2月4日(木)

今年のモスクワはいままでは暖冬で、寒くてもマイナス20度止まりだった。
ドゥニャンたちが住んでいるのは、モスクワ市の南西のはずれで、家の前は森である。
そのせいか、街の中心と比べると、寒い時には気温は4〜5度低い。
で、2月3日、4日とマイナス29度になってしまった。

前にも書いたが、マドンナは当然エンジンがかからない。
いつもなら「またさぼっているな、こいつ!」と頭に来るが、今日ばかりは仕方がないのであきらめた。
でも、このまま放っておくと、エンジン内部まで凍りついてしまうのではないかと心配だ。なんとか少しはエンジンを回しておきたい。
壊れて動かないのではなく、寒さで動かない場合はどうしたらいいのか。隣人のアミールに相談にいった。

夜10時にもかかわらず、一緒に車のところまで行ってくれたのは前述の通り。
道々聞くと、明日の朝には黒海沿岸ソチまで往復のフライトがあるという(彼はフライトエンジニア)。とにかくロシアの人(彼はタタール人だけど)は親しくなるとめちゃくちゃ親切だ。

「まずは、チョーク(今の日本の車にはついていないと思うけど、エンジン始動の時にガソリンを多めに供給するプラグ)をいっぱいひっぱる。アクセルは踏まないでキーを回す。」アミールは言った通りのことをやってみるが、マドンナはプスン、プスンとしか言わない。
「きっと寒さでバッテリーの容量が減っているんだ。この方法だとガソリンがたまって、点火プラグが湿っちゃうので、何回もしちゃだめだから次の方法だ。うちの車で引っ張ってエンジンをかけてみよう。」
アミールの車のガレージまでついていく。
すると中には簡単なペチカ(電気で動く)があって、一日中つけっぱなしだという。また、エンジンとバッテリーには使い古しのコートがかぶせてある。やっぱり冷えないように手を打ってあるのだ。

車を5分ほど暖めてから、マドンナのところへ行く。
「じゃあひっぱるから綱でつなごう」
ひっぱってもらう車の運転は、ハンドルさばきはともかくとしても、ブレーキをかけるタイミングが結構難しい。でもマドンナはしょっちゅう故障するので、へんへんには軽い軽い。
綱をつけて準備O.K.
「走りはじめたら、クラッチを踏んでギアをセカンドかサードにいれ、ゆっくりクラッチを離す。わかった?エンジンがかかったらライトで合図してね」

へんへんはマドンナの運転席についた。が、前が見えない。そう、マイナス29度なので、フロントガラスが外側も内側も凍っているのである。そのうえエンジンがかかってないから暖房をつけても意味はないので融かすこともできない。
頼りはかすかにみえるアミールの車のテールライトのみ。でももう走り始めてしまったので仕方ない。夜間なので他の車がこないことを祈ろう。
言われたとおりに、とりあえずサードにいれてみる。でもギアもちょっと凍り気味で、いれてもカタカタなるだけ。じゃあセカンド?
と、ギアを替えるとエンジンブレーキが効いてしまって、マドンナは横滑り。道路のわきに激突。幸いなことに雪がクッションになったおかげですぐに回復。
こちらの様子を知ってか知らずかアミールの車はそれに構わずどんどん先へ進む。
またサードに入れてみる。すると「ブルルルルーン」。
この寒さのなか、マドンナにもエンジンがかかった!!!

「でも、エンジンを切ったらまた明日の朝までに冷えて動かなくなっちゃうのでは?」
と聞くと、
「しばらくこのままにして、バッテリーの容量が増えてからエンジンを切ろう。そしてバッテリーははずして家に持っていこう。そしてまた明日つければいい。」

おー。
やっぱり寒さの国。車を動かすにはいろいろ手間がかかるし、知恵もいる。



で、翌日。
気温はマイナス25度。
マイナス30度までいけるはずのウオッシャー液が凍っている。
マドンナの中においてあった曇りどめ液も凍っている。

家から運んだバッテリーをとりつけて、おそるおそるキーを回してみる。






「プスン」




やっぱり動かない。
マドンナ用のガレージが必要かもしれない。

同じように外におきっぱなしの韓国車、ティコはちゃんと動いているんだけどなー。



次へ
モスクワ日記の表紙へ
ホームへ戻る