30キロまで キロ7分30秒

 静かにスタートしましたが、自分のペースをみつけるまでには、しばらく時間がかかりました。予定では7分30秒ですが、それがどれくらいの速さなのか、よくわかりません。「抑えて、抑えて」と自分に言い聞かせながら、走りました。このランナーがいいペースで走っていると思ったら、しばらくついていきますが、結局のところあわなくて、一人になります。
 さて、スタートしてから数キロで七竜峠です。峠といっても上って、下ってという単純なものではなく、上ったり下ったり、結構、キツイというのは、前日の説明会で聞いていたので、心を引き締めました。たしかに上ったり下ったりしていますが、わたしがいつも練習している峠よりは緩いので、たいしてキツイとは感じませんでした。でも奢ってはいけません。1歩ずつ、1歩ずつ。その1歩が100キロへの道です。
 コース図では、確かに5キロまでだんだんと上がって、7キロまで一気に上がるという感じでした。まだ10キロ未満ですから、上りもしっかり走ることができました。予定では5キロを37分30秒ですが、35分かからずに最初の5キロをいき、10キロはくだりのため32分程度。ちょっとオーバーペースかなと思いつつ、進んでいきました。夜が明けて、丹後の海がみえます。時おり、雨も降ってきます。これからどうなるんだろう?という不安をもちつつ、7分30秒を意識しながら、前へ進みました。
 今回は、シオバラさんにエネルギー切れを起こさないようにと、氷砂糖を口にしておくというアドバイスをもらっていました。手ごろな氷砂糖が入手できなかったので、黒飴がいつも口の中に入っているようにしました。「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせながら、網野の海岸線を走りました。
 七竜峠を過ぎれば、しばらくは、それほどアップダウンのないコースです。網野から久美浜へ、海水浴場をいくつか通過する形で進んでいきます。
 15キロ過ぎからは、久美浜湾を1周する形で走ります。今回の楽しみの一つは、久美浜湾1周でした。久美浜には年に1回訪れるようなところで、もう10年来になります。海水浴場も知っているところもあり、ふるさとを走っているような気分でした。「この景色を堪能したかった」、だからこの大会にエントリーしたようなもので、久美浜湾の景色は最高でした。久美浜湾の内海をのぞみながら、小天橋を経て、ほぼ平坦な道を走ります。小天橋といえば、昨夜泊まった民宿があるところです。時間的にも7時くらいだから、丁度、応援も多くなってきました。もちろん、通過した網野町でもたくさんの方に応援していただきましたが、薄暗いなかだったので、なんか夢のなかにいるようでしたが。陽もすっかり昇ったこの時間は、「現実」を感じさせられました。久美浜町のたくさんの方に応援していただいて、30キロをむかえました。
 予定より(たぶん)20分くらい早く30キロに着きました。キロ7分30秒は確実にクリアできています。でも一方で、飛ばしすぎたのではないか、こんなに速く走ってしまって、後半、もたないのではないか、そういう暗雲も感じていました。とりあえず30キロ、最初の関門は通過することができました。

55.9キロまで  キロ7分30秒

 30キロを過ぎて、次の関門は約26キロ。ここもキロ7分30秒という設定です。56キロまでキロ7分30秒と考えるのでなく、30キロ、26キロという形で、目先の目標だけを見つめるようにしました。100キロから引き算していったら、気が遠くなります。
 とはいえ、この計画は少々、無理がありました。35キロから45キロは再び七竜峠です。これはキツイかもと思いつつ、30キロまでに作った貯金があるから、それを切り崩せばなんとかなるだろうと思いました。
 2回目の七竜峠は、思いの他、きついものでした。上りは好きなはずなのに、歩きたい誘惑いっぱいでした。まわりのランナーの80%は歩いていました。とにかく最後まで走ろうと思って、ゆっくり走りました。走っていれば、前のランナーを抜けるものです。
 でもさっきはあんなに軽く上れたのに、こんなに違うものなのかなと、ショックでした。のぼって、のぼって、のぼって、少し歩いて七竜峠の一番上を経て、少し下がったところの40キロ地点に到着。
 のぼり坂だったこともあるかもしれないけれど、この頃からのどが結構、渇くようになっていました。だからエイドでは、水やスポーツドリンクを多くとるようにしていました。40キロのエイドで、水を飲んでいると、あら、知った顔。亀井さん(?)の伴走のNAMIさんです。

NAMIさんと遭遇

花子「NAMIさーん、NAMIさんにお目にかかれるなんて、思ってもいませんでした!」
NAMIさん「(なんで花子に会うんだという感じで)いいペースじゃないですか!」
花子「オーバーペースです、たぶん、いつ壊れるかわかりません」

 たしかにペースはよすぎました。のぼりで少し歩いたとはいえ、予定の7分30秒はクリアできていました。NAMIさんたちと会うなんて、やっぱりオーバーペースなんではと、心配になりました。
 でも、ここでNAMIさんたち(NAMI隊)と遭遇したことが、あとの16キロの走りを充実させ、完走につながったのだと思います。
 NAMIさんは、「早くゴールして、ビール飲んで昼寝したい」と。NAMIさんにとって100キロは、わたしが20キロを走るくらいの感覚ではないかなと思いました。

 40キロのエイドをNAMI隊とともに出発しました。下りだったので、「ついていっていいですか〜」と1キロほどついていったけれど、もともとスピードが違うのでしょう。あっさりとおいていかれました。あらためて下りはあかんなと思います。七竜峠の結構な下りですが、腹筋のちょっと上ところにビシビシひびいて、吐きそうになります。それでもNAMI隊の背中はみえるところにいようと、少しは頑張ったけれど、ダメでした。おそらく12時間くらいを予定されているのだからと、気持ちを持ち直しました。

花子のノート
丹後歴史街道100キロ
網野町から弥栄町へ