ハンドボール北京五輪予選再試合(男子) 代々木体育館の風

開場前16

テレビでは、前夜から並んで会場を待つ人、当日券を求めて待つ人などを報道していたので、何時に会場へ行けばいいのか迷いつつ、1時間前の16時に代々木に到着。
席別ではなく、チケットをもっている人は6列を目安に並んでいました。
わたしが並んだところは、たぶん2つめの集団だったと思います。

案内はスピーカーをもった人がひとり。誘導する人たちがたくさんいたので、とくに混乱することもなく整然としていました。

騒いでいるのは、むしろ報道のカメラをもった人たち。「代々木にいかにたくさんの人たちが集まっているか」を伝えたくて、興奮気味にレポートしているように見えましたが、実際にそこに集まっている人たちは寒いところに、16時にきたわたしで1時間強、待たされることになるのですが、騒ぎも何もせず、静かに待っていました。
「騒ぐなよ、メディア」という気分でした。

ペットボトルが持ち込めないことや手荷物検査の説明があって、集団が少しずつ移動していきます。
このあたりも、集団の誘導のプロなんでしょうね。
まったく混乱なしでした。

手荷物検査は、わたしは世界陸上のときの厳しい検査に慣れていたせいか、「それで大丈夫?」という感じでした。
バックを大きく広げて出すと、係の人に「手を入れていいですか?」と聞かれて、1秒くらい手を入れて終わりです。
世界陸上のときは、バックの中のポーチまで中身を確認されたので、ずいぶんと簡単に思えました。

手を入れたらイヤと言った人は、赤外線の検査でもするんでしょうか。
検査そのものより、挙動不審者をみているのかもしれないですね。


試合開始前

会場に入ると、意外にのんびりしていました。
わたしより先に入った人はたくさんいて、先に入った人たちが席を確保しているようなところもあったけれど、特にひんしゅくをかうほどの席取りは、わたしが座ったアリーナA(ゴール裏)ではなく、ちゃんと席を確保することができました。

ゴール裏の端は、家族席になっていて、選手の家族のために確保されていました。
わたしは、家族席と一般席の境目に座りました。

報道では「過熱ぶり」を演出しようとしていましたが、その場にいる人たちは、あまりそういうのはなく、静かに待っていて、平和な空気でした。

日本側の青のサポータに遅れて、韓国側のサポーターも入場してきました。
メインスタンドの左側半分、それ以外の4分の3は、日本のサポータ席になっていました。

サッカー協会から、ブルーのバンダナと青の板(厚い厚い厚紙)も配られていました。サッカーは国立で試合をしているというのに、なんともありがたいこと。
競技を越えて、スポーツを盛り上げていこうという、そういうきっかけにもなればと思います。

席では飲食禁止でした。
応援すると喉が渇くので、ちょっときつかったです。
あとでわかったことですが、紙パックの飲み物は持ち込みOKだったようです。

アップが始まったのが、たぶん6時半か45分くらいだったと思います。
そのとき、GKの坪根さん、四方さんの気合というか集中力というか、そういうものを感じましたね。
試合中も、前半、ファインセーブを連発する坪根さんのそばには四方さんがつねにいるという感じで、2人で守っている、そんな雰囲気でした。

アップをする選手たちは、のびのびとしていました。
緊張感が張り詰めて、その先のリラックスを感じました。

そして、アップをする選手たちをベンチサイドで見つめるのは、ベンチに入らない11人の選手たち。
25人の代表候補選手たちが、短期間でここまで作り上げてきたチームです。
25人の選手たちの一体感をみているだけで、
「よく、この日をむかえられたものだ」と、思いました。

9月、豊田での敗戦のあと、重い身体をひきずって帰ってきたこと。
そういえば、あの日は台風が上陸して日本列島が大混乱した日でした。

わたしのTシャツは「2012年」。
そう、2008年はもうないと思っていました。
でも、2008年があるかもしれない。
ほんとうに、こんな日がくるなんて、夢にも思っていませんでした。


オープニングセレモニー

オープニングがどういう感じなのかは、昨日の女子のをテレビでみていたのでわかっていましたが、日本リーグのときと同じ音楽というのがなぜか嬉しいです。
代々木体育館と大きな会場でたくさんの観客が入っている。
でも、普段通りの試合開始前の風景でした。

いつもとちょっと違うと思ったのは、試合前のシュート練習のとき、宮崎くんがジャンプシュートしたときに2回ほど、「悲鳴」っぽいものがあがったときです。
たぶん、初めてみたので、びっくりしたのでしょう。
まっ、わたしも最初にみたときはびっくりしましたが。
でも一応、「騒ぐなよ」って気分でした。

