短いしっぽのペティ

前に戻る 次に進む エッセイ集目次に戻る 文芸班に戻る


 ある日の昼過ぎ、眠気のピークに達しそうな2時少し前。いきなりPメールがやってきた。
「ハムスター イル?」
 息子がいきなり「妹欲しい」とか言い出して、MATさんと「どうしたものかと」思っていた矢先、「これはイケル」と思ったけれど、世話が出来ずにほったらかされるのも困る。ホームセンターに行く度、ハムスターの場所から離れない息子の姿も思い出し、まあ大丈夫だろうと「キチントセワスルナライイヨ」と返信。詳しい話は帰って来てからにする事とした。
 里子に出されるハムスターはジャンガリアン。MATさんの会社の同僚(なのかな?)さんの家で気付いたら増えていたうちの1匹。「性別はすぐには判らないよ」と言われ、出来ればオスがいいなと思いつつ、養子に 来る日を待っていた。
 次の土曜日。面会日だった息子を送った後、MATさんと養子の為に買い物に行く。篭などセットになって いる物があったので、それに決める。餌なども一緒に購入。息子に見られると何だかんだとうるさいので、家に帰ってからすぐに押し入れに隠しておいた。
 月曜日。早めに帰ってMATさんの帰りを待つ。いつもより早めに帰ってきたMATさんの手には紙袋。早速開けてみると、小さな箱。静かに開けてみる。すると小さな小さなハムスター。急に環境が変わったせいで、怯えている。すぐに環境を整えて、入れてあげる。息子も大喜びでじっと篭の住人を見ている。どんな仕草も可愛いので見飽きる事がないだけど、視線恐怖症になっても困るので、じっと我慢する事にする。夜には名前をどうするか検討する。「ハムちゃん」ではあまりにも芸がない。MATさんが「ちっちゃくて可愛いので『プチ』というのはどうだ?」と提案。しかしどうしても「プッチモニ」のイメージが強く感じられたので、同じ意味の「ペティ」ならと言うと、OKが出る。ペティ・ナイフのペティだ。
 火曜日。寝てばかりいるが、餌が当たると大喜びで出てくる。誰も奪う筈はないのに、急いでひまわりの種を頬袋に押し込んでいる。おたふくの様に膨らんだほっぺをぐりぐりさせるとトイレの場所に入って行く。一緒に入れたティッシュペーパーを持ち込んで、すっかり寝床状態。そこはトイレなんですけどね。
 たまに出てきても狭い所が好きで、遊び場用に一緒に入れたトイレットペーパーの芯の中にも入ったりしている。自分よりも視線の高い所から手を出されると「やられる」と思うのか、寝床に引っ込んでしまうので、芯に入った時がチャンス。芯ごと篭から出して手のひらに乗せる。少し怖がるが、手のひらの上でうろうろしたりする。引越し2日目から強引にも人間様になれてもらう事になる。
 何日も関わってくると、可愛くてしょうがない。会社でも可愛らしさを説いて回る。そうすると「あたしも欲しい」と名乗りを上げる人が出てきた。MATさんに連絡を取ると、里親の募集は終了したとの事。しかし出産間近という噂も流れているらしいので、待ってもらう事とする。
 1週間もすると、手から餌を貰ったりする事にも慣れてくる。きちんと数を認識できるようになった息子に餌係を任せる。餌は夕方6時1回。専用の餌とひまわりの種を決めた数だけ餌入れにいれて「ペティご飯だよ」と声をかけると、のそのそと寝床から出てくる。外に出してみると、冒険心旺盛であちこち走り回る。隙間に入られると大変なので、ハムスターボールを買ってきていれてやる。今までいやがっておなかを見せてくれなかっただが、性別判別の為にはじっとこらえてもらう。どうやらオスの様だ。オスで「ペティ」もないのだけど、可愛いので許す。
 約一月後。会社の人の家に行く里子の目処がたった。丁度その人の誕生日。MATさんの帰りが遅くなると聞いていたので、翌日になるかもしれないと伝えると、どうも待ちきれない様子。取りあえず、里子が来たら電話を入れる約束をして帰宅。仕事疲れでぼけ〜っとしているうちにMATさん帰宅。思ったよりも早い帰宅で、早速電話を入れる。届ける事になってMATさんの車で向かう。途中で電話を入れて直接家まで誘導してもらう。里子はペティとそっくりで、小さくなって丸くなっていた。かわいい。性別は同じオス。ペティの弟になる。しかし性格はペティと打って変わって活発で、いきなり跳ねて回っている。やんちゃモノだ。
 もう一人里親志願の人も現れて、MATさんの会社の関係者から増えたハムスターは愛の店の関係者にも溢れ出してきている。このままネズミ算の様に輪が広がっていくのも面白いかもしれない。



ペティの可愛すぎるショット。
Petty is in my pocket Petty is sleeping in his wheel

(C)1996-2001 Electric Artbox All-round Laboratory
Presented by Maki "PPCal" Miyahara
E-mail:cal@bf.mbn.or.jp