100キロ完走計画

 100キロの大会を走るにあたって、夏はしっかり走りこまなければという思いはありました。わたしは、受験生相手の仕事もしている関係で夏休みというのは、やたら忙しくまとまって練習時間がとれないというのが実際のところです。でもそうはいっても、練習しなければ完走できるわけがないので、とにかく練習時間を確保することに努めました。練習コースは主に峠の往復コースでそれが約45分、あとは平坦な公園の周回で時間調整しました。2〜3時間走れたときもあったけれど、ほとんど峠の往復で終わったかなという気もします。
 絶対的な距離不足という不安のなか、完走するにはどうすればいいかを考えると、自分のもっている力を小出しにして最後までつないでいくしかありませんでした。Kadoさんは「原付自転車でツーリング」と言ってくださったけど、まさにギリギリの燃料を大事に大事に使って走らなければなりません。
 そこで制限14時間を、どう割り振って走るかを考えました。5箇所の関門があって、関門時間に合わせていけば14時間で完走できるという設定だったけれど、関門ギリギリでは不安なので、自分で考えてみました。
 今回、わたしは「100キロ」と考えずに、関門までの距離(30キロ〜7キロ)を確実にクリアしていくという考え方をしました。「あと何キロ」といのも、100から引いた数ではなく、次の関門まで○キロという考え方をしました。
 0〜30キロ 7分30秒      *右の設定で走ると13時間51分で完走できます。
  〜56キロ 7分30秒        極端な上り坂は、キロ10分で設定しました。
  〜73キロ 9分45秒
  〜88キロ 9分            わたしが完走するには、この計画以外に考えられませんでした。
  〜94キロ 10分

 それからもうひとつ、完走のためにしたことがあります。
 掲示板に応援メッセージをたくさん書いてくださったので、それを印刷してウエストバックに入れてお守り代わりにしました。もっとも効いたのはシオバラさんの「今の力を出し切って、それが今の実力。反省はその後」というものでした。わたしはともすれば、スタート前から反省してしまうので、この言葉はプラス志向に随分と仕向けてくれました。

プラス志向

 この大会では、後ろ向きのことを考えず、すべて自分の味方にしようと心がけました。ウルトラマラソンに限らず、大会で「あのウェアのほうがよかった、あのシューズのほうがよかったのでは」みたいなことを、つい考えて弱気になってしまうことがあります。今日は、すべてのことは自分にプラスなんだと言い聞かせるようにしました。
 そして何よりも、今日、大会に出れること、100キロに挑戦できることに感謝しました。もちろん、本心から感謝しているのですが、こういう大会に出れる自分は幸せ者、究極の贅沢をしていると考えるようにしました。
 このようにしたことは、あとで考えれば、わたしの気持ちを相当、前向きにしたようです。帰ってきてから、「悪天候で大変だったそうですね」と言われたのですが、わたしには、「???」でした。たしかに雨が降ったり止んだり、もちろん土砂降りもあったけれども、それが「悪」天候とは全然、感じませんでした。雨が降ったら、「雨降ってくれて、ありがとう。身体が冷やされて丁度いいわ」と思い、後半、上り坂になったら「上っているから、堂々と歩くことができてよかった」、下りになれば「もう力がないのに、下っているからとりあえず走ることができる」というように、すべてを受け入れるようにしました。

花子のノート
丹後歴史街道100キロ

寛平ちゃんに見送られて ―「その笑顔を忘れんなよー」

 さて、いよいよスタートです。ウルトラの場合は、結構、のんびり、リラックスしてスタートを待つことができます。長丁場のレースですからそんなピリピリしたところで、仕方ありません。
 この大会には、ゲストランナーとして間寛平さんが100キロ(ただし走るのは30キロまで)、トミーズ雅さんが60キロにエントリーされています。100キロのスタート前には、寛平ちゃんがマイクをもって、これからスタートするランナーたちに言葉をかけていました。最前列に並んでいるランナーを指して、「また、きてる、いつでもいてんねん、このおっさん」など。
 さて、スタートです。のんびりゆっくりランナーのかたまりが前に進んでいきます。スタートラインを越えるときに、ランナーはマイクをもった寛平ちゃんに、手を振って走っていきます。
 「今のその笑顔、忘れんなよー、60キロでもその笑顔で走れよー」と、何度もランナーに声をかけていました。
 60キロ走ったら、わたしはどんな状態になっているのかなぁと想像してみる。笑顔でいれるだろうか。苦しくて笑顔どころではないかもしれない。でも笑顔。笑顔を忘れないでいよう。今日は、ずっと笑顔でいよう。そう心に刻んで、走り始めました。
 午前5時、まだ暗闇のなか、100キロの道程のスタートです。

30キロまで 七竜峠(1)