駒大の高橋くんが行ってから、その余韻を残したままいると、周りが急に騒々しくなりました。騒々しいというより、地響きがするというか、そこの空間だけ怒涛に見舞われている感じです。
 さっきぶしつけに声をかけた順天の愛らしい子たちも、「いわみず〜」と応援しています。声は「いわみず〜」のほうが圧倒的に多いけど、山梨学院大学のカリウキくんが前で、10メートルくらい遅れて順天堂の岩水くんが走っていました。わたしには、カリウキくんと岩水くんがほぼ同時に見えたので、周りの雰囲気に流されて「岩水くーん、ファイト」とこれまた、中央の小旗を隠して応援しました。別にカリウキくん、嫌いじゃないけど、「カリウキ」って呼び捨てにするのもへんだし、「カリウキくーん」っていうのもなんか変な感じがしたので、岩水くんの応援をしました。
 一時は並んでいたけど、ダメだったんだ。順天堂は出雲で優勝したということもあるし、4連覇中やから注目度No.1のはず。3位というのは、きっと不本意なんでしょう。でもカリウキくんを追う岩水くんはすばらしかった。今年の3月の京都シティハーフのときに応援して、兵庫リレーカーニバルか日本選手権か忘れたけど、3000障害に出られていて、そして世界陸上にも出られていたという、すごい選手です。今、4年生ですから、卒業後もきっとご活躍されることと思います。がんばってください。
 岩水くんが過ぎると、先ほどの怒涛は消えてあたりの空気に緊張感がなくなりました。
 なんで?なんで?次はうちの藤原くんがくるのよ。ユニバーシアードで優勝したうちの藤原くんがくるのよ!なのに、まわりの雰囲気は完全にくつろいでいます。コースを横切る人もたくさんいて、緊張感はゼロの空気になっていました。あの、今、大会中なんだけど。ここね、今からうちの藤原くんが通るの。だから空けてくれない?そんなに気安く通らないでちょうだい?と叫びたいくらい時間が経っていました。
 そういう緊張感のなさに苛立ちを感じながら待っていると、見えました! 藤原くんが。4位です。よく4位まであげてくれました。ありがとう。池田くんからの襷わたしに鬼気迫るものを感じました。すばらしいです。必ず結果を出される背景には、厳しい練習はもちろん、きっと徹底した自己管理があるのでしょう。そうやってこれまでも確実に結果を出され、今日もすばらしい走りです。
 わたしは、最初に小さく藤原くんが見えたところで、「ふじわらくーん」と大きな声で叫びました。その声はしっかり通る大きな声だったのです。わたしって、こんなに大きな声出せるんや、と自分に戸惑いました。高橋くんと岩水くんで、発声練習済みやったとはいえ、大きな声が出すぎです。そして藤原くんが通りすぎるまで、
ほんの数秒ですが、「ふじわらくん、ファイト!」「ふじわらくん、頑張って」と何度も何度も大きな声で応援しました。そして後ろ姿が見えなくなるまで、応援を続けました。
 わたしの応援を藤原くんに届けることができました。嬉しいです。伊勢まできてよかったと思います。ただその一言です。
 わたしは前にもどこかで書いたのですが、できるだけ「名前」を呼んで応援することにしています。それが選手にとって、いいのか悪いのかはわからないけど、弘山晴美さんが京都シティハーフマラソンを走られたときに「名前を呼んで応援してくださるのが嬉しかった」と言われていましたし、わたし自身も(急にレベルの違う話ですみません)、名前を呼ばれると、一層「がんばらなきゃ」と思います。「わたしは他でもないあなたを応援しています」というつもりなんですけど、どうなんでしょうか。ただ、選手の名前だけは間違わないようにしないとと、気をつけています。
 藤原くんが過ぎていって、我にかえってみるとドキドキして足が震えていました。
 藤原くんの髪の毛がさらさらとしていたのは、ストレートパーマだとnomくんが日記に書かれていました。今は中央のランナーですが、将来はニッポンを代表するランナーになられると思います。2008年の北京には、藤原くんもnomくんも揃って出場してほしいです。もちろん、アテネでもいいんですけど。もし出場されたら、きっと応援にいきます。そして今日みたいに大っきな声で応援します。

ゴール地点へ

 藤原くんの姿をみて、その余韻にひったってしばらくしてゴール地点へ行きました。誰のゴールシーンもみていなかったので、1人くらいみて帰ろうと思ったからです。でもゴールのところはすごい人で、全然入っていく余地がなかったので、あきらめました。すると宇治橋の前で、白門グループの人たちと選手が一緒に写真を撮っていました。なんかいい感じです。選手の方々が、応援のお礼を言われていました。いいなぁ、この雰囲気。

その6