4000mになって、エメレ選手がさらに前に出た。10分43秒なので、1周約64秒。ペースが最初からほとんど変わっていないということになる。ワイナイナ選手もひきはなし、ひとりぶっちぎっている様子だけれども、走りはそうではなく、淡々と自分のペースで走っているという感じで、それがまた強さを印象づけることになった。4000mのところで松長選手が11分5秒と少しペースが落ちる。3位集団にも動きがあって、瀬戸選手が追い始めて、次に野田選手。岩佐、池谷、入船選手が続く。市之瀬、小嶋選手が3位集団から離れるかたちになった。
カギカ、松長、瀬戸選手とが続き2位集団と3位集団が完全に一緒になる。そしてカギカ選手が遅れはじめて、野田選手が瀬戸選手を追っていく。松長選手があっさりと日本人1位になるかと思われたレースが、刻一刻と変化している。「いったい誰が出るのか」とドキドキしてくる。
ラスト1周。トップはエメレ選手、遅れてワイナイナ選手。そして丁度、半周ほど遅れたところで、野田選手がスパートしている。松長選手、瀬戸選手を余裕でふりきっていく。野田選手といえば、レースの約半分は最後尾を走っていた。その様子に「あれ?」という思いはあったが、3位集団にいて、徐々にペースをあげていって、最後はふりきるというレースで、もしかしたら計算どおりだったのかなという気さえしてきた。
1位 エメレ(アラコ) 13分26秒33 7位 池谷寛之(本田技研) 13分53秒11
2位 ワイナイナ(スズキ) 13分31秒16 8位 岩佐敏弘(大塚製薬) 13分54秒35
3位 野田道胤(本田技研) 13分44秒84
9位 入船敏(カネボウ) 13分55秒43
4位 瀬戸智弘(カネボウ) 13分47秒73 10位 市之瀬進(カネボウ) 14分10秒23
5位 松長信也(中電工) 13分48秒68 11位 小嶋大輔(本田技研) 14分18秒34
6位 カギカ(NKK) 13分51秒90
レースが終わって、野田選手がスタンドにいる関係者と握手しにこられて、丁度その近くにいたわたしたちは、直接「おめでとうございます、おつかれさま」と声をかけることができた。野田選手が「楽勝!」と言われていたので、あのレースはこびはやはり計算どおりだったと確信する。池谷選手も丁度前にこられて、ガヤさん「おつかれさま〜」の声に目線ばっちり合わせてもらって、ガヤさんはほとんど悩殺状態。小嶋選手が来られなかったのは残念だけど、調子の悪いレースだったから仕方がない。欠場覚悟でやってきたのだから、小嶋選手が走られる姿を観れて、こんなに近いところで10回以上、直接に声援できただけで十分だった。
時間にしたら14分ほどだけど、そのなかにたくさんのドラマがある。そのドラマを直接観て、感じることができた。
来てよかった。改めてそう思った。
俄か本田技研応援団は、しばらく放心状態で、レースの余韻を楽しんでいた。
(5000mは終わり)