東宝星組公演
『誠の群像』
<作品>(1/2)
大劇場で通い倒した『誠の群像・魅惑II』、特に『誠の群像』は大劇場公演は東宝の為のお稽古だったのでは?と口惜しく感じる位に良い方向へ変更が入っていて、嬉しいような悔しいような複雑な心境でした。
大劇場公演時に一度書いたRを読み直してみましたが、違う作品について書いているかのようなので、改めて東宝版『誠の群像』について変更点を含めて感想を書かせていただきたいと思います。
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★ 幕末ロマン『誠の群像 新選組流亡記』 ☆
☆ 作・演出 石田昌也 ★
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☆ 観劇日 8月16日 13時・17時半
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★ 17日 11時・15時半 ☆
☆ 18日 13時
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第一場B 誠の群像
隊士達が増えた事と、舞台が小さくなった事で想像以上に舞台が人で埋まっていると感じました。
土方歳三(麻路さき)は大劇場の頃よりも更に眼光の鋭さが増していました。目のお化粧が更に鋭くなっているようです。真夏の日本物ということで、相当暑いせいか、マリコさん(麻路さき)の頬が少しこけていて、それもあって精悍さも増しています。お痩せになっても大きな存在感に替わりはなく、隊士達の中心で堂々と輝いていました。
第二場A 局中法度
カットされたセリフの復活ですが、土方が堀内(高央りお)を新撰組隊士として・武士として切腹させるところ、「家族に手紙を書たまえ。」があるとな
いとではその前後の堀内の芝居のニュアンスが違ってきたと思います。
堀内は土方が自分を武士として遇してくれた事に感動を覚えていることがよく分かりますし、また、土方も初めの内からただ怖いだけではない何かを感じさせています。(表情はぱっとみ怖いんですけどね。でもやっぱり怖いだけじゃないです。)
第三場B・C 局中法度
死体の手が出てきてボヨヨーンがなくなったのは良かったのですが、隊士達がその場を逃げ出して場面転換する時にかかる妙に明るい元気な音楽がドリフの「8時だよ全員集合」の場面転換のようで、私は嫌いです。ぼよよーんがなくなってプラス1だけど、この新しい音楽でマイナス2、差し引きマイナス1に感じました。
土方が初めて登場したときの「お待ちください!ジャジャジャーン!」がなくなったらプラス2だったんですけど、しっかり残っていました。残念。
第五場 勝海舟(勝とのやりとりの後、土方と沖田が狂言見物へ)
「勝先生、それはお言葉がすぎますぞ。」と下手から土方登場。悠々と歩いてくる堂々としたお姿。でも決して右足に重心をのせて立つ事はないそうです。(お茶会Rをお楽しみに。)そう言われてみれば確かに…。その話を聞いた翌日は、土方と勝の丁々発止のやりとりよりも土方の右足が気になってしまって…。
土方の増えたセリフのきっかけが高田(朝宮真由)を斬った沖田(絵麻緒ゆう)の嘆きなのですが、嘆く沖田に土方が改めて新選組の役目を説いている訳です。このセリフ「人を斬っても人格は上がらんし人望も……浄土へは往けぬ。」が増えた事の効果は、土方は好きで人を斬っている訳ではないが、やるからには心を鬼にしてやるのだという事の強調なのでしょうか。
皮肉にも高田を斬った事を割り切れと沖田に話した直後に、高田の姉(舞路はるか)に出会い「鬼」とののしられ、歌う「心凍らせて」は、土方は大きく表情を変えている訳ではないのに、せつなさが増しているようです。
とはいえ、高田の事を話した直後に鼻緒が切れて、ちょうど目の前に”はきものや”があり、そこは高田の実家だったというのはあまりにも偶然がすぎます。高田の事を話してから一場面くらいあった方が自然なように思います。
第六場 前髪の惣三郎
大劇場での田代(夏美よう)と加納(彩輝直)はこちらがいたたまれない位にアダルトな芝居を見せてくれていたのですが、東宝では一転してコメディータッチに。ハッチさん(夏美)のアダルトな演技がすみれコードに引っかかったのでしょうか。でも私はちょっと残念です。
17日から沖田が山南(稔幸)を見て笑う時に、からかうように「クフフッ」と笑うようになって、これがもう可愛くて可愛くて。(*^^*)
加納が田代を斬る前に泣くようになりましたね。また、前場の雰囲気に合わせて加納に呼ばれた田代はうれし恥ずかしといった感じなだけにこれから斬られるのが可哀想。田代ってほんとに間者だったんでしょうか。。。
土方が加納を斬った時の「君は美しすぎた…」の言い方がすごくさりげなくなっていました。大劇場では時に大仰に言い過ぎて笑いを誘ってしまった事