The World According GUI and CUI

南野 輝


 GUICUI の違いとは何か。それは松屋と吉野家の違いである。吉野家において、ユーザーはシェルに向かってコマンドを発して目的のオブジェクトを入手する。このとき、「つゆだく」だの「ねぎだく」だの、いわゆる引数を知らなければ永遠にそれは手に入らない。一方、松屋ではユーザーはコマンドを発する必要はなく、食券を購入してシェルに渡すだけだ。シェルはそれを解釈せず、そのままカーネルにゆだねてくれる。

 このように考えると、世界は GUICUI がせめぎあっている場所だということに気がつかれるだろう。一部超高級宝飾店のような例外はあるものの、一般に、比較的コストの高いものが GUI で処理され、低いものが CUI で処理される傾向が見て取れる。GUI の代表的なものとしては、タワーレコードや HMV のような CD ショップがある。建物はジャンルによりディレクトリ分けされ、さらにディレクトリはアーティスト別や ABC 順といったフォルダ分けがされており、ユーザーはそこでファイルを選んでレジに持っていく。このとき、フォルダ内に実体ではなくエイリアスが置かれている場合もあるが、GUI である以上、もはやそれは当然の話だ。

 CUI を代表するのは、もちろんスターバックスを置いて他にあるまい。ここのシェルは強力で、複雑なスクリプトを処理できる。吉野屋が command.com レベルだとすると、スターバックスは sh だといっていいだろう。もうずいぶん前からのことではあるもの、食い物屋方面では性能の劣るシェルが激増しており、ひどいときは日本語どころか英語ですら通らないものまで存在している中、この高機能さはマニア心をくすぐる。ただしそれだけに、ユーザーの習熟度が問われることはいうまでもない。いまだに

Latte -ice -grande

ぐらいしか使えない私は、たまには他のコマンドも試してみようとしては実行エラーを引き起こし、困惑することになるのであった。また、ひたすらシェルとコマンドのやり取りを楽しむ、六本木や銀座のクラブといったものもあるのだが、それについてはまた改めて思考してみたい。

 さて、これまでの考察で理解していただけたであろうが、どちらが優れたシステムかといったことを問うことは、はなはだ無意味である。目的とコストなどによってそれらは使い分けられるべきで、要は適材適所ということだ。

 しかしながら、もしスターバックスが松屋方式を取り入れてくれたらどんなに楽であろうかと思わないでもない。やはり素人には GUI の方がとっつきやすいと思うヘタレな私であった。


2001/12/04