腎機能の検査と病気

腎臓の病気とは?
尿の成分は不要な水分、塩分の他、蛋白質を代謝した後の尿素窒素などがありますが、腎臓の機能はこのうち、クレアチニンという物質を尿1dl(デシリットル=100ml)にどれだけ追い出せるか という尺度で測定します。 これをクレアチニン・クリアランスといい、1日平均の検尿で測定しますが、正常な人で100mg/dlといった値になります。 また血液検査でも、血中クレアチニンCRE(正常値で2mg/dl位以下)、血中尿素窒素BUN(正常値で25mg/dl位以下)といった尺度で分かります。
クレアチニン・クリアランス100mg/dlというのは、毎食ステーキ1kg平らげる様なことをしない限り、日常生活では数倍の余裕を持った性能です。ですから、腎臓移植で片方の腎臓を人にあげても、通常腎臓提供者(ドナー)には後遺症は残らないのです。
ところが、腎臓の尿を造る機能に余り大きな負担を掛け続けると、少しづつこれらの機能が劣化していきます(御年配は健康でも機能は低下しています)。また細菌感染による腎炎など、様々な原因で腎臓の機能が一時的に低下することがあります。O-157のベロ毒素で溶血性尿毒症行群(HUS)が起きた というのも、その一つの様です。
この時に、ちゃんと治療を受けて2,3ヶ月安静にしていれば、こんなに高性能な腎臓だから、多くは治ってしまうそうです。腎炎で症状が現れる方が珍しいかもしれません。
しかしここで養生しないと、次第に腎臓は弱っていき遂には慢性腎不全となるのです。
また症状の現れにくい腎機能の低下では、知らず知らずの間に腎不全まで行ってしまうケースもあります。 最後に透析がある という安心からか? 腎機能に余り注意しない医師も中には居る様です。

腎臓病
タフな腎臓は、徐々に悪くなることがあります。
私の場合は4年位掛かって徐々に病気が進んだ様で、貧血の治療を続けるうち(結局腎臓が造るエリスロポイエチンが不足していたのが原因でした)、クレアチニンクリアランス10mg/dl,血中クレアチニン11.4mg/dl,血中尿素窒素98.3mg/dlといった値にまで来てしまいました(上に書いた正常値と比べて下さい)。
ここまでくると、さすがに疲れや情緒不安定が現れて来ました(尿毒症状と言います)。しかしそれまでは、単に疲れやすいのと、尿がいつも同じ濃さで出る という症状だけだったのです。
人間の体は強力な適応力を持っていて、少々血液の状態が悪くなっても徐々にであれば慣れてしまいます。 自覚症状が現れたときは、もう遅いのです。
こうなると、もう医者の指示に従って食事制限し、それも駄目なら透析を始めるしかありません。

腎機能の指標
腎機能の指標としては、腎臓が一定時間に排泄するクレアチニンなどの分量が使用されます。
これの測定には、薬剤の持続点滴を行った上で尿への排泄を測定する方法もありますが、体の筋肉が運動量や食事内容に関係なく常に一定量を分泌するクレアチニンを用いるのが最も一般的です。
これをクレアチニン・クリアランスと言います。
クレアチニン・クリアランスは、何しろ体に自然に溜まる物質が尿に出てくる割合ですから、一日の尿を集めて(蓄尿)その分析をするだけで分かります。
一日蓄尿をする手間すら惜しむ場合は、血液検査で血中尿素窒素(BUN 単位mg/dl)や血中クレアチニン(CRE 単位mg/dl CUR,Crと書くこともある)があります。
それぞれ、次の様な特徴があります。
項目 特徴
BUN
(尿素窒素)
食事で蛋白が多かったり、エネルギー不足で体蛋白を分解した時に増加。もちろん腎機能低下でも上昇。
体中で蛋白質を使用した後、燃え滓としてこの尿素窒素ができます。
蛋白質は糖・脂肪の様には摂り入れたものの大部分が保存される訳ではなく、余分なものは無理やりにでも消費されて、このBUNになります。 蛋白質の摂り過ぎでも、血液中のBUNが増える訳です。
一方、腎臓の機能が落ちると、出ていくBUNが減ります。
入りが同じで出が減ると、血液に残るBUNは増えて行きます。 一方、出が同じでも、入り(=蛋白質の摂取量)が減ると、BUNは下がります。 このため、BUN/CREが小さいと(たとえば3〜4とか)食事療法が旨くいっていると言えるらしい。
しかし尿に出たBUNの量は、たとえ測って多くなったことが分かったとしても、腎臓がより働ける様になったのか、食事の蛋白が増えたのかが区別できません。 このため血液中のBUNを測ります。
CRE
(クレアチニン)
クレアチニンのできる量は一定なので、腎機能が落ちると上昇。
クレアチニンは、筋肉の細胞が生きている限り 少しづつ生成されます。
BUNだと食事の影響を受けるので、血液に残った量を測る必要がありますが、クレアチニンはほとんど一定しているため、血液の濃さや尿どれだけ出ているかを測る方法、どちらでも腎機能を知る手がかりになります。
血液中のクレアチニンについては、CRE>2.5くらいから、クレアチニン・クリアランスの逆数に比例する様になります(CRE<2.5では誤差多く指標には使えません)。
血液中尿酸 通風の原因である、高尿酸血症の指標。食事内容(プリン体の量)にも依存します。
尿酸もやはり腎臓から排泄するため、腎機能低下により、上がりやすい。

尿検査について
一般的に腎臓の検査で思いつくのはまず尿検査で、実際それは必要な検査ですが、私はこれだけでは不充分と考えています。
というのも、尿検査で潜血、蛋白、糖分などを検出して腎臓の異常が分かることもあるのですが、これらは激しい運動や食事内容によってもしばしば異常を示します。 このため一度の異常所見でも、中々病気を自覚しないものです。
更に腎機能が低下した際、尿への所見が大して認められないケースもままあります。私自身、透析寸前のこの体になって、今だ潜血、尿蛋白の明らかな異常値は記録していません。
それだけに、体調不良を訴えて診察を受けても、尿検査で所見がないばかりに腎臓の障害を見落とすケースは多数ある様です。
別のページにも書いていますが、尿検査だけで、腎臓の具合が分かる とは軽く考えないで下さい。
そのために、先に血液検査の説明を書きました。

血液検査の経過詳細についてもご覧下さい。

create:1997/8/31,last update:2000/7/2
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