虎の威を借る狐

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「独立して会社を経営してみよう」という内容の本を読んだ。別に独立する訳でもないけど、なんとなく普段の会社勤めで大切な事も書いてあったから、つい買って読んで見た。それに書いてあった内容の一部からこんな事を考えた。

 自分で独立して仕事を受ける時は、全ては裸一貫で始まる。既に優秀なブレーンがいる場合もあるだろうけど、取引先になるだろう会社にはそんな事は関係ない。取り引き経験のない出来たばかりの会社と取り引きする場合には、そこの扱っている商品とその人の人柄ぐらいしか考慮するものが無いからだ。例えば、前に勤めていた会社で担当していた会社だって、相手にしてくれないか、相手にされても「知り合い価格」とかで値切られるのが落ちだ。相手にしてくれるには、よほどの付き合いが無ければいけない。取引先が取り引きしていたのは、自分ではなく自分の会社の看板だからだ。だから、自分が取引先とトラブルを起こしたり、取引先に損をさせたとしても、会社が大きければ大きいほど次からも取引が続く。「**さんだからしょうがない、お付き合いしますよ」なんて相手から言われて仕事をしている人は、本当に僅かだろう。会社間の取り引きなんて、そんなものだと思う。

 部下に対しても同じ事が言える。あたしが経験した例では、係長だった人がいきなり営業部長になった。そのとたんふんぞり返って偉そうである。会社の人事は時には会社役員の思惑もあるだろうけど、納得のいかない人事異動も時としてある。会社はアンタに上の役をつけただろうけど、認めているのは会社だけであって、納得のいかない人事の結果を、部下は絶対に認めない。うわべでは「はいはい」と命令を聞くが、腹の中では舌を出している。エリートコースにいなくたってコツコツと仕事をこなしている人を部下はちゃんと知っていて、その人を陰ながらでも応援して尊敬する。

 自分に肩書きがついたからといっても、所詮そんなものだ。肩書きにおんぶされて自分の実力を見失っている人の多い事。肩書きが無きゃ自分の自尊心を保てない人は、たいした事が無いのだ。
 どんな大企業や公務員でいたって、仕事を辞めればタダの人。過去にどんな活躍をしたって、思い出話にしかならない。経験する事が悪い事ではないが、それをひけらかす程中身の薄い事はない。恥ずかしいから止めておくれ。
 医者だろうが警察だろうが裁判官でも学校の先生でも、悪い事をする人は、問答無用で悪い人だ。自分の所属する立場でしか外の人と話せない人は、その時点で対等ではなく、話し合いにならないので御引き取り願いたい。
 自分にバックがいなきゃ何も出来ない人は、バックが巨大であればある程、権威が大きいものであればある程、自分に自信のない人間なんだよね。

 だから狐さん。そういう現実に早く気づいて下さいませ。




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