宝塚大劇場星組公演
『誠の群像』<作品>
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★ 幕末ロマン『誠の群像 新選組流亡記』 ☆
☆ 作・演出 石田昌也 ★
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<作品について>
そこはまさに石田ワールドでした。「殉情」「銀ちゃんの恋」「RYOMA2」と、近年の石田作品と似通ったものがないこともないです。
土方が生きた時代を現在とすれば、未来に勝海舟(紫吹淳)と土方の恋人お小夜(月影瞳)が話している場面からスタート。どこかでみたような。。 でも、トンミちゃん(月影)をリカちゃんと一緒に最初から銀橋を渡らせてあげるところは石田先生の配慮を感じます。初日は緊張したでしょうが、リカちゃん(紫吹)と一緒だし、落ち着いてみえました。
勝の言葉と共に、葵の紋が菊に変わり、最後は誠の一字に。このあたりのセンスはいいと思います。
「新選組副長 土方歳三 参る!」の声に胸ときめかせ、幕が切って落とされるとそこには新選組隊士達が土方歳三(麻路さき)を中心に立っていて、格好いい〜!和風ロックの音楽の出だしは梅沢富美男かと思いましたが、急にガッチャマンに替わりスピード感のある主題歌(よね?)です。大劇場公演でここまでノリノリの主題歌って初めてじゃないでしょうか?
土方の振りは藍エリナ先生のいわゆるダンスなんですが、やはり和風なので見栄をきりまくりなんです。しかも、後ろで隊士達が踊るなか、一人決め決めで銀橋を渡るので、芝居の出だしでまるでショーのごとくマリコさん(麻路)が視線をバシバシ客席に送ってくれます。プロローグでいきなりミーハーできる芝居は初めてです。マリコさんは本舞台からでも視線をバシバシ飛ばしてくれてますので、マリコさんが銀橋にいるときなど、後ろのみなさまもバシバシ飛ばされているのでしょうか?
なんか刀に手をやりつつ片足をあげて飛ぶ〜なんて振り付けは後々で思い出すとちょっと笑えるんですけど、でも観ているときは「格好いい〜☆」の一言です。全員でこのよくよく考えればお茶目な振りを躍っている姿は壮観です。山南敬助(稔幸)・沖田総士(絵麻緒ゆう)・近藤勇(千秋慎)をはじめ隊士勢揃いで踊っています。専科の立ともみさん=芹澤鴨ももちろん踊っています。必見です。あの実麗さんが踊ってらっしゃるんですもの。
前半は、新選組の内側のイメージを伝えるようなエピソードの羅列です。全体的にコミカルな明るい雰囲気で「鉄の軍団」でありながらも内部には様々な人々がいて、様々な出来事がありましたよぉ〜という紹介のようなものです。出だしに局中法度と称して切腹の作法を教えるうんぬんがありますし、芹沢暗殺や池田屋騒動など血なまぐさい話しが多いのですが、不思議と隊士達のおだやかで明るい表情の方が印象に残っています。
土方の最初の登場は「お待ちください!」と声がして障子を開けての登場時に「ジャジャーン!!」という効果音が。某巨匠風?(^^;)この登場の仕方は土方だけでは恥ずかしいので、どうせなら後で沖田総士の姉、光(万里柚美)が訪ねてきている場面での山南敬助の「それは私です。」という登場時にも「ジャジャーン!」ってやって欲しかったです。(^^;)
他にも「ぼよよ〜ん」だの「ピロロ〜ン」だの、ステキな効果音の数々。大劇場公演では今まで聞いたことがない音ではありますが、これを機にみなさまがお使いになられるかもしれませんね。でもボリュームは大きすぎます。
土方は、どんなにおもしろい事があってもひたすら冷静でニヒルです。その割にはときどき急にベラベラしゃべりますよねぇ。土方のセリフがこんなに長いのはちょっとイメージ違いという気がします。言わなくてもいいことまでしゃべりすぎ。例えば「近藤さんは俺の友達だ。友達をだますやつは許さない。」というのは土方らしくないなぁ〜と思います。近藤が土方の友達であることは、芝居の中で分かるので「近藤さんをだますヤツは俺が許さない。」でも十分に伝わると思うんです。少しセリフがくどい時があります。
それから気になったのは「近藤」「近藤さん」の使い分け。やはり近藤は友達とはいえ、同士で更に局長なのですから、他人の前では立てて「近藤さん」と言わないと。また、私の印象では近藤は土方の事を「歳」と親しみを込めて呼ぶことはあっても、土方はいつでも「近藤さん」なんじゃないでしょうか。おそらく近藤の方が目上で、更に道場主だったのだから。ということはいつでも「近藤さん」と呼ぶ方が自然なんじゃないでしょうか。ここらへん、時々変化があったので、手直しの最中なのかもしれません。
同じく、立ち位置・座り位置でも、プロローグは良いとして、山南をどうするのか決める場面などでは近藤がどセンターに座り、土方は多少ずれた方が自然なのではないでしょうか。土方は常に近藤を影で支える人物・黒幕として人前では一歩下がる。横によける。マリコ土方にはただそこにいるだけで存在感があるから、それで全然問題はないと思うのですが…。
お小夜との恋についてはなかなか燃え上がらせ方がむずかしそうです。初日の脚本では、「紫陽花」でのセリフに疑問が満載でどうしてくれよう>石田先生と思ってしまいましたが、2日・3日目とだいぶすっきりしてきたように思います。(脚本がガラリと替わりました。)この週末に観劇するときには更にうまくおさまってくれてるといいんですけど。
銀橋を二人で渡るところはグーです。荷物をもってあげるところは微笑ましいし、お小夜のはにかむ姿は可愛いし、全編通じて土方が笑う(表情に笑みが浮かぶ)のはお小夜の前でだけ・・というのは重要なポイントだと思います。(あ、総士の前でも笑っていいと思います。)
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