あたしはＰＨＳを持っている。別に流行っているからじゃなく、どこにいても連絡が取れるようにとの事だけで、お値段お手頃なＰＨＳだ。
　最初は「いいな〜」程度だったのだけど、２年前の春、出かけていた時に親友から電話が来た事を旦那が教えてくれなかったのをきっかけに、新聞に出ていたエリア拡大キャンペーンに応募して当たったのが事始めだった。
　最初はアンテナの数も少なくてすぐ切れる弊害があったけれど、大抵はどこにいても繋がるため、家に殆どいないあたしを捕まえる手段としては最高のものになった。一番助かるのは保育園の保母さんを誤魔化す時。会社が休みの日は預けると嫌な顔をされるのだけど、「仕事です。連絡は携帯に」とか行って遊びに行くのである。何かあってもどこにいてもすぐ対応できる。もうこれなしには遊びにも出れないのである。
　あたしの使っているＰＨＳはＤＤＩポケットのものである。だからＰメールを利用して短いメッセージのやり取りも出来たりする。何故ＮＴＴパーソナルじゃないかというと、電波が弱くて切れやすいという事と、これ以上みかかに貢がなくてもいいじゃないという理由で。
　最初はごっつい何の機能も無い機種を使っていた。どうせただだし仕方ないや、と諦めていた。その後、キャンペーンをした業者から「新機種への交換はいかがですか？」なんてダイレクトメールがきて、しかも「無料です」なんて書いてあるとうずうずしてしまい、カタログを集めて機種を決め、交換したのである。そんな感じでＰメールを利用できる環境が整った。
　同じ時期に友人もＰメール対応の機種に乗り換え、珍しさも手伝ってＰメールのやり取りにハマった。
　２１文字のメッセージをいかに伝えるかに執念を燃やし、(^^)や(;_;)などもフェイスマークも駆使し、なんで辞書機能がないんだろっていつも思ったりする。
　今でも急ぎの連絡や、会社の休み時間なんかもＰメールをやり取りしたりしている。いつだったか、友人が出張で東京に行った時、ノート用のメモリを買ってきてもらった時も、Ｐメールで連絡を取り合った。あたしは仕事中だったけれど、会社にいる時は着信をバイブレーションモードにしているので、誰にも気づかれずに終わった。１メッセージ１０円で、ほんとに良心的なサービスである。
　そのＰメールもポケベル同様「ベル友」ならぬ「Ｐメ友」を作るために、無差別にダイヤルして送り付ける者もいる。友人の所にそのメッセージが入ったのを見て結構笑ってしまった。しかし、あたしの所にはあまりそういうのは来ない。無言電話は何度かあったが、それ以上のものはない。間違い電話があったっけ。でも、携帯通信での間違い電話は、相手がどこに住んでいるか判らない所に恐怖を感じたりする。
　そんな今日２月９日。ふとＰＨＳを見るとメッセージ１件の表示があった。友人から昨日凍えに行った冬祭りの画像データをＥメールに添付してもらう約束をしていて、時間的にも「送信したよ」のメッセージかなと思ったら、見覚えの無い番号。取りあえずメッセージを見たら判るかなと表示させる。

　と。
「おいおい、これって喧嘩した相手にすねちゃってるんだよ〜って意思表示かい？」などと勝手に想像していた。これを無視してもあたしには実害は全く及ばないが、なんとなく忍びない。メビウスを起動させメーラーを立ちあげると約束のメールの受信を開始した。時間はかなりかかると踏んだあたしは、その間違いメッセージの送信先に

と返してあげた。これであたしの良心も納得した様にほっとする。
　あまりに退屈でぼけ〜っとする。ＰＨＳがＰメールを受信している。
　友人からだと思ってみると、またもや先刻の番号。

　良心に従ってとった行動は間違っていなかったらしく、これで終わりにしようと「カノジョ（カレシ）トナカヨクネ」と 返した。するとまた返信。

　それで見知らぬ彼女とのメッセージは終了した。
　今までも見知らぬ人からの間違い電話で会話をした事あるけれど、こんなに続いたのは初めてで、なんとなく親しみを感じてしまったりした。
　今彼女は何をしているんだろうか。頑張って女を磨いているかな。