55.9キロまで  7分30秒(2)

うどんエイド

 NAMI隊と離れ、約30分。峠も終わり、浅茂川漁港にはいりました。エイドがなにか賑わっています。そうだ、ここはうどんのあるエイドだということを思い出しました。レモンティをもらっていると、なんとNAMI隊がいるではないですか! すっかり置いてかれたと思っていたわたしには、意外でした。すっごい差がついてたつもりでしたが、追いつくものです。
さて、楽しみのうどん、うどん、うどんと、うどんの列に並びました。5〜6人の後ろに並んで、少し待ったけれど、うどんにありつくまでに、2分、うどんを食べてスタートするまでに5分はかかると判断しましまた。自分が14時間ぎりぎりの計画であること、前半のオーバーペースでいつ、止まってしまうかわからないこと、とにかく関門アウトだけは避けたいこと、それらを考え合わせると、ここで5分以上止まって、もし関門を5分とか10分の遅れで通過しなかったら、絶対に後悔する。うどんは食べたいけど、うどんを食べなかったからといって、エネルギー切れにはならないだろう、口のなかにはずっと、黒飴を入れていたし、次の関門の55.9キロに預けてある袋には、ゼリー等を入れているので、あと10キロもたせればいいと思い、うどんを諦めて走り出すことにしました。
 そこで幻聴、Kadoさんの声「花子が、エイドでうどん? そんなん10年早いんだよ〜」。
 花子「はい、そうです。篠山マラソンで猪汁食べるのも10年かかりました。うどん食べてるヒマあったら走って前に進みます」
NAMI隊には、「わたしは遅いので、先にいきます」といって、エイドにあった飴を数個もらって、走り出しました。ここで、うどんを諦めたことで、どうしても完走したいという気持ちをさらに強めました。「うどんを諦めたんやし、頑張らな」と、通常では通じないことが、通じてしまいます。

NAMI隊と抜きつ抜かれつ

 NAMI隊より先に行ったけれども、速さが違うのですぐに追いつかれるだろうと思うと、しっかり走っておかなければと、すごく緊張しました。追いつかれるまでは、しっかり走って、追い抜いていかれたら、急にダラっとしてしまう自分に、「おいおい」と思いつつ前に進みました。そして次のエイドに入ると、再びNAMI隊に遭遇。ふたたび「あれ?」と思いました。追いついてしまうということは、そんなに遅れているわけではないのかなと、思いました。エイドでスポーツドリンクに水をたして、流しこんで再び、走りはじめました。NAMI隊よりまた、先に行ってしまって、また、抜かれるまで背中を緊張させなければなりません。「早く追い抜いてよね」と。そして追い抜いてもらったら、ふたたび「ダレー」となっています。結局、そういうことを、55.9キロまで繰り返すことになりました。缶詰のパイナップルのあるエイドでは、パイナップルを2切れ食べて、缶詰の汁に水を混ぜたものを流しこんで、スタート。エイドに着くごとに、「はよ、行きや」というKado幻聴が聞こえてきました。

あたたかい応援

NAMI隊に追いつかれるという緊張がもてたことと、あとは網野町の人たちの応援に背中を随分と押されました。家の前に出て応援してくださるのですが、それがだいたい等間隔で、「応援してもらっているのにしっかり走らなければ」という感じで走っていました。結構、疲れていていつ歩いてもおかしくない状態なのですが、応援があるものだから、「次の家のあの人たちのところまで走ろう」と思って走りました。「次の家」は延々と続いたので、結局、歩くことはできませんでした。そしてその応援は弥栄町に入っても同じでした。弥栄町は以前「スイス村リゾートマラソン」という大会で何度もきていたので、馴染みのある町でした。ときおり雨も激しく降っていました。
「ごめんなさいねぇ、こんなに雨降って、、、」。いえいえ、雨降ってるのはおたくらのせいではありません、もの好きが走ってるだけですやん、と心の中で思っていました。丹後半島というのは、雨の多いところで「弁当忘れても傘忘れるな」といわれるほどのところです。
あたたかい応援とNAMI隊の遭遇で、苦しいと思われる55.9キロまでを予定より20分も早く、走ることができました。

55.9キロは、弥栄町の役場ということで、あたりの雰囲気も少し賑やかな感じでした。「信号わたって、その先だよ」という地元の人の声。地元の人の「すぐ」とか「もう少し」という言葉は、あてにならないというけれど、「信号をすぎれば」という目標ができるとまた違うものです。エイドまでもう少しは、もう少しでも、なかなかたどり着かないものです。
そこでまた、エイドでもないのにNAMIさんを追い抜かすことになります。自販機でビール買ってられるところを、お先にいかせていただきました。なんという余裕。わたしも飲みたいと思いつつ、いかん、いかんと打ち消しました。ここでビールを飲んだら、うどんを諦めた意味がないと、まだ、うどんにこだわるわたしでした。
役場について、おにぎりを食べていたら、NAMIさんがビールをすすめてくださったけれど、ぐっと我慢して、「ゴールしたら飲もう!」と誓って丁重にお断りしました。そして長袖、ロングタイツから、半袖、半スパッツに着替えました。履き替え用のシューズもおいていたけれど、また雨が降れば同じだし、サロマはまだあまり履いてなかった不安もあったので、くつ下だけを替えました。ゼリーを飲んで、ヤクルトミルミルを飲んで、ウエストバックのなかの飴を詰め替えて、トイレに行って出発です。キロ7分半はクリアでき、前半戦は予定通りでした。

花子のノート
丹後歴史街道100キロ

「降るなぁ」

50キロ過ぎのたんごあじわいの郷へ入るあたりで、お天気が急によくなって、ぴーかん。思わず、「やべー」となったけれど、そこにいた地元の人が「この雲は降る」と断言。しばらくしたらほんとに激しい雨で驚きました。

碇高原へ