THE BROTHERS FOUR
野外演奏の謎
謎1  この演奏場所はどこ?
イン・パーソン・レコードの裏面は、切り貼り的な野外コンサート写真で構成されています。
果たして実際にブラザース・フォアが演奏している写真なのかな?と疑問を抱かせます。
しかし、それは実際の写真です。
私は全体像が大きく写っている写真を欲しいと常々思っていましたが、あるフォーク・レコードのジャケットに使われていることがわかり、先日、オークションで落札しました。それが下の写真です。既にお持ちの方もいるでしょう。
ところで・・・・
私はこれは大統領就任式典のイベントでの演奏かと長いこと勝手に思ってきました。ジョンソン大統領あたりの就任式典で演奏したこともあるとの話もありましたので・・・。

そこで、背景のドームは国会議事堂と思っていましたが、真面目に見てみると全然、違います。国会議事堂はもっと大きいし、石造りでした(下写真)。
さて、ではそうなると、これはどこでの写真なのか?

最初に思ったのは、そのイン・パーソンのジャケットに記載されているナッシュビルにあるVanderbilt Universityバンダービルト大学。ここで11曲の録音をしたとイン・パーソンに書いてありますので、同じ場所で演奏したのかと思いました。

今は便利な世の中で、そうした情報や写真は比較的簡単に手に入ります。
それで調べてみると確かにドームらしい建物があり、その前面は芝生の広場になっており、ここで撮影されたものに違いないと思いました。

建物の名前はWyatt Centerワイアット・センターです。
しかし、どうもおかしいのです。
ドームがあり、ドームの建物の前面にはギリシャ神殿風の柱が並んでいるはよいのですが、ドームの形が明らかに違います。それに柱の形もワイアットセンター のは両渦巻きの頭を持つイオニア式ですが、野外コンサーの方は明確には見えないものの両渦巻きの形状はないようです。そして、ワイアットセンターは二階建て に見えますが、野外コンサートの方は平屋に見えます。

はて、何せ40年くらい前だから、建物を二階建てにして、ドームのガラスも止めて作り直したのか?と推測しましたが、作り直したという記事は見つかりません。

それにさらに詳細に見ていくと、野外演奏写真の建物は両脇に小さなドームを抱え、合計3ツのドームがありますが、ワイアットセンターはその跡すらありません。

となると、一体どこ?

実はこれにとても似た建物の記憶がありました。

ディズニーランドのレストラン「Crystal Palaceクリスタル・パレス」です。
東京ディズニーランドにもありますが、調べてみるとカルリフォルニアのディズニーランドには不明ですが、フロリダには同じものがあるようです。

写真をみて下さい。全体像はとても似ているでしょう。
では、本当にディズニーでブラザース・フォアが演奏をやったのか?

ということですが、ディズニーのクリスタル・パレスは、特に正面玄関の造作がコンサート会場のドーム建物とは違い、また、クリスタル・パレスの前に、あのような広場は当時のディズニーランドにもなかったので、残念ながらディズニーではないことは明白となりました。

こ こで一旦行き詰まったのですが、今のインターネットの時代ですから、まだ、手はあります。グーグルの検索キーとして"dome""glass dome""university""the brothers four""open air concert""usa"等を組合せて入れて登録されている写真を検索し、似たものがないか見て行きました。

しかし、相当数見て行っても似たものは出てきませんでした。

ここで諦めようとも思ったのですが、そういえばディズニーの建物がCrystal Palaceと名前がついているのだから、同じような形をしたこのコンサートの建物も、もしかしたら同じ名前が付いているかも、と思いつき、その名前で検索しました。

確かに世界にはこの名前がついたガラス製の建物が相当ありました。
しかし、なかなか同じような形のものは出てきませんでした。

が・・・・!!
添付の検索結果の真ん中当りのドームはよく似ていませんか??
その部分を抽出すると下記の写真です。前の方に茶色い塀のようなものがありますが、ドームは似ています。
さらにその写真からリンクを数段辿り、別の写真(下)も見つけました。これは古い写真ですが、横から写してあります。

これを見ると、向こうに小さなもう一つの塔もあり、右側にはコンサートの写真にも見られる三角形のペンデンティブ(破風)、中央の半円形のペンデンティブも同じです。そして、このドーム建物の名前もCrystal Palaceです。
!!ビンゴ!!

ということで、ここに違いないと確信しました。いよいよ、答えです!!

場所は意外でした。
アメリカ合衆国ではありません。カナダのTorontoトロントです。
この公園の名称は「Canadian National Exhibition」です。また、ステージは「Bandshellバンドシェル」と名付けられています

グーグルマップからの写真を添付します。衛星写真の上の方にドームの建物があり、下の方に半円形のステージがあります。この衛星写真でもステージ前に椅子がならんでいます。
下はステージ前からのストリート・ビュー写真ですが、植栽が大きくなって、昔はステージからドーム建物がよく望めましたが、今はほとんどは木に隠れてしまっています。

これは北の丸公園のブラザース・フォアの写真で、今や公園の植栽が大きくなってしまって、当時は背景に写っていた武道館がすっかり見えなくなってしまっているのと同じですね。

しかし、時の流れと共に、昔ここでブラザース・フォアがやったと思えば感慨深いです。
カナダとは本当に意外でしたが、そう思ってよくみると、コンサート写真の右端に写っている旗は赤と白の楓のカナダ国旗なのかも知れません。

個人的にはこの会場から約4キロほど離れたトロント中心部のホテルに、昔、何泊かしたことがありました。う〜ん、知っていたら絶対に訪ねてみたのに、もう行く機会はないだろうな〜・・・残念
謎2  下の演奏写真は同じ時の撮影?
ところで、この話題を何名かのブラフォーファンと楽しんでいる時に、大ファンであるWさんから、下記の写真はその時の野外ステージでの写真ではないか?とびっくりする指摘がありました。
確かに衣装は同じようです。マイクには風音防止用のスポンジも付いているので屋外の撮影写真のようです。

更にネットで探してみると同じ時と思われる写真を発見できました。
しかし、本当に上のカナダのトロントの場所なのか?

気になったのは天井の屋根き筋目です。写真では1本しか写っていませんが、現状のステージの様子(下写真)に当てはめると、撮影角度からは数本の筋目が写っていないとちょっと映像的に納得がいきません。
しかし、現在のステージは立て替えられた可能性もあります。そこでウェブで探っていったところ、1930年の写真がみつかりました(下記)。これにより大屋根とステージが前方向に拡張されていることが分かりました。

何時拡張されたのかは不明ですが、1989年頃にこのCanadian National Exhibition施設全体が大幅に改修されたという記事がありましたので、その時に行われたのかもしれません。

ブラザース・フォアが演奏したのは改修前のオリジナルな舞台の時と推定します。
更に、ステージ正面からの演奏写真をよくよく見ていくと、左から2番目のディックさんのギターの後方にネクタイを絞めた男の人の姿とその手前に楽譜立てのようなものが写っている事を発見しました!!ステージ上にいる楽団の人と推定します。
更に3枚目の写真も発見しました。
こちらでも右端のジョンさんの後ろに楽譜立てがあるのがわかります。
この写真には天井の筋目も2本写っており、、正面写真の背景に写っているアーチ状の天井は高い位置ではな く、かなり低い位置の天井が写されていることが分かります。その結果、当時のステージ、天井形態と合理的な説明がつきます。

こうして、めでたく、これらの正面演奏 写真と背面写真は同じ場所であるという確認ができました。
謎3  演奏の時期はいつ?
(1)この野外コンサートの写真はいつから使われだしたか?
これにより上限が決まって来ます。分かっているものは二つありました。

・「In  Person」の 再販版・・・日本では1969年の発売です
・シングル「スイート・ドリームス」の発売
  これは1968年8月の来日記念版のようです

−−→これにより上限は1968年8月以前となります
(2)あのジャケット衣装を着始めたのは何時の頃からか?
これにより下限が決まってくるはずです

デビュー当初は赤と青シャツ姿がブラザース・フォアのステージ衣装でしたが、ジャケットを着始めたのはいつからか?これの正確な確定はなかなか難しいです

・1965年8月の日本コンサートではジャケットではなく、従来から カラーシャツ着用と記憶している。

・1966年は日本でのコンサートなかったが、1967年の日本のコンサートでは私の日記にディック(茶)、マイク (灰)、ボブ(黒)、ジョン(赤)のジャケットを着用との記載があるのを発見。今までのシャツ衣装と違って、イメージが変わったのでわざわざ日記に書いたの でしょう。

・1966年のアメリカ・バンガービッド大学公演の記録を発見したが、それでは野外コンサートと似たようなジャケットを着用しているように見える(下の小さな白黒写真左中)
これらのことからステージでのジャケット着装は1966年(月は不明)からと推定します。
−−→下限は1966年

(3)野外コンサートは夏に開催

(1)〜(2)により野外コンサートは1966年〜1968年夏までが可能性の範囲となりますが、ここでもう一つ重要な点は野外コンサートが温かい時期 (恐らく夏)に行われていることであり、1968年の夏に撮影して、それを直ちにジャケット写真として採用するということはタイミング的にはちょっと無理 が多いです。

−−−→従って、この野外コンサートは1966年の夏か、1967年の夏ということに絞られます。
謎4  演奏曲目は何か?
(1)オーケストラの伴奏も入れて演奏しているのか?
残念ながらオーケストラの楽譜にどんな曲を開いているのかは写真が鮮明ではなくてわかりません。しかし、どうも写真上のオーケストラ団員の姿勢からは演奏しているようには見えないというファンの声が強い。

(2)共演者?を発見
ウェブを詳細にしつこく辿って行って下記の投稿を発見しました
「One  Saturday afternoon in the 60s I shared a dressing room with the Brothers Four.
It was at the Canadian National Exhibition concert bandshell.  I didn't meet  them..........They wouldn't remember me.       Just sayin;......」
イギリスのロック歌手Graham Parker(当時は十代)の投稿です。何回もあの野外ステージでやったとは考えにくいので、多分、あの撮影日の事と思います。同じ楽屋を使ったようです。日にちは分かりませんが、土曜の午後だったようです。

推測するに、ブラザース・フォア単独のフル・コンサートではなく、いろいろな人が順次出演したイベントのようです。となるとオーケストラもブラザース・フォアの伴奏用ではなかったのでしょう。

その中で恐らくブラザース・フォアも数曲を演奏したということではないでしょうか。

(3)楽器とコードから推定は?

3枚の正面写真は使用楽器は同じですが、立ち位置が異なり同じ曲の写真かどうかは不明です。しかし、W氏は最初の正面写真ではAコード、2枚目の正面写真ではEコードを弾いていると述べております。
しかし、残念ながらそれだけではなかなか推測できません。

(4)当時発売レコードからの推定は?
1966年夏、1967年夏のコンサートで直前くらいの発売レコードからの選曲と仮定すると対象となるLPレコードは2枚。

<TRY TO REMEMBER>トライ・トゥ・リメンバー日本発売1966/3

<A BEATLES SONGBOOK>日本発売1966/8(1966年3月21〜24日収録)

1967年前半には新規レコードの発売はなかったので、 私としてはコンサートの時期は1966年夏で演奏曲目はビートルズ・ソングブックからでは?と推定したいところです。

カナダへのビートルズ訪問は1964、65、66年(トロント・Maple Leaf Gardens)があり、1966年は8月17日ということです。当時はまだ他の歌手がビートルズの歌曲を歌うのはそれほど一般的ではなく、当時はビートルズ同様に人気と知名度があったブラザー ス・フォアがビートルズの曲を同じトロントで歌うのはちょっと話題性も狙えたと推定してます。

(5)ビートルズの曲を歌ったとすれば何だろうか?
ビートルズ・ソングブックでは、ほとんどの曲でマイクがクラシックギターを演奏しており、この写真の楽器構成と一致しています。各曲のコード展開は

ノージアン・ウッド・・・・・・・E、Aともに頻発
イエスタディ・・・・・・・・・・E、A出てきますがコード転換頻繁
(オール・マイ・ラヴィング・・・・E、A出てきません)
(ノーウェア・マン・・・・・・・・E、A出てきません)
アイル・フォロー・ザ・サン・・・Aは出てきますね
オール・マイ・ラヴィング・・・・Aは頻繁に出てきます
イフ・アイ・フィール・・・・・・A,Eともに出てきます
ヘルプ・・・・・・・・・・・・・A、Eともに出てきます
(ミッシェル・・・・・・・・・・・クラギ音は明確ではありませんがAは頻繁に登場)
(WE CAN WORK IT OUT・・・・・・・E、A出てきません)
(ガール・・・・・・・・・・・・・A、Eともに出てきます)

( )付きの曲はA、Eコードが使われない曲、あるいはステージではやりにくい曲です。

更に日本での公演曲目として
1967年の東京のコンサートではノージアン・ウッド、ノー・ウェアー・マン、イエスタディの3曲のビートルズ曲を演奏しています。68年ではノージアン・ウッド、イエスタディです。(66年は来日無し)

となるとノージアン・ウッドはブラザース・フォアも得意曲だったようで、コードと合わせ考えるに、1曲はノージアン・ウッドは当選のような気がします。いかがでしょうか?

(6)Come, Kiss Me Loveの可能性
下記記事は1965年8月28日のビルボード誌の記事です。インターネットの検索を続け発見したものです。
これよりますと、この頃はCome, Kiss Me Love(W氏によるとD調なのでA、Eコードも使用)のプロモーションでカナダを回ったとあり、トロントの地名は出ていませんが、同じような時期にこの 会場で歌ったかも、とは思うのですが、年度が上記推定の66〜67年からは1年づれてしまうのでちょっと違うでしょう。

ということで、残念ながら演奏曲目については確定出来ておりません

多少関係する話題
●●1965年夏のCanadian National Exhibitionの映像●●
直接は関係ありませんが、下記のビデオは1965年夏のCanadian National Exhibitionの様子でして、5分28秒くらいから同じバンドシェルのステージを使ったフォークソングショーの様子が収録されております。 (Toronto Star's All Star Hootenanny)
また、会場の様子の中に野外公演の写真にもあったパラソル群も写っております。
http://www.youtube.com/watch?v=iItcMuUGTPg

●●1963〜6年頃のカナダテレビ番組出演●●
Let's Sing  Out!!という番組があり(日本でも同様な皆で歌おう番組がありました)、記録全体は1966年まで記載されていますが、ブラザース・フォアは1964年に4回ほど出演が記録され、1966年での出演の記録はありませんでした。

Feb 7, 1964 - Folk music from Huron College London, Ont. with The Brothers Four joining Oscar Brand.

Feb 28, 1964 - Originating from Huron College, University of Western Ontario, guests are The Brothers Four, Abbott Anderson and Sonja Savig.

Apr 24, 1964 - From Huron College, London, Ont., The Brothers Four, Sonja Savig and Al Cromwell.

Jul 3, 1964 - At Huron College, London, The Brothers Four, Al Cromwell and the Seaway Singers join host Oscar Brand
●●In  Personアルバムと屋外写真との関係●●
In  Personの収録は1961〜2年。In  Personの発売も1962年頃。
しかし、その裏面に掲載されている写真は196〜67年の頃の写真・・・・おかしい!?
まあ、これはファンの方ならご存じですが、野外コンサートの写真が裏面にあるIn  Personは再販版(下写真)で1962年のオリジナル品とはジャケットデザインが変わっています。
オリジナル版(下写真)は表面に穴が空いて、そこから写真が見えるものでした。その裏面も野外コンサートの写真ではなく4名がならんだ写真です。
私もオリジナル品は持っていたのですが、あまりに聞きすぎてレコードがザラザラになってしまいましたので再販を購入しました。オリジナル品はどこかに失ってしまっています。
と、いうことで一枚の写真から辿り、楽しいタイムトラベルでした。 残念ながら演奏曲目までは分かっておりません。今後も継続して調べてみたいと思います