案するものです。演奏はライプツィヒバッハコンクール第1位、バッハ・コレギウム・ジャパン、コレギウム・ヴォカーレのソリストとして活躍するバスバリトン歌手、ドミニク・ヴェルナーと鈴木優人のピアノのデュオで行い、文学座俳優である横田栄司による日本語の朗読によって曲間の物語を演出します。また、気鋭の若手画家である深沢澤健作が新たに描きおろした15枚の油絵(印象派の表現性を現代的に再解釈したもの)と、歌詞の日本語字幕を出演者後方のスクリーン状オブジェクトに照射することで、今まで難解とされてきたドイツ・リートの物語理解を、高い芸術性をもって助けるとともに、日本における新たな上演方法を探るという狙いを有した、意義深い企画であると確信しています。
ドミニク・ヴェルナー/ 鈴木優人/ 田村吾郎
 
【企画について】
 「美しきマゲローネの物語」は、ドイツロマン派の詩人ルートヴィヒ・ティークの詩をモチーフに作曲した、ブラームス唯一の連作歌曲です。この作品は、主人公のペーター伯爵がナポリの美しい王女マゲローネに出会い恋をし、苦難を乗り越えて二人が結ばれるまでを描いた物語歌曲であり、重厚感・苦悩といったイ メージを想起させがちなブラームスの作品の中では珍しく曲全体にわたって愛情と温かさが満ちた「ロマンス」的な作品であります。28歳から36歳にかけて作曲され、ピアノ伴奏にはシューベルトの影響がみられるものの、旋律的構成やその展開、流れるようなピアノの低声部の和音などにはすでに確立されたブラームスの特徴が見られる秀逸な作品ということができます。一般的にはティークの18連の詩からブラームスが選び取った15の歌曲を、その曲間を朗読で結び付けて上演されることが多いのですが、今回の演奏会では、音楽・朗読に加え、15枚の書き下ろしの絵画を作品に取り入れ、今までにない上演方法を試みます。絵画による視覚的な刺激は、聴衆の想像力に働きかけて、よりいっそう豊かな作品理解を促すことでしょう。プロジェクターを通してスクリーンに絵画を投影することによって作品のもつ物語性を追求し、音楽・絵画・舞台を総合芸術化することは、芸術の新たな可能性を模索する試 みでもあるといえます。今回の企画に関わる芸術家たちは、音楽・絵画・舞台の各分野を代表する若手アーティストです。ヨーロッパで活躍中のドミニク・ヴェルナー、東京藝術大学卒業生である鈴木優人、田村吾郎、深澤健作、文学座俳優横田栄司による各分野の優秀なアーティストによるコラボレーションは質の高い演奏会を創造するに違 いありません。
舞台監督  田邉真理
 
【ドミニク・ヴェルナー/ バスバリトン】(写真左)
 シュトゥットガルトで教会音楽を、フライブルクで音楽学とチェンバロを学ぶ。またスイスでもヤーコプ・シュテンプフリのもと歌とオルガンを学びディプロマを獲得。ペーター・コーイにはバロック演奏を学んだ。2002年、ライプツィヒで開催された第13回国際バッハコンクールで優勝し、ライプツィヒ・バロック・オーケストラの特別賞も獲得。これまでに、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、ベルリン古楽アカデミー、シャンゼリゼ管弦楽団、バンベルク交響楽団、ブレーメン室内管弦楽団などと共演を重ね、またフランドル音楽祭、ボストン古楽音楽祭、プロムス(ロンドン)、タングルウッド音楽祭等、多くの音楽祭に参加している。リート作品への興味も深く、ドイツ・ロマン派作品の演奏を中心に、現代曲の初演も行う等、そのレパートリーは多岐にわたる。バッハ・コレギウム・ジャパンとは、2005年以来たびたび共演をかさねている。
 
 

