Harmonica virtuoso |
かなり強烈な芸達者が多かった当時でも、鼻でも口でも、何だったら両方いっぺんにでもOKという彼の必殺技(ちくのうの筆者にはうらやましい限り)は相当なインパクトを持っていたらしく、いきなりメディスンショウの芸人の座を射止めている。1916年頃、バンジョー弾きのGus Cannonと出会い親交を結ぶ。その後、Memphis Jug Bandの成功に触発されたGus Cannonによるジャグバンド"Gus Cannon's Jugstompers"に参加。不動のハモニカ吹きとして、あるいはソロで、1920年代末から30年代初頭にかけ、多数の録音を残しているのはご存じの通り。
1961年に亡くなった。65歳。
芸能ネタのトレインピース(汽車真似)から、2ndポジションのブルーズまで、幅広いテクニックを極めたプロ中のプロである。ブラスバンドに参加していたという逸話が物語るとおり、一音一音がきっちりと響く音色を持ち(とにかく音程が正確)、常にメロディを意識させるラインづくりとあいまって、ブルーズ曲を吹いてもどこかヌケた印象を感じさせることが多い。
ハモニカ奏法の特色として、細かいハンドビブラートを除いて手を使った効果(いわゆるハンドワウなど)をあまり強調しない点が挙げられよう。手を使ったエフェクトは、ハモニカの生音を手で覆うことによって、音量を抑え、音色をまろやかにすることで実現される。おそらくブラスバンドやジャグバンド(しかもバンジョーが2本入っている録音(1928年9月)もある)といった音量の中で、いくらルイスが名人でも、ハモニカには相当の音量上のハンディがあったことだろう。要は、ハンドワウなんか使ったら、ハモニカが聞こえなくなってしまうということではなかったか。例えばサニーボーイがバンドサウンドのなかで、手を使った効果という切り札を切ることができたのは、マイクシステムの使用に負うところが大きかったはずである。
(一方でルイスは、アンプリファイドしているという意見もあるようだ。そうであれば、ハンドワウを使わないのはそのためだということになる。音色からすると、アンプリファイドしているとは思いがたいのだが...)
ルイスといえば、2ndポジションのイノベーターの一人。彼の2ndポジション奏法の特色として強く感じるのが、息の長さである。"Noah's Blues"などを聴くと、始めの2コーラスはほとんどどこで息を継いでいるのかわからないほどだ。また、細かくふるえるビブラートも後進に大きな影響を与えたと思われる。
なお、2ndポジションをディグするなら、"FEATHER BED"(1928)、1stポジションなら、"MULE GET UP IN THE ALLEY"(1929)、ソロハープ芸のトレインピースなら、"CHICASAW SPECIAL"(1929)といったところが最適。特に2ndポジションブルースハーモニカ吹きとしてのルイスは、HAMMIE NIXONを通じてシカゴのJOHN LEE "SONNY BOY" WILLIAMSONに影響を及ぼし、戦後に橋渡しをしたスタイリストの一人であるとされている。
参考音源(兼参考文献)
1895年テネシー州ヘニングに生まれる。17歳の時には、一人前のハモニカ吹きだったというから、早熟だったのだろう。
MEMPHIS HARMONICA KINGS 1929-30/VA/MSE213
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