1999年8月7日(土)

クスコボというところには革命前のシェレメーチェボ伯爵の広大な別荘がある。
その別荘は別名、小ベルサイユとも呼ばれていほどの立派な宮殿と教会、壮大な温室、30坪もあるかと思えるようなあずまやのような鳥かご。
今は往時の宮廷服を展示した別邸などが静かな湖とともにその広い敷地の中に立派な建物が建てられている。

中心となる宮殿の前には静かに水を湛えた湖、夏の舟遊びには格好の場所であったろう。その向かい側は白樺林。
あいにく8月6日はしのつく雨。その宮殿は一般公開されているのだが、湿度80%以上になると、見せてもらえないことになっている。だから、その日は宮殿の中を見られなかった。宮殿の裏側には芝生を幾何学模様に刈り込んだ庭園と大理石でできた美しい西洋風の彫像が4・5m間隔で置かれている。
両側の道路の端には丁寧に箱型に刈り込まれた植え込みが続く。

その庭園を見て、下の娘は「アリスの世界に来たみたい!。このお庭で迷路遊びをしてると、トランプの女王様がでてくるよ!」と、ため息混じりに叫んでいた。
「びーびーもこの迷路で遊びたいよぉ。」

本当に美しく刈られた芝生。
その向こう側には当時は温室として使われていた陶器博物館が見える。
ガラス張りの建物が足元に行くに従って少しばかり広がっている。斜めにガラスをはめ込んで採光を良くしているのだろう。

中に入ってみると、あるわあるわ。17世紀から19世紀のマイセン(柿右衛門の写し絵、シノワズリの食器たち)。フランスのセーブル焼きなどの道具類。マイセン人形にドレスデン陶器の置物。ガレーの花瓶。
このシェレメーチェボ伯爵家というのはよほど陶器収集に余念がなかったらしい。それは見事なコレクションである。


フッフフフ・・・。


ここでドゥニャンの笑いが込み上げてくるのだ。

ヒィヒッヒヒヒ・・・・。


気持ち悪いではないか。
なんでだ。理由を説明せよ!


もったいぶらずに早くってばぁ。


あのね。それがね。




ドゥニャン、買っちゃったんだ!一週間前。


古道具屋で隅っこの方に置いてあったものを・・・。


それがさ。結構高かったけど、どうしても欲しかった。
ホントにマイセンかどうか。マークを見てみると1924年までに焼かれたシノワズリ。
本物かなぁ。

どうしてもお金が使いたかった。だってドゥニャンの小遣い貯まっていたんだもの。


そしたらさ。あのさ、


この陶器博物館の西洋の陶器の部屋に行くと、マイセンが並んでいた。そしてその展示ケースをよぉく眺めてみると、なんと!

全く同じ模様なわけ・・・。全然同じ、どう見ても同じ。かえすがえすも一緒なの。



ハァ。しばしため息。


信じられる??!


エエーーーイ。今日はお金をつかいたいんだい!!

どうしても使わなくっちゃいられない!思ってどうとでもなれぇ!!

って買ったのがさ。あったのよ。



ドゥニャン、困ったねぇ。
突然のお宝。日本に帰ったら、「お宝鑑定団」でテレビで鑑定してもらっちゃおうっと。

次へ
モスクワ日記の表紙へ
ホームへ戻る