燃焼〜さまざまな窯の形式

燃焼〜言葉で言えば簡単ですが、炉・窯の世界では、この言葉程奥深い
ものはありません。また、燃焼形式と炉材の選定、窯の設計には密接な
関係があります。基本的にどんな分類があって、どういう意味を持つのか
について、簡単に紹介をしていきたいと思います。

@炎の流れによる分類

昇炎式・横炎式・倒炎式に分かれます。もっと簡単に言えば、下から炎が
立ち上る形式、炎が横に流れる形式、炎がぐるっとまわって上からかぶさって
くる形式の3つに大別されます。

では、この形式の違いを、窯の歴史を紐解きながら、説明をしましょう。
古代の窯には電気やガスなどあろう筈もありません。
当然、薪等の天然資源を使っての焼成になるわけですが、もっとも古い時代は
窯の概念がなく、
野焼きというもっとも原始的な方法で焼かれていましたが、
これでは温度もあがらず、炎も一定しないため、安定した焼成を望むのが困難でした。

→燃焼形式に見る窯の歴史→
古代昇炎式の窯 穴窯(横炎式) 登り窯(倒炎・横炎式)

次に昇炎式の窯が登場することによって、初めて、窯という形式が認められるように
なりましたが、この形式では、炉内ガスや炎の調節をする事が困難でした。
これが、次の
穴窯に進化すると、煙道のダンパーによる炉圧調整が可能になり、
焼成温度の上昇によって、従来より高温での焼成が可能になり、同時に傾斜地
に作られた事によって、天然の煙突効果を持ち合わせ、窯としての機能を複合的
に発揮出来るようになったわけです。そして、それがさらに機能的進化を遂げたのが
登り窯です。ここでは予熱という考え方が登場します。そして倒炎式の炎は、炉内の
雰囲気をより安定させ、熱効率を高めています。登り窯は各個室で倒炎式、全体で
横炎式という、両方の特徴を兼ね備えています。倒炎式の顕著な例としては他に
下図の角窯(和窯)があります。

倒炎式角窯

現代の窯も、炎の形式は大体この3方式に分類が出来ます。(電気炉除く)大きく違うのは、
さまざまな熱エネルギーを得たこと、炉圧調整(ダンパー)や燃料・空気量の
調整によって、細かな設定が出来るようになった事です。最近ではコンピューター
電子計測機器の導入によって、一定の雰囲気になるようにコントロールされています。
連続式焼成(例えばホフマン型リングキルン)の様に、大量生産型の窯も近代に
なって登場し、単独炉(シャトル)・連続炉と区別をされています

A燃料による分類
文明社会の発達と共に、さまざまな燃料が生まれました。その進化によって近代の
さまざまな炉の形式が生み出されたと言ってもいいでしょう。大まかに現在の燃料を
検証しますと、

固体 石炭・コークス・木材(薪)・木炭
液体 ガソリン・灯油・軽油・重油・アルコール・クレオソート
気体 石炭ガス・水素・天然ガス・プロパンガス・ブタン
その他 電気

おもな燃料だけでもこれだけの種類があります。これから炉を作るという時に、燃焼形式
をどれにするかというのは重要なポイントになるでしょう。特に、燃料の違いによる、燃焼
時の現象・特色をつかんでおきませんと、目的によっては障害になる場合もあります。
固体燃料より、液体燃料の方が燃焼効率が良く、燃焼温度・熱効率の点でも勝っています。
気体燃料はさらに熱効率が良く、燃焼空気との混合が楽だが、多少理論火炎温度が低い。
尚、これらの燃料組成のの元素記号、C・H・Oから分かるように、燃焼時にHが多いほど
水蒸気ガスが出やすいという事等も考慮して、炉の設計にあたると良いと思います。
水蒸気の対策が悪いと、製品上にマットになりやすい等あるからです。
電気炉は炉の雰囲気という点では、もっとも安定していますが、例えば、陶芸のように
炎が生み出す独特の味という楽しみ方は出来ません。
B酸化と還元
きれいな完全燃焼の状態を酸化、燃焼に必要な空気量が不足気味で、ややくすぶって
燃焼している状態を還元と呼びます。つまり逆に言えば、燃焼に必要な空気量が足りて
いる状態が酸化、不足状態が還元となります。何故、こうした焼き方の違いが求められる
のでしょうか。それはこの焼き方の違いで製品が全く様子が異なるからです。
日本が世界に誇る磁器は、その生地の白さ・美しさにあるといえますが、これは生地の中
に含まれる酸化物が還元状態で白く焼成する為で、還元雰囲気の焼成が不可欠なのです。

C燃焼バーナー

炉の設計・バーナーのコーナーで詳しく説明する事になりますが、炉を設計施工する場合は
これらのことを念頭に着手をする必要があります。つまり目的を明確化し、それに応じた燃焼
形式を決めていくという事です。バーナーの選択もその一つです。
燃料形式によるバーナーの選択もありますし、バーナー自体も窯の形状に合わせて様々な
炎を形作る事が出来るからです。

バーナーの種類は沢山ありますので、必要がありましたらお問い合わせください

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