アレルギー見本市

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 あたしは3種類程のアレルギーを身体に飼っている。
 一つは花粉症。一つは日光湿疹。一つは食物アレルギー。アトピーがないだけ幸せだ。アトピーの患者さんを何人も見てきたけど、あんなに大変なものはない。花粉症は4月末からひと月半耐え抜けば何とか治まるし、食べ物だってアレルギーが出ると判っている物は食べなければいい。日光湿疹でも結構辛いものがあるので、アトピーだったらもっと大変だろう。だから、3種類のアレルギー位じゃへこたれないのである。

 3つとも高校生の時に自覚症状が現れた。

 1年生の時に日光湿疹。吹奏楽部に所属して、音楽大行進祭(ようするにパレード)というのに参加する為に、外で歩きながら演奏するという練習をしていた。グラウンドで長時間日差しに晒される。半袖のセーラー服からむき出しになった両腕も真っ赤に燃える。そして小さな水泡の山。熱を持つと痒くなるから、何度も水道水で冷したりしてやり過ごした。最近は水泡は出てこないので助かっているけど、気まぐれに出てくるから始末に終えない。

 2年生の冬に食物アレルギー。まずはりんご。何せおなかの空く年頃である。冬、家にはりんごとみかんが箱で階段の下に置いてあって自由に食べていい事になっていた。あたしはりんごの方が好きなので、2階の自室にいく時はいつも必ず2〜3個持って上がっていった。みかんも嫌いではなかったが、食べるのに時間がやたらとかかった。あたしの場合爪楊枝を使って白い筋を全部取らないと気が済まない。だから磨いただけですぐ食べれるりんごの方が好きだった。アレルギーが出たその日もおなかが空いて、いつもの様に気軽にりんごを頬張った。すると半分も食べないうちに耳の奥が痒くなってきた。「ぼけたりんごだったのかな」と気にしないで2個目に突入。それでも同じ症状は止まらない。看護婦である叔母に聞くと一言「アレルギーだわ」と。「一冬に一人で2つもダンボール空けたらなるでしょうが」ともいわれた。必要以上に同じ物を取り過ぎるとどうもアレルギーになるらしい。しかし、りんごだけで終わらなかった。すいか、バナナ、プラム、さくらんぼ、ライチ、その他沢山。果物だけに反応するようになってしまった。しかしみかん系の果物は大丈夫。最近までは果物のアレルギーだから誰にも信じてもらえなかった。まあ、熱を通してあるなら(例えばアップルパイとか100%の ジュース)大丈夫だから、あまり支障はない。

 そして3年生の初夏。ある家庭科の授業中にした大きなくしゃみ。それが花粉症の始まりだった。その年はそれほどでもなかったけど、翌年、就職してからは症状が重くなり、「3日でティッシュ1箱」を旗印にあちこちでくしゃみが炸裂したのである。北海道には杉は生えないのに何故?と思う方もいるだろうが、北海道の花粉症はポプラと白樺が原因だ。そのせいで鼻の下はぼろぼろになり、くしゃみのし過ぎで頭は軽い脳震盪状態が続き、時が経つのをひたすら待つだけである。ある時血液検査を受けた。通常血中のアレルギー値が0〜6の所、「13あるよ。諦めな」と一言で医者は済ませた。それから4月末から6月中旬までは地獄の日々が続くのであった。

 さて、あたしは最初花粉症ではなくアレルギー性鼻炎だと信じて疑っていなかった。で、果物アレルギーはそばアレルギーや鶏肉&鶏卵アレルギーと同義だと思ってもいた。それが間違いである事を最近知った。なんと重症の花粉症患者にはりんごなどの果物でもアレルギー反応を起こすというのだ。果物アレルギーも果物についた農薬が原因だとも言われ続けてきたけれど、これで農薬は無関係である事と、アレルギー性鼻炎ではなく、花粉症という事が確認された。だからといって喜ぶべき事ではないけどね。




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