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WWWサービスを進化させるプッシュ型情報配信サービス

現在のインターネット利用の主流は,ホームページの閲覧ですが,これを利用するには,ダイヤルアップ接続やLANによってインターネットに接続していなければなりません(オンライン状態).また,接続した状態で,目的のホームページなどを閲覧するには,利用者が自分でその所在を検索するか,URLなどを使って参照する必要があります.
このため,インターネットから目的の情報を探し出す検索サイトの役割は,ますます重要になってきているといえますが,検索サイトでも一般のホームページでも,目的の情報を探すためには,利用者がハイパーリンクをたどったり,直接キーワードやURLを入力してホームページを呼び出 して閲覧するという方法は変わりません.それは,ホームページを探して閲覧する現在のWWWサービス2の限界でもあります.

 

■プル型サービスの限界

従来のようにインターネットに接続し,ブラウザを使ってホームページを閲覧したり,検索サイトを利用したりする方法は,利用者がWWWサーバーから情報を引き出す操作をするため,「プル型」のサービスと呼ばれています.このような現在のWWWサービスでは,目的のホームページが見つかっても,そこに掲載されている情報は書籍や新聞などのような印刷物と異なり,つねに内容が更新される可能性があるため,「継続して」利用するには,いろいろと困難があります.プル型のサービスでは,情報が更新された場合でもURLを入力したり,リンクをたどって確認しなければ,最新の情報を閲覧することも,最新の情報に更新されているかどうかを知ることもできません.また,実際に閲覧してみるまでは,URLそのものが変わってホームページがなくなってしまっていることもわかりません.
頻繁に訪れるホームページやWebサイトをブックマークに登録する,あるいは自動ホームページ巡回ツールを使って,定期的に情報が更新されているかどうかをチェックするという方法もありますが,URLの入力やリンクをたどる手間が少し省けるだけで,根本的には同 じ問題点を抱えています.つまり,つねに最新の情報を得るには,同じホームページ,サイトを何度も訪れなければなりません.ホームページに提供される情報が増えるに連れ,このような利用者の無駄なアクセスも増え,インターネットの情報が渋滞するという問題にも発展しかねないといえます.


2 WWWサービス
当初は学術関係で利用が広まったインターネットですが,1990年代に入るころには,さまざまなサービスが生まれ,幅広い分野におよぶ情報が検索できるようになってきました.ただし,WWWサービスが登場する以前は,もともとインターネットは学術研究を目的としたネットワークから発展してきたため,使い勝手などはあまり考えられてはいませんでした.WWWサービス自体は,これらのインターネットで利用できるサービスのひとつとして,スイスのCERN(欧州原子核共同研究所,CERNは英語表記では,European Particle Physics Laboratoryとなる)のティム・バーナーズ・リーによって1989年に発明されました.これはインターネット上に分散した情報を独自のルールによって整理や参照し,容易にインターネットを移動できるというものでした.これが,一般にホームページを閲覧するのに利用され,今ではWWW(World Wide Web ワールド・ワイド・ウェブ)サービスと呼ばれています.Web(ウェブ)とは蜘蛛の巣のことで,いわば世界に張り巡らされた情報網というような意味です.このWebは,画面に表示された電子文書の中の特定の参照番号をクリックすると,連携された世界中のWebサーバー(ftpに似たhttpプロトコルが利用されます)の中から参照先の文書を呼び出し,画面に表示することができました.なお,ティム・バーナーズ・リーは現在も,WWWサービスの標準化を進めるW3Cという組識のまとめ役として活躍しています.

URL:欧州原子核共同研究所(CERN) http://www.cern.ch/

 

■プッシュ型サービスとは

そこで,いつも必要な情報を利用者がホームページまで探しに行くのでなく,更新されたホームページの情報をWWWサーバー側から必要な人に自動的に配信するという,従来のWWWサービスとは異なる発想で考案されたのが「プッシュ型」サービスです.IE4.0に搭載された「Activeチャンネル」も,このプッシュ型サービスの1つであり,URLを元にホームページを探すという現在のWWWサービスを補う形で,利用されます.利用者が情報源として利用したいホームページをチャンネルとして登録しておくと,ホームページの情報を継続して自動的に配信してくれるという新しいサービスです.
利用者側で登録しているホームページの情報が更新されると,自動的に最新の情報が配信されるという「プッシュ型」サービスは,膨大な量のインターネットの情報の中から有益な情報を確実に入手するための魅力的なサービスです.これまで困難であったホームページの情報を「継続して」利用することができます.また,今後も情報が増え続けていくインターネットで,適切に情報の発信側と受信側を結び付けたり,それらのデータ転送にともなうトラフィックを軽減したりする方法としても注目できます.
●チャンネルは厳密にはスマートプル型
実際には,プル型とプッシュ型という呼び方に厳密な定義はありません.一般的なWWWサービスではブラウザを使ってサーバーに接続し,ホームページを閲覧したり検索したりして,必要な情報を引き出す(プル,Pull)のに対して,登録されたサーバーから自動的に情報が送られてくることを指してプッシュ(Push)と呼んでいるだけです.
ただし,実際にサーバーから特定の利用者宛てに情報が送信されてくるわけではなく,ブラウザに組み込んだプラグインや専用ブラウザが,あらかじめ設定された時間やURLを元に,サーバーに接続して更新された情報を自動的にダウンロードしたり,画面に表示したりするようなしくみとなっています.自動的にサーバーの情報が一定の間隔で閲覧できるので,見かけ上は情報が配信されているように見えることから,通常のWWWサービスと区別するために,プッシュ型と呼んでいます.もう少し正確に表現する場合は,「スマートプル型」と呼ぶ場合もあります.

