ゾーリッツァのお母さんから、夕方突然電話がかかって来た。
「上の息子ゾーラのロシア文学の勉強をどんな風にしていいのかわからないの。問題はトルストイの「戦争と平和」の解説だと思うんだけど・・・。答え方が分からないのよ。だれかそれを教えてくれる人を知らない?」
そう言えば、そうだった。去年なつめの始めてのテストの時に、どんな風に答えたらいいのか、どんな回答が必要なのか、とてもとてもなつめが心配していたことを思い出した。
自分が勉強して来たことが、果たしてロシアの教育の中で受け入れられるのか、ちゃんと評価されるのか、それがとても心配だった。
今年、ゾーリッツァとお兄さんのゾーラは、ロシアで始めてのテストを受ける。
ゾーリッツァからはなつめにしょっちゅう電話がかかってくる。
模範解答の仕方を教えてくれというのである。
電話の中で、外国人同志がロシア語でデクテーションをしている。
「ここに点をいれて、ここにピリオドをおくのよ。」
全く細かい。模範解答とほぼ同じでなければ5が付かない。子どもたちは必死になって覚えるのである。
ところが、ゾーラにはまだそんな友達がいないらしい。
それで、もしかしたら、ドゥニャンにロシア文学に詳しい知りあいがいないかどうか、ゾーリッツァのお母さんが電話で聞いて来たのだ。
「他に誰といって頼る人もいないし・・・。誰も知らなければ知らないでいいんだけど・・・。何かいいアイデアでもあるかしらと思って・・・。」
分かるなぁ。その気持ち。
特にゾーリッツァ兄弟は、このロシアで教育される。今の成績が即、進級進学に影響するからなお更のことである。
お母さん必死な気持ちも良く分かる。
その日ドゥニャンは知り合いに電話を掛け捲った。
日本人の知り合いで、学校で文学の先生をしていた人が、知り合いの知り合いの知り合いにいるという。(その方も私の電話の後に、電話を沢山たくさんかけてくれたにちがいない)。その電話番号を教えてもらって、ゾーラはとうとう文学で5を取れたという。
よかった。
本当に良かった。
来年もその人はゾーラ達を助けることが出来るという。
これで少しは安堵の吐息をもらせるでしょう。ゾーリッツァのお母さんも・・。