1999年7月31日(土)

ダーチャの帰り。マドンナの調子は最初っからちょっと変だった。
エンジンは一度でかからないし、ときどき、プスンというよりポカンというような爆発音が聞こえていた。
大丈夫かなぁ。
あと200キロ。どうしよう。途中で止まったら。

きっとマドンナのこと褒めまくったら、何とか最後まで走ってくれるよ。
マドンナのこと褒めてあげよう。

マドンナちゃんは美人だねぇ。
カッコイイよ。
うん。乗り心地もいいし。最高だねぇ。
それにさ。なんといってもファッショナブルでナウいよ。

いやいや。丸いお目目がなんとも可愛いんだ。
言うことよく聞くおりこうさんだしさ。

とにかくマドンナちゃんはいい子なんだよ。

子どもたちは盛んに誉めちぎっている。


だけど、信号でストップした時・・・・。

プッスン。ポッカん。

間の抜けたような音がして・・・。


ヘンヘンが何度エンジンをかけようとしてもどうしてもいうことを聞いてくれない。
ヘンヘンはマドンナの心臓部をコチョコチョしに出かけて行った。
バンパーを開けて、キャブレーターのネジをいじる。
汚れを雑きんで丁寧に拭いてやっている。

これで動いてくれるかな。

まだ、ここから先、190キロもあるんだゾ。モスクワまでは・・・。

チョークを全開にして、思いっきりアクセルを踏む。
ブルルン。ブルン・・・。プッスン・・・。


あ〜〜〜。どうしよう。今は5時。モスクワまで4時間だけなんだけどな。
今日は野宿か・・・。
覚悟を決めようか。


森の中、自動車はめったに見かけない。



ようやく通った反対車線のニーバに止まってもらう。
ニーバの人は、一番近い町の自動車修理工場までマドンナを引っ張っていってくれるという。
ありがたい!



そして自動車工場に着いた。マドンナのキャブレーターは、不完全燃焼のすすがたまってマックロケ。
だからそれをきれいに洗ってもらったら、

心機一転。気持ちよく動き出した。


これが、森のど真ん中でどの町に行くのにも50キロはあるというような場所でエンストを起こしたら、お先まっくら。
お日様が傾いていくのを恨めしく眺めて、ドゥニャン達一家は森に迷った赤頭巾ちゃんとなってさまよっていただろう。



マドンナ!いい場所で故障した。えらかった!!
思いっきりほめてあげよう!


でもエンストしても褒めてもらえるマドンナちゃんがちょっと羨ましいナ。

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