【鈴木優人/ ピアノ】(写真右)
 1981年オランダ・デンハーグ生まれ。幼少より両親に音楽の手ほどきを受ける。東京藝術大学作曲科を卒業後、同大学院古楽科修了。在学中、バッハ・カンタータ・クラブのリーダーを務めるとともに、小林道夫氏の薫陶を受ける。2007年、オランダ・ハーグ王立音楽院修士課程オルガン専攻を首席で修了。同年9月より同音楽院即興演奏科修士課程、およびアムステルダム音楽院チェンバロ科専攻に在籍。ピアノを木村徹・加藤智子・砂原悟、ドイツ・リートおよびピアノ伴奏法をコンラート・リヒター(Konrad Richter)、ヤコブ・シュテンプフリ(Jakob Staempfli)、フォルテピアノをスタンリー・ホッホランド(Stanley Hoogland)、チェンバロをボブ・ファン・アスペレン(Bob van Asperen)、オルガンをヨス・ファン・デル・コーイ(Jos van der Kooy)・鈴木雅明・早島万紀子・内海恵子、作曲を永冨正之・尾高惇忠・青島広志、指揮を北原幸男の各氏に師事。2005年、コンサートマスターの山口幸恵とともに「アンサンブル・ジェネシス」を結成し、オリジナル楽器を用いてバロックから現代音楽までの意欲的なプログラムを展開している。これまでに「秋」「冬」「夏」の3 公演を成功に収め、2007年5 月にはドイツ・デビューを果たす。9月にはハクジュ・ホールにて「過ぎにし春」公演、10月にはドイツ・オランダツアーを予定している。そのほか鍵盤楽器・通奏低音奏者としてこれまでに国内外でリサイタルを開くほか、多くの音楽祭・演奏会に出演。 2007年6月にはトッパン・ホールのランチタイムコンサートシリーズに「トッカータの宇宙」と題して出演。2008年5月にも東京オペラシティにてリサイタルが予定されている。バッハ・コレギウム・ジャパンの定期演奏会、カンタータ全曲録音および海外ツアーに参加。アンサンブル・ヴィンサントのメンバー。また2005年には蜷川幸男演出歌舞伎座七月大歌舞伎「十二夜」公演にチェンバロで出演するなど、他ジャンルとの交流も積極的に行っている。作曲家としても、2004年3月バッハの「ゴルトベルク変奏曲」の演奏と自作品を組み合わせたユニークな個展や、バッハのカンタータにおける喪失楽章の復元などが高く評価されている。2006 年11月にはドイツ・ワイマールで新作「アポカリプシスII」がペーター・コーイ指揮Sette Voci によって初演され、好評を博した。この作品はワイマールのアンナ・アマーリア図書館に所蔵。日本基督改革派東京恩寵教会、オランダ日本人教会(JCFN)、デン・ハーグ市ネボ教会(Nebokerk) でオルガニストを務める。 また教会オルガニストのための講習会やレッスンも各地で精力的に行っている。
 
 
【田村吾郎/企画・演出】
 1979年生まれ。1998年、東京芸術大学デザイン科入学、2002年同大学を首席で卒業(サロン・ド・プランタン賞受賞)。
同年、東京芸術大学大学院美術研究科科入学に入学。2006年、韓国ソウル大学に交換留学、2007 年に博士号を取得し修了。現在、東京芸術大学美術学部デザイン科で教育研究助手として勤務しながら、アートディレクター・プロデューサーとして様々なプロジェクトやイベントを企画進行している。2007年は、「藝大アーツインアーツイン丸の内」をはじめ、新曲「浦島」、オペラ「白狐」などで映像を使った演出に参加している。

【深澤健作/絵画・映像】
 1978年生まれ。2000年、東京芸術大学絵画科(油画専攻)入学。2004年、東京藝術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。2006年、東京芸術大学大学院美術研究科油画技法材料第2研究室修了。
個展歴
 02 「深澤健作展」 ART LABORATORY R3(群馬)、
   「深澤健作展」 drawing selection GALLERY b.TOKYO(東京)
 03 「ナ二ゲにささげて」 COMPLEX SPACE(群馬)
 07 「韻律から踊りだす」 GALLERY OPEN DOOE ( 東京)
グループ展及びプロジェクト
 03 「antique」東京芸藝大学学生会館(東京)
   「FRONT BRIDGE」前橋文化言語研究所(群馬)
 04 第二回妙高夏の芸術工房塾 公開制作(新潟)
 05 「sculpture」有隣館(群馬)
   「short short」東京藝術大学絵画棟L字スペース(東京)
東京藝術大学+パウハウス大学ワイマール国際交流プログラム
   「Rosa!」 あらわになる色ピンク東京藝術大学 陳列館(東京))
 07 藝大21 和楽の美 新曲「浦島」映像制作担当(東京芸術大学奏楽堂)
 07〜08 Man With A Movie Camera' project /
       The Big Screen(www.bbc.co.uk/bigscreens/)in(イギリス/マンチェスタ)
 