韓国の選手紹介、そして日本の選手紹介、そして両国の国家が流れます。
日本の選手は、手をつないで気持ちを落ち着けているようにみえました。

あとどのタイミングか忘れましたが、韓国の選手は、観客席にボールを投げいれていました。韓国の場合は席が固まっているのでやりやすかったのかもしれません。
日本選手がやってたら、ちょっと危なかったかもしれません。
なくてよかったのかもしれないけど、ちょっとした盛り上がりは作れたと思います。


試合開始

試合については、テレビで見られた方のほうが全体を見渡してよく見られていると思います。
応援するのに忙しくて、目の前で起こっていることを追うのに必死だったということかもしれません。
応援は、メインスタンド側でそれぞれに盛り上げてくださっていて、ゴール裏のわたしたちは、その応援を追う形で、応援をしていました。
コールする選手の名前も、1階の応援のところのが見えたので、それを追って応援することができました。

「ニッポン!」
「ディーフェンスー」
「オーフェンスー」
そして名前のコール。

思いっきり声をあげて、そしてチアースティックを鳴らしての応援を続けました。
前半は、ゴールを守る坪根さんの後ろだったこともあり、「入る」と思ったシュートをことごとくセーブ。
「うぉ〜、止めた〜」と思わず歓声をあげてしまいました。

ベンチにいらっしゃるもう一人のGKの四方さんが飲み物を渡し、そしてアドバイス。
日本のゴールは2人で守るという決意のようなものを感じました。

そして、出てくる選手がそれぞれ持ち味を出して活躍する姿も、何かがのりうつっているかのようでした。
自分のプレイなのだけれども自分だけではない。
チームメイト25人、そして応援する人たちの気持ちを身体全体で表現しているようなそんな気迫を感じました。

また、「フェアな試合」というのはこういうものというお手本のような両チームのプレイに審判の笛。
審判がいないようでいる。
こういう試合をわたしは初めてみたように思います。

 

試合中

日韓の熱いサポーターの応援のなか、韓国がつねにリードして試合が進んでいきます。
でも、まだあきらめる点差ではありません。
ここで決まる!と確信しても、韓国のGK(たぶん韓景泰選手だと思います)のセーブが凄い。もちろん、日本のGK、坪根さん、四方さんもいいのですが、韓国のGKは凄い!

わたしは、後半、韓国GKの後ろにいたのですが、思わず
「なんで、あれを止めるのよ〜」
と、叫んでしまいました。

それから日本の実業団、大同特殊鋼で活躍するペク・ウォンチョル選手とリ・ジェウ選手は、憎らしいほど決めてきます。
とくにペク選手のシュートは、効きましたね。

この両選手は、日本の実業団でプレイしていても、実力を維持するだけではなく、さらに上げていっているところもすごいと思います。
それだけ大同特殊鋼というチームが素晴らしいということでしょうか。
でも、そんな身近な選手だからといって、今日は相手チーム。
それなのに憎らしいくらい活躍してくれます。

日本も2点差までは詰めるのですが、そこまででした。
ペク選手がトドメを刺すようなシュートを打っても、それでも最後の1秒まであきらめない。選手もサポーターも一所懸命でした。

でも、無情にも試合は終わってしまいました。
がっくりとくる選手たち。
涙を流す選手たち。
日本のサポーターからは、ため息。

それでも、熱い試合をありがとう。
ここで再試合ができたことが、奇跡なのですから。
そして、試合はまさに日韓のガチンコ勝負。
審判も素晴らしかったです。

サポーターたちが選手の名前をひとりひとりコールします。
ベンチ入りしなかった選手たちの名前もコールします。
選手ひとりひとりに「ありがとう」の気持ちを込めて。

再試合が決まってから、こんなに短期間で素晴らしいチームになったと思います。
連日、メディアに取りあげられた選手たちは、どうなんだろうとちょっと心配もしました。でも、選手たちは変わっていませんでした。

好きなハンドボールを一所懸命にする。
その姿勢が伝わってきました。
メディアに取りあげられるだけではなく、強くなってこそという姿勢でした。
メディアに対応しながらも、浮つくことなく精一杯のプレイを見せてくれたことに感謝します。


試合終了後

テレビカメラは宮崎くんをとらえ、そしてキャプテンの中川さんは、いくつかの取材をうけています。
たくさんのテレビカメラ。
連日の報道ぶりからすれば、当然のことなのですが、これまでに見たことのない光景でした。そして、日本でプレイをするペク選手の取材もかなり長い時間でした。