 

■情報配信の窓となるActiveデスクトップ

IE4.0は,従来のブラウザと同じ「インターネットエクスプローラ」という名前の略ですが,その実体は今後登場する予定のWindows 98のシェルを先取りしたOSの一部です.もはやブラウザの名称でなく,パソコンの画面全体,インタフェースそのものといえます.基本ソフト であるWindowsと統合されているので,ブラウザをいちいち起動しな くても,ツールバーのアイコンをクリックし,ウィンドウをブラウザに切り替えるだけで,インターネットに接続してホームページを閲覧することができます.
この技術を利用したホームページであれば,最新の情報に内容が更新されると,設定されている配信スケジュールにしたがって,自動的に最新のホームページの情報がダウンロードされます.配信された情報を閲覧する方法としては,ブラウザに表示するだけでなく,「Activeデスクトップコンポーネント」など,Activeデスクトップに直接表示することのできる「Activeチャンネル」と同様の新しいものが用意されています.
▼ IE4.0をインストールしたWindowsの起動画面
IE4.0をインストールすると,デスクトップの雰囲気が変わり,ウィンドウがそのままブラウザになったり,インターネットが効率よく利用できるチャンネルなどの情報配信サービスが利用できるようになる.

 

■いつでもどこでも利用できるインターネット放送を目指す

「Activeチャンネル」は,テレビやラジオのようにサーバーからコンテンツが配信される放送型のサービスを利用することができます.この情報配信サービスは,前述の通り一般的にはプル型に対して,「プッ シュ型(押し出し)」サービスと呼ばれていますが,特にホームページの閲覧を自動化するサービスは,テレビやラジオのような放送型のサービスに似ているので,ウェブキャスティングと呼ばれることもあります.ウェブキャスティング(Webcasting)とは,プッシュ型の情報配信サービスをテレビやラジオのような放送型のサービスになぞらえた呼び方で,放送(英語でBroadcast,ブロードキャスト)とWebサーバーから作った造語です.いわば,インターネット放送というところでしょうか.
ただし,せっかくインターネット経由で配信された最新の情報も,インターネットと接続していなければ利用できないのでは,ダイヤルアップ接続で一時的に接続することが多い利用者には,普及しないでしょう.このために,IE4.0には,「オフライン作業」と呼ばれる,イ ンターネットとの接続を切断しても情報を閲覧できる機能も用意されています(オフライン作業については,34ページ参照).これにより,モバイルコンピューティングのような環境でも,インターネットの情報が利用できるということになります.つまり,「いつでもどこでも」利用できるわけです.このように,IE4.0には,先に説明したインターネッ トを利用する上で遭遇する難問のいくつかを,解消することのできる機能が備わっています.さらに,この新しい環境に合わせて,次々と日常的に役に立つ情報が日本語で提供されてくるのも,今後は魅力的であるといえます.

 

▼ オフライン作業でインターネットに接続していない状態でもホームページを閲覧できる
ホームページを効率よく閲覧できるように,ダウンロードした情報を一時保存ファイルとして利用するが,IE4.0では,これを利用して接続していない状態でもホームページを閲覧できる.ただし,一時保存ファイルがない場合は,ダイヤルアップ接続などを促す.

BIGLOBE会員用にカスタマイズされたIE4.0では,インストールするだけで,デスクトップに「BIGLOBEチャンネル」が表示されます.この他,カスタマイズ版IE4.0では,[検索]ボタンをクリックすると検索バーに [NETPLAZA](148ページ参照)が表示されるなど,BIGLOBEのサービスが簡単に利用できるようになっています.なお,本書に付属するCD-ROMには標準のIE4.0が収録されています.カスタマイズ版IE4.0に関する情報,および入手方法は,近日中にBIGLOBEホームページで公開される予定です.

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