工具の使い方
先回もお話ししましたが、バイクの整備に工具は必要で、工具の使い方も基本が必要です。、また、正しく使わないと部品を壊したり、作業している自分が怪我したり危険なこともあります。
部品の脱着、調整作業に必要で適切な工具を正しく選んで、正しく使うよう心がけましょう。

工具の種類
ハンドツール 手に持ち、手の力を使って作業する工具。スパナやメガネレンチ、プライヤー類がこれに当たる。
エアーツール 迅速に作業をするには空気圧を使ったエアーツールは欠かせません。これを利用するには空気タンクを持つエアーコンプレッサーを必要とするため、個人では所有が難しいかもしれない。
特殊(専用)工具 ある部分の整備にのみ必要となる工具。チェーンカッター、オイルシールリムーバー、オイルシールプッシャー、ロータープーラーなどがある
電動・電気工具 ドリルやサンダー、ハンダ、テスターなどがある。

何が必要だろう?先月号も参考にして下さい
調整+α程度の整備ではハンドツールの中でもごく限られた工具で充分ですが、経済的な事もあって必要の都度買いそろえるのは仕方ないが、工具の中には組み合わせて使うことで便利さを発揮する物もあるので、計画性を持って工具の購入に心がけて行くと良いだろう。
中には一気にセット工具を購入される方も居るだろう、しかし、工具60点がセットになった物があって、実際に使える物、或いは使いやすい物は多くて7割くらいです。無駄が多いこともあって結局高く付く事もあるし、それならば使いやすい工具を慎重に選んで購入した方が良い場合もある、充分考えて購入されることだ。
個人使用では上記に書いたうち、@ハンドツールを揃えることから始めましょう。

@スパナ
両端共が開いたオープンエンドと、一方がメガネレンチのようになったコンビネーションレンチの2種類が有ります。通常のスパナは2サイズが1本で済むため少ない本数で揃えること
が出来ますが、オープンエンドは力を加えすぎると口がねが開いて滑ると危険な事もあります。
コンビネーションの場合1本1サイズだが、一方が閉じているため力を必要とする場合には有効です。

Aドライバー
運転手ではありません。+や−の形状をしたボルトを締めたり緩めたりするのに
使います。これにもサイズがあり、違ったサイズのドライバーを使用するとねじを潰したり、滑って怪我をしたりもするので、きちんとしたサイズの物をつかうようにしましょう。また、古くなって滑りやすくなったら交換しましょう。
錆などで固着したネジを外すのに使う”ショックドライバー”もある。

Bレンチ : 
オフセットレンチ(通称メガネ)とモンキーレンチがあります。メガネは角度付いているので少し奥まったところでも使えるし、レンチを回転させたときに他の部品に当たりにくくなっています。モンキーレンチは口金サイズを自由に変更できるのでスパナを全サイズ揃えていないときには便利に使えますが、スパナなどの補助的な物として使って頂きたい物です。

Cプライヤー類 :
実に多種多彩なのが、このプライヤー類。電線コードを切る”ニッパ”や”ペンチ”、パイプの掴みに使う”ウォーターポンププライヤー”、細かな作業時に使う”ラジオペンチ”、スナップリングの脱着に使う”スナップリングプライヤー”、約1トンの圧力で掴む力を保持できる”バイスプライヤー”、電線の被覆を簡単に剥がす事が出来る”ワイヤーストリッパー”等があって、適材適所の使用が肝心です。

日常整備程度の使用で上記の工具を一通り揃えても約1万円以下で済むと思います。納める工具箱は上下2段で細かに区分けされていない方が自由度があって良いでしょう。部品は工具箱に入れず段ボール箱へ、ボルトや小物部品はビニール袋に入れると良いでしょう。

整備のポイント
整備に慣れないうちに起こす失敗はボルトのねじ潰し折損(ねじ切り)。誰もが辿る道?です間違った工具の使い方は怪我をするばかりでなく、大事な部品を傷めて取り外しを困難にし、結果修理屋の世話になったのでは『自分でやろうと思ってせっかく工具揃えたのに』も水の泡、かえってお金が掛かることにもなる。
そこで、"工具の正しい使い方"を、経験を交えてお伝えしたい。

