神と結婚した男−ヴァーツラフ・ニジンスキー
マリインスキー劇場のスターたち


2000年4月17日(月)

出演者

ヴァーツラフ・ニジンスキー(ダンサーとして)およびその医師グライベル:ファルフ・ルジマートフ、
ヴァーツラフ・ニジンスキー(日記の著者として):セルゲイ・ベフテーレフ、
ロモラ・ニジンスカヤ:オリガ・オブホフスカヤ、
バレリーナ:ユリヤ・マハリナ、
バレリーナアナスタシーア・ヴォロチコーヴァ

脚本&デザイン:オリガ・オブホフスカヤ

演出:ファルフ・ルジマートフ

場所:タガンカ劇場(モスクワ)




ニジンスキーの日記をもとにその芸術と彼の思想そして情念の世界を演劇とバレエを混じえて描いたもの。
最初、ニジンスキーは自分の存在意義と妻に対する愛を交えて語る。
その中に芸術としてのバレエの表出を見て行く。
彼のバレエの中の作中人物をマハリナやルジマートフが演じている。
そしてルジマートフの先妻オリガ・オブホフスカヤがニジンスキーとなったベフテレフの妻をやっている。
彼の日記は彼のモノローグとなって現われる。それを演じるのは演劇畑の人。セリフが実に多いが、そのセリフの持っていきようが、
なんとも自然であり、また非現実味も帯びている。なかなかの役者だと思った。
バレエ芸術は、彼を神と思わせる。なぜならばニジンスキーは神のようになんでも表出でき、バレエの中で創造できるからである。
美しい女性として現われ出てくるマハリナは妻の役。
しかし、彼の精神は次第に病んでくる。そして妻は、徐々に人形に変形してくる。この人形の役をヴォロチコーヴァが演じていた。
素晴らしい彼女の肢体は、人形と妻との一体を表わしていく。そのバレエの完成度は素晴らしい。よく上がる足、美しい指先。
最後に人形を出して来てその人形と彼女は入れ替わり、人形の入ったバッグの中に入って暗転していく。
苦悩するニジンスキーはその中で「牧神の午後」その他のバレエを創り出していく。
「牧神の午後」の振付けは、ニジンスキーのしたものであるが、衣装が違っていた。ルジマートフが妖しく演じる。女神はマハリナ。
ルジマートフは黒いジャケットを着て、マハリナは黒っぽい衣装を着ていた。この衣装では「牧神の午後」の雰囲気が出ていない。演出に無理があると言えよう。
マハリナはまた、ニジンスキーがあこがれた女性のダンサーの役をやっているのだが、それが美しく決まる。
指先の表現が丁寧すぎてねちっこく感じた「牧神の午後」と違って、素晴らしいバレエを見せてくれた。
演劇におけるニジンスキーは、神への渇望、苦悩への絶望をとうとう癒せないで終わる。
そのセリフと光による十字架のベフチェレフの表現は素晴らしかった。
最後にルジマートフがニジンスキーの苦悩とバレエとの絡まりを素晴らしく早く長い回転を見せて幕は閉まった。
時に無理がある演出ではあったが、バレエ陣も演劇陣も素晴らしい。
ロシア芸術の底力を見せてくれるような作品であった。


モスクワの劇場1999−2000に戻る

ぜいたくはすてきだに戻る

モスクワどたばた劇場に戻る