最近、どうしてだか溜息ばかり出てしまう。原因は判っている。多分、あなたの事。
　仕事中も、運転中も、夢の中ですらあなたの事を考えている。そして溜息。
　どうする事も出来ないこの気持ちを、誰にも知られずに心の奥だけに秘めて、あなたに逢いたくて、あたしはまたあの場所へ出かける。

　あの夜の事、覚えている？汗だくになって息を切らせながら一緒に踊ったよね。順番を待っている二人がけの椅子で、あたしは確かにあなたの体温を感じた。気付かれるのが恐くって、ずっと横を向いていた。
　煩いフロアの中、耳元で囁きながらのお喋り。ドリンクの回し飲み。踊りながら触れてしまった手。ドキドキの連続で、いつまでもこんな時間が続けばいいと思っていた。
　外から家に帰っても、僅かな時間があればインターネットに繋げる。いつもは切っておくＩＣＱも立ちあげておく。メーラーも着信がすぐ判るように設定して繋ぎっぱなし。あなたのページに何度もアクセスし、書込みがあるかどうか確認する。ネット上でのアクションが何もない時は、寂しくて悲しくなってくる。携帯電話。着メロを聞かせてあげるのを口実に、あなたの番号をゲットした。勿論あたしの番号だってまだ着信履歴に残っている筈。電話帳登録していたもんね。登録したあたしの名前、笑いながら見せてくれた。言い訳を考えて何度電話しようとしていたかわかる？登録した番号を表示させても、発信ボタンを押せないあたしがいる。かけてくれたっていいじゃない。でもなんの理由もないのよね。

　きっと勘違い。ただドキドキしただけ。
　だから、意味深な台詞を言わないで。本気に取ったらどうするの？
　でも恋かもしれない。
　もしあの場所であなたを見つけたら、きっと抱きついてしまいそう。

　だから、もう逢えない。あなたにこの気持ちを知られるのが恐いから。知られたら、もう一緒には踊れない。そうなるのが嫌だから、もしあの場所で見かけて、視線を合わさないあたしがいても、どうか嫌わないでいて下さいね。