ドゥニャンは生来、気が小さい。
真面目である。
人の気持ちをすぐ汲んで、どうしたら相手に楽しんでもらえるか、常に細やかに神経を使うようにしている。
悲しい人がいるとその人の話を聞きにいき、サービスを求めていると思えば、冗談を言ってサービスをしてあげちゃう。
人のいいごく優しい大和撫子なのだ。
夫のご機嫌だって取らなくてはならない時はちゃんと取る。



隣りのアミールが、よる9時半、ウォトカのパーティに誘いに来た。
（子どもたちはおとなしく真面目に勉強をしているという。子どもには勉強をさせるのに、親は飲んで遊んでいいのか？？！）



いや、違う。今日は軍隊記念日で男のお祭りなのだ。
どうしてもウォトカを気の合う仲間と飲まなければならない日なのだ。
花火だって
ド・ドーンと何発か大きな音を立てて上がった。




ヘンヘンはお風呂に入っていて、「今、行けない。」と、言った。


それで、ドゥニャンも招かれた。（どうして？？？）


そこにはニコライとアレクサンドルが来ていた。
ニコライの妻は恐い。飲んでいたら、電話をかけてきて「帰ってこい！！今すぐ。」
と、言うのだそうだ。
「コーニャの細君は恐ろしいのさ。いつもだよ。」
「ドゥニャンだって、恐いのよ。強いしさ。」
と、ドゥニャン。
「いやあ、ドゥニャンはいつでもヘンヘンにウォトカを飲ませてあげるだろう。どんな時でも優しい、本当にいい女性だ。そうだ、ここにいる唯一の女性ドゥニャンのために、尊敬をこめとその美しさに乾杯をしよう。」
と、アミール。
「え・え〜〜〜。ちょっと、テレるなぁ。」
「いや、ドゥニャンは、美しく優しい。素晴らしい日本女性だ。我々、男性は本当にドゥニャンのような妻を持ちたい。ドゥニャンに乾杯！！！」
「あ・ありがとう。」
「ドゥニャン、ウォトカはイッパツで飲むんだ。そう、一気だ。」
「い・いえ、でもぉ〜。」



2杯のウォトカを一気のみさせられ、ホロ酔いでドゥニャンは家へ帰った。



今度はヘンヘンの番だ。風呂から上がった彼はすぐにビールを持って、お隣りへ飛んでいった。
「ヘンヘン、ドゥニャンのことは、気にするな。まあ、飲め。ドゥニャンは強い女だからなぁ。」
「そうなんですよ。全く、ドゥニャンは強い。僕はいっつもドゥニャンの言うことを素直に聞いているんですよ。」
「ここにいるコーリャもそうなんだ。」
「さあ、優しい男に乾杯しよう。サァ、派手にやろうじゃぁないか。今日は男の祭りだ。」




くそ！！あのアミールめ！！ドゥニャンの前では、あんなにいい気持ちにさせておいて、男の風上にも置けない奴！！
今度はコーリャの奥さんのようになって、ドゥニャンはウォトカ・パーティの邪魔をしてやるぅ！！


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