あなたは中央にいる薫さんの背後をさりげなく通り過ぎ、左側のソファを見ました。
すると、絹のクッションがたくさん並べられたその大きめのソファに、かのブリタニクス・ユリウス・クラウディウス皇子が寝そべっていらっしゃいます。
誰か仕掛けたのか、皇子の頭上からは様々な種類の花びらがヒラヒラと降り注いでおります。
優雅にもその花弁を手のひらでもてあそびながら、皇子の視線もまた、薫さんに注がれておりました。
「なんでこいつわたし(おれ)とおなじかおしてるんだろう」
二人はじぃーっと見つめ合ったままです。無理もありません。気の済むまで悩ませておきましょう。
あなたは気を取り直して方向転換をしようとしました。
そのとき、急に振り返ったため、他のお客さまの腕がトレイに当たり、シャンパングラスが一つ、床に落ちてしまいました(お約束ですねっ)。
カシャン、と毛足の長い絨毯の上でグラスが割れ、シャンパンが飛び散りました。
さらに悪い(?)ことに、それは、薫さんの足元を濡らしてしまいました。
「も、申し訳ありませんっ!」
うわずった声であなたはそう言って