6月26日(土)

6月に入ってから、ドゥニャンは上のむすめと一緒にバレエを習いに行っている。 いでたちはといえば、親子揃って、レオタードというような上等は身に付けずに、Tシャツとスパッツ。

でもレッスン場にはグランドピアノが置かれ、ピアノの生演奏で稽古を付けてもらう。

最初はバーレッスンから始まるのであるが、なかなかこれが最初っからして難儀なものなのである。
先生は手と足を使って次の動作を説明してくださるのだが、それが覚えられない。足をちゃんとしようとすると、手はお留守。それでは手に集中しようとすると、間違ってあらぬ方向転換をしてしまう。(重ねて言わせてもらうが、あのバレエ特有の優雅な回転ではなくて、ドゥニャンの場合ギクシャクとした方向転換である。)しかも、第一足が左右逆になっているときもあるから、回転(!)しようとすると、片方の軸足にしている方が邪魔をして転びそうになってしまう。
元々左右の感覚がどこかに行ってしまっているドゥニャンだから、人よりも説明を理解するのが大変なんだけど、思わず自分で悲しくなって、笑ってしまう。

足を振り上げたり、背中を思いっきりそらせたり。その時間先生の言うことをしようとすると、限りなく緊張してしまう。

ところが、娘がわたしのバレエ(?)を見て、馬鹿にして言うのだ。
「ママ、一番気抜いてバレエやってんのってママだね。わたしちょっと恥ずかしいよ。先生に悪いしさ。」
「エッ?どこが気抜いているって言うの?」
「だって、足の先は伸ばさなくっちゃいけないのに、ブラブラだし、足を動かしてると思ったら、手もおんなじようにブラブラしてるしさ。やる気あるのかなぁって・・。」
「うそー!!一所懸命必死になってるよ。」

「違う!ママが一生懸命なのは、フロア・レッスンになったとき、先生の真ん前のところに行くじゃない。あれだけがすばしっこくって一番いい場所を取ってるって感じ。」
「だって、ママが一番下手だから、先生のことよく見なくっちゃいけないし・・・。」
「でも、他の時には全部手抜きじゃないの。恥ずかしいわよ。」

そう、そうなのかなぁと、ドゥニャンは反省してみた。
次の週、レッスンに行ってみたら、なるほど、鏡に映るドゥニャンは先生のおっしゃっていることをちっとも聞いていないような動作しかしていないではないか。
こんなに一生懸命素直に先生の言うことを聞きたいのに、何故か体は言うことを聞いてくれていなかったのだ。

その上、一緒にやっているご夫人方の額にも背中にも汗が噴き出しているが、どうもドゥニャンだけはバーレッスンをしていても汗をかかないのである。
皆、汗かきだなぁとつねづねドゥニャンは思ってはいたのだが、実はドゥニャンは知らないうちに力を抜いていたものと見える。
反省。

一番最初のレッスンの時、チョットばかり筋肉痛になったんだけれど、次からは筋肉痛になったことがなかった。2回目からは慣れたから、筋肉痛にはならないもんだと勘違いしていたのかな。

先生はボリショイ劇場でソリストをやっていらした立派な先生。
ピアノを弾いてくださる方だって、モスクワ音楽院を卒業なさった芸術家なのに。ドゥニャンと来たら・・・。

今度から、もっと真剣に真面目にやる努力をします。
ガンバリマス!!



たしかに先生は娘や一生懸命レッスンしている方にはいろいろ注意なさっているけれど、ついぞドゥニャンには注意をしてくださったことがなかったのを思い出してしまった。


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