ネジを潰さない方法
ネジとはボルト・ナットに螺旋の山と谷が切られている物。これが上手く噛み合わないといけないが、噛み合いが合っていなくても2〜3回転回ってしまうことがある。こんな時は固く回っているので、その時点で再度締め付け直せば良いのだが、初心者のうちはそれが分からないことがあり、そのまま力強く締め付けてしまいネジを潰してしまう。

そこで、ネジを潰さない方法は「ネジの切り始めを合わせる事」。ボルト、ナット共にネジの切り始めが有るのだから、これを合わせるときちんと締め付け出来る。
その方法は、一度ネジを逆方向に回してみよう。通常のネジは右ネジなので、反対の左に回すと”カタン”と落ち込むとこがある、そこがネジの切り始めが一致したところ。それから締め付け方向に回すとスムーズに締め付け出来るはずだ。

古くなったり、スムーズでない場合はグリスかスプレータイプの潤滑油を付けて締め付けを行うとより滑らかに締め付けが出来、次回の整備時でも取り外しが簡単に出来る。

+ドライバーを使うボルトは通常のバイクで使用しているのは”パンヘッドスクリュー”と言います。頭の形が”パン”に似ているからです。
潰す物のもう一つに+ドライバーが滑って潰してしまうことがあります。ドライバーにもサイズがあって、バイクではボルトの径6mmで使う#3、通常"大"と呼んでいる物。次に小さいのは#2で"中"、ボルト径で5mm、#1はボルト径4mm用で"小"。
違ったサイズで使うのは厳禁!です。一番失敗が多いのは緩める時で、左に回すことだけに力を掛けるから"舐めてしまう"。まずはしっかり"グッ"と押さえること、ドライバー先端のビットがぴったりはまって固定されたら押さえた力を抜かずに回す力を加えること、すると"パキッ"と緩むはず。

それでも舐めてしまったら・・・、舐めたパンヘッドの+部分をハンマーで平らに戻し、そこへ元の+部分に貫通ドライバーをハンマーで叩き込み、固定されたらドライバーを緩める方向に力を入れてハンマーで叩くと緩みます。

折損しない方法
ボルトのサイズ別に締め付けトルクが決められている。しかし、それを正確に行うには”トルクレンチ”が必要になるが、高価な物であり、工具と言うよりは測定器なので一般の方はちょっと購入しないだろう。
そこで、目安を付けてみよう。ボルトやナットを回していくと一旦固くなって止まるので、そこから1/4〜1/8回転回したところが標準締め付けトルク。緩み止めのスプリングワッシャが付いている物はスプリングが閉じてから上記の回転回すと良いし、スパークプラグではシールリングが潰れてから1/8〜1/4回転したところが規定トルクになる。
(シールリングが潰れていく課程では”グニュー”と柔らかい感触があり、これが無くなると完全に
潰れているので、そこから1/8〜1/4回転締める)

6mm径のボルトで、長さが100mmを越えるとボルトのねじれや伸びから締め付け加減が分かりづらい時があります、ボルトをねじ切ってしまう事があるので充分注意すること。
(私もRDの開発中に何度かクランクケースの締め付けボルトをねじ切った事があります)

錆び付いたボルトを外す
古くなると、ナットからはみ出したボルトのネジ部分が錆びて緩みにくい時があります、こんな時は急がずに一工夫しよう。潤滑スプレーを掛けて10分くらい置いておき、錆びた部分をワイヤーブラシで落としてから緩めるようにしよう。
締め付けたボルトが緩みにくい時も有りますね、その様なときはボルトの頭をハンマーでカツンと叩いてみよう。ショックを与えることで緩みやすくなります。
※どうしようもないケース:ハンドルのスイッチホルダーに取り付けられたミラーは時に外れにくい。
これはアルミで出来たスイッチと、鉄で出来たミラーのネジの間で電位差が生じてアルミが劣化腐蝕・膨潤しミラーのネジにまとわりついてしまうために、緩める際にスイッチのネジがボロボロになってしまうことが有ります。組立時にグリスを塗布してねじ込むとこのようなトラブルを防ぐ事が出来ます。

2001年1月作成
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