第2試合で敗退した播磨南の選手や関係者のみなさんが気落ちされている状況と、次の試合のための準備をする市尼の選手や関係者たち。それは、同じ空間の至近距離でことが動いているのですが、両者はまったく別世界のもののように見えました。
1台のテレビで左右で見える画像が違うというものが発売されたと聞きましたが、まるでその状況でした。
播磨南の選手たちは、ベンチから出てすぐのところで、涙する選手、座り込む選手、3年生にとっての最後の試合。ひとりひとりに悔いが残るでしょう。負けたものに「がんばったんだから〜」という言葉はいらないです。頑張ってもどうしても、もう終わってしまったのですから。「勝ちたかった、悔しかった」、その思いを今後の人生のなかで、役に立つように、頑張ってほしいと思います。
播磨南の応援団は席を立ちましたが、わたしが座っていたあたりは、ほとんど人に入れ替わりはありませんでした。早めにきて席をとっていて、かなり正解です。今日は、運がいいかも。
播磨南の選手のなかには、バッグを3つくらいもって球場をあとにする選手がいて、そのあとに涙がまだ止まらない選手が続きました。そうやってバッグをいくつも持つ役回りをする部員がちゃんといるんやね。選手同士の気遣いを感じました。
スタンドはすでに市尼の応援ムード一色なのに、やはりそこだけは異次元の時間がありました。
さて、第3試合の2回戦、市尼は伊川谷北高校との対戦です。
伊川谷北高校といえば、たしか100mの女子が近畿のチャンピオンになってたなぁと、野球とは全然、関係のないことを考えてしまいました。陸上の兵庫IH、近畿IHを観戦したおかげで、兵庫県の高校の名前がだいぶわかるようになってきました。だからといって野球とは全然、関係ないです。
市尼は地元やし、部員の応援も多いし、ブラスパンドも入っていて、自ずと大応援団になります。
それに対して、伊川谷北は、ベンチ入りせずにスタンドで応援する選手の数が、、、少ない、、、。
あぁ、これってもしかして、市尼の勝利を確信させるひとつの事実なのかもしれないです。
スタンドでは、部員や保護者の方たちがメガホンを配ったり、冷たいお茶をスタンドの階段のところに置いてくださって、水分補給をと気遣いをされています。
しばらくしたら、スタンドにいる部員のひとりの挨拶が始まりました。
「ベンチ入りできずに悔しい思いをした。選手たちが勝ち進んでいくことを心から応援したい」という内容だったと思います。
わたしは、その挨拶を聞いただけで、涙が出てきて、どうしようもなかったです。
さっきまでは、播磨南の選手をみながら、涙流していて、今度は市尼の選手の言葉を聞いてウルウル。
市尼は体育科が創設されて、市立高校にもかかわらず県内から入学することが可能だそうです。
市尼で野球をしたいという生徒はたくさんいて、体育科に合格することは、たいへんなことときいています。体育科でなく、一般入試をパスして市尼に入学し、野球部に入部する選手もいて、どの子もみんな市尼の野球部の部員としてプレイすることを望んでいたはず。
もし市尼という選択をしていなくて、他の高校だったら、レギュラーになっているような選手ばかりでないかなと思います。晴れの舞台に立つことなく、最後の夏を終わってしまう選手。負けて無念の選手もいれば、また、その場に立てずに無念の思いをもつ選手もいます。
試合前のその挨拶は、そういう無念の思いを断ち切り、チームメイトを応援していくんだという決意にようなものを感じました。
わたしが「花子のノート」で紹介した山口光高校の杉村主将の選手宣誓も、ベンチ入りできなかったひとりの選手に対する思いから生まれたものだと、杉村さんからおうかがいしました。
そうやってお互いを思いやる気持ち、きっと市尼の選手たちのなかにもあると思います。
そうしているうちに市尼の守備練習が始まりました。
きびきびした選手の動きを見なければならないのですが、わたしの目は、ノックをしている方(監督さん?)を見ています。
ノックをする姿が、絵になっています。後姿しか見えませんが、贅肉ゼロのスラリとした体型、、かっこいいです。これは守備練習は必見です。
選手たちの動きもとてもよくて、「安心、安心」と頼もしくみていました。
最後に捕手にフライをあげるのに、ご愛嬌で2本、失敗されているのもまた、微笑ましくみていました。
続いて、伊川谷北の守備練習です。内野手が何本かエラーしていて、これってもしかして、市尼のほうが上よねぇ、とまた根拠のあいまいなことを考えながら、見ていました。
伊川谷北の監督さんも、最後、捕手へのフライを失敗されていて、きっと今日はそんな日だったんでしょう。
市尼の応援スタンドでは、試合前にすでに校歌斉唱が2回。
わたしが市尼のOBであることを実感できる唯一のときが、この校歌を歌っているときです。
でも、いまだに「正しく、強く、美しく」の順番を間違えそうになって、根本的に覚えていないんだとちょっと恥かしかったりして。でも、今日は計5回、歌ったので、たぶん、次は間違えないように歌います。
試合は14時10分開始で、ほぼ予定通りです。
1回表の伊川谷北の攻撃。2三振のあと四球。そのあとセンターに大きなフライを、一瞬、捕ったと思ったけど落としていて、いきなり1点を専制されてしまいます。
伊川谷北スタンドの沸きようといえば、ものすごいもので、シード校の市尼から先制点というのは、ほんとうに嬉しかったでしょう。
市尼の投手、村山くんは、その後、動じることなくもう次の打者を三振でアウトにして、市尼の反撃を待ちます。
伊川谷北高校の戦力がどういわれているのか、全然、知識はないけれども、「勝負はやってみないとわからない」というのがスポーツをみるときの大切な視点です。
市尼に限って、負けるなんてありえないと、ファンとしては思うけれども、そういう先入観はダメです。
まず同点にしてと祈るような気持ちで1回裏の攻撃を見守りました。
(つづく)