中川さんは、取材を受けたあと、1階席からサインを求められて、それにも応じてられました。
体育館から出ると、またたくさんのメディアが終了後の様子を撮ろうと、うろうろしていました。
若い数人の女の子が、「ガンバレ」のようなことを書いたプレートをもっていたので、それが「絵」になると思ったのか、その子たちが狙い目だったようで、「次はガンバレ」みたいなことを言わされていました。

体育館のまわりは真っ暗なのですが、クルーの照明のところだけ明るかったです。
試合開始前と同じように、いかに「目立つ」ところを撮るのか、という感じでした。
静かに体育館を出るサポーターたちのなかで、メディアが「なんとかいい絵を撮りたい」とやっきになっているように見えました。
こういうのが、映像として流されるのだろうなーと、どうでもいいけどちょっと複雑でした。メディアってそういうものと思わないと。

代々木体育館はJR原宿駅のすぐ近くです。
信号待ちをしていたら、韓国チームのサポーターと一緒になったので、
「おめでとうございます。オリンピックに出場できてよかったですね」
と声をかけると、「日本も強かった」と言われました。

豊田での試合のあとの、後味の悪さと違って、ガチンコで勝負ができた、今日のこの試合は、韓国にとっても日本にとっても大きな1歩だったと思います。


その他、会場にて

会場は、1万人が入っているということであったが、人の多さで殺気立つということはなく、お行儀のいい人ばかりという感じでした。
人だかりができているグッズ売り場も、勝手に商品をもっていけてしまいそうなくらい無警戒です。
もちろん、そんな悪いことをする人はいません。
ブルーのタオルが早々に売り切れ、Tシャツも次々と売り切れていきます。
サイズとデザインの気に行ったものを探すにも、人がいっぱいでなかなか探せませんでした。急場だから仕方ないとはいえ、もっとうまく売れたのにという気がしました。

座席では飲食禁止なので、軽食を販売しているあたりのイスに座って食べることになります。これもまた、たいして混雑することなく、ゆったりとした時間が流れています。
マスコミは一所懸命に騒いでいるけれども、会場のなかはこんなに静かに決選のときを待っていたのでした。

あらためて思います。
ハンドボールファンは、行儀がいいと。


12
月から再試合が行われた1月末まで、連日のように報道されたハンドボール。

ハンドボールという競技が日本リーグがあって実業団チームがあて、プロ選手もいるということは、周知されたでしょう。

再試合でも日本は北京五輪への出場権を獲得できませんでした。
世界最終予選には参加できるので、昨秋の豊田に戻ったわけではありません。
そこでだれもがいうことは、

「これからが大切だ」と。

そんなこと、わざわざ忠告されなくてもわかっています。
これから何を大切にするのか、具体的に言わなければ、何もなりません。
選手たちは、もう十分、頑張っていると思います。
ハンドボールという競技を一人でも多くの人に、その魅力を知ってもらいたいです。
その気持ちは、ハンドボールの「メジャー化」をつねに言ってきた選手たちから十分に伝わってくるし、日本リーグなどの試合からも十分に伝わってきます。

じゃあ協会は、そしてチーム関係者は、サポーターたちは何をすべきなのか、わたしなりに考えたことを書いて、締めくくりとします。


試合会場に足を運んでもらうこと。

まずはこれに尽きるでしょう。
そのためには、各チームが頑張るだけではなく、試合会場付近に「タダ券」を配るくらいの配慮は欲しいです。
チーム関係者ではなく、普通にそこにいる人。
そういう人を動員してほしいと思ってます。


試合の見方、ポイントの説明

日本リーグの試合前に、ルールの説明といって、ファウルと審判のジェスチャーについて説明があったことありますが、それだけでは、残念ながら試合を楽しむことはできませんでした。
試合前に説明してもらうより、MCで「オーバーステップ」など言ってくれればそれでいいように思います。
そう、MCが効果的に入れば、初めてハンドを見る人、ルールをほとんど知らない人も楽しむことができるでしょう。

MCをどう育成していくのか、そういう人を育てる努力を協会はぜひ、やってもらいたいです。

そして試合前には、反則の説明より、シュートのデモンストレイションをすれば、参考になるのではと思います。
また、ハンドボールでは「ポスト」が重要な役割を果たしています。

そのポストの働きだけでも、ポイントの説明をしてはどうかと思います。


コアなファンのものにしない。

旧くからのファン、昨日、今日のファン。
そんなわけ隔てはいりません。
見にきてくれた人、それが今日のファン。
そういうファンを大切にすること。
その人たちが「居場所がない」を思わせないこと。
それを徹底すれば、自ずとファンは増えていくでしょう。
チームや「部活」に頼った集客ではなく、広く会場に人を呼んで、まずはみてもらうこと。
それが一番、大切だと思います。


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