【横田栄司/朗読】
 1971年10月11日生まれ。東京都出身。1994年桐朋学園短期大学部芸術学科演劇専攻卒業。同年文学座研究所入所。1996年「特ダネ協奏曲」文学座公演で初舞台。1997年文学座研究所準座員。1999年文学座入所、演技部所属。現在にいたる。
主な出演作品
<舞台>
1996年 初舞台『特ダネ狂騒曲』(文学座本公演) 紀伊國屋ホール
  98年 『ハムレット』(銀座セゾン劇場)
  99年 『リチャードV世』(ホリプロ) さいたま芸術劇場
      『翔べない金糸雀の唄』(本公演) 俳優座劇場
2000年 『グリークス』(東急文化村) シアターコクーン
  01年 『近代能楽集』(ホリプロ) シアターコクーン
      『ハムレット』(さいたま芸術劇場)
  02年 『退屈な時間』(本公演) アトリエ
  03年 『恐怖時代』日生劇場、『青ひげ公の城』パルコ劇場
      『Hamlet』(ホリプロ)世田谷パブリックシアター
      『砂の戦士たち』(TS ミュージカルファンデーション)サンシャイン劇場
  04年 『タイタスアンドロニカス』(ホリプロ)彩の国さいたま芸術劇場
      『国粋主義者のための戦争寓話』(THE ガジラ) ベニサンピット
      『TERRA NOVA』(アトリエ)
      『ロミオとジュリエット』(ホリプロ)日生劇場
  05年 『メディア』(Bunkamura)シアターコクーン
      『恋ぶみ屋一葉』(松竹)新橋演舞場
  06年 『信長』(松竹)新橋演舞場、『タイタスアンドロニカス』英国公演
      『オレステス』(ホリプロ) シアターコクーン
  07年 『ひばり』(Bunkamura) シアターコクーン
      『ヴェニスの商人』(ホリプロ) 天王洲銀河劇場
      『カリギュラ』(Bunkamura)シアターコクーン、イオン化粧品シアターBRAVA!(大阪)
< TV >
 『私立探偵・濱マイク』NTV、
 『多摩南署たたきあげ刑事・近松丙吉7』TX
<映画>
 『極道の妻たち 危険な賭け』、『カンゾー先生』、『独立少年合唱団』



 
「美しきマゲローネの物語」によせて
言葉と音楽の融合は音楽家の夢である。「美しいマゲローネの物語」は、生涯オペラを作らなかったブラームスが唯一試みたドラマの音楽化である。今回の企画は、それを新しく、日本語の力と映像を使い、本当に聴く人の心に届くように命を吹き込もう、という鈴木優人氏の意欲的なチャレンジである。これは今後の音楽とコンサートのあり方に対する新しい提案でもある。歌手のドミニクさんと俳優の横田さんという同年代の二人の声による競演も楽しみである。                               
作曲家 笠松泰洋
「アートによる越境の可能性」
クラシック・演劇・美術による、世界でも類を見ないコラボレーション。いや、このような形容は良い意味で裏切られるかもしれない。ブラームスの作品の中でもあえて地味な『連曲歌曲集』を題材に、音・映像・言葉がそれぞれのフィールドを越えて、重層し、変奏されブラームスの歌曲とその時代が立ち現れる。それを再構築と解釈するのもそれはそれでよい。しかし私には、彼らがこの再構築をむしろ触媒にして、「越境するコミュニケーション」ともいうべき何か同時代的な問いを、我々に投げかけているようにも思えるのである。
経済学・社会思想史学者 加藤俊伸

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