ミミリチャード
Mini & Richard Farina
●デュオについて●
ミミとリチャードは日本ではほとんど知られていなフォークデュオだろう。1965年に2枚のレコードを発売しただけで活動を終えざるを得なかった。と、いうのはその翌年リチャードがオートバイの事故で死亡してしまったからである。

リチャードはブルックリンに生まれ、1950年代後半にニューヨークでシンガーソングライターの活動を始めた。一方のミミは1945年生まれ。彼女の姉はかの有名なジョン・バエズである。バエズが歌を得意としたのに対して、ミミはギターを得意としたとのことである。

二人はリチャートが25歳、ミミが17歳の時に初めて出会った。1962年のころである。彼らはすぐに意気投合し、と言うか愛し合い、密かに結婚し、そしてデュオも結成した。聴衆の前で初めて歌ったのは1963年8月のことであった。

彼らは1964年に最初のアルバム「Celebration For Grey Day」の作成に入り、1965年に発売した。この年は彼らがニューポート・フォーク・フェスティバルに参加した年でもあり、そして同じ年の12月には二枚目のアルバム「Reflections In A Crystal Winds」を発売した。日本ではこのレコードだけが発売されたようだ。今、振り返れば、この1965年という年は彼ら二人にとっては何事にも変えられぬ輝く年だった。

悲劇はミミの21歳の誕生日に起こった。1966年4月30日。誕生日のパーティに参加していた人々はクルマのスリップを近くに聞いた。それはリチャードが友人の後ろに乗車したバイクがカーブを曲がり切れずにコーナーに激突した音だった。友人は生還したが、リチャードは帰らぬ人となった。

●彼らの音楽について●
彼らの音楽はミミの姉のジョン・バエズの歌にも、ブラザース フォアやピーター・ポール&マリーのような都会的フォークでもなく、同時期に活躍を始めた男女デュオのイアンとシルヴィアとも全く違っている。どことなく東欧をイメージさせる曲作りだが、その一つの要因はリチャードの弾くダルシマーという民族楽器にある。ダルシマーはオートパープのような多絃のハンマー・ダルシマーとウクレレを大きくしたようなに3〜4絃のアバラチアン・ダルシマーとがあるようだが、リャチードの弾くのは後者のアパラアン・ダルシマーである。北欧のスエーデンが発祥の地と言う。リチャードはこの楽器を優雅にではなく、バリバリとまるで怒りを乗せるかのようにスローなワルツに乗せる。

リチャードの声はそれほど特徴を持った声ではないが、一方のミミは姉のバエズと同様に、そしてそれ以上に細い美声で引き立て、そして、こちらはその声にあったような美しいギターを奏でる。

最近になってようやくCDで再販された彼らの最初のアルバム「Reflections In A Crystal Winds」を聞くことができた。しかし、このアルバムはリチャードの思いだけが先走ったような未成熟な感じを受ける。しかし、日本でもレコード発売された二枚目のアルバム「Reflections In A Crystal Winds」(下写真)は上に述べたような彼らのユニーク性が表出された素晴らしいものである。このアルバムの表紙は彼ら二人が額縁に入った構図となっているが、なんとなくそれが二人の将来を暗示されているようでならない。なお、二枚目のアルバムからディオ名を「Richard & Mini Farina」と変更している。


再販されたCDアルバムには1968年に発売された「Memories」と言うアルバムも収録されている。このアルバムの表紙にはミミが一人で、とても寂しい顔つきで写っているのが悲しい。このアルバムには未収録の曲や1965年のニューポート・フォークフェスティバルでの9曲が納められている。


彼ら、特にリャチードが歌により表現したかったもの、それはほとばしった反体制的な歌詞でうかがい知ることができるが、それは当時のベトナム戦争と言う背景を抜きには語れない。ミミがそのような主張に完全に同調していたかどうかは分からない。リチャードの激しい曲に対して、ミミの作曲した曲はとても優しく、その対比がある意味では面白い。一方、リャチードの主張に共感したジョン・バエズやPP&Mなんかはリチャードの曲を自分たちの歌としても歌っている。

●ミミは●
ミミはその後再婚し、幾つかの音楽活動を行ったらしい。しかし、ここに悲しい知らせがある。ミミも2001年7月18日、ガンの為この世を去ってしまった。56歳の若さであった。

●そして、今・・・●
最近の米国のイラク侵攻、テロリズム、イスラエル/中東問題、あるいは地球環境問題等、時代は東西冷戦の終結したほんの一時の安らぎからの時から再び破壊と混乱の時代へ急速に歩を進めている。アルバムの一曲「暗闇の子供たち・Children Of Darkness」、まさに60年代の状況の再来の中、彼らのメッセージは再び輝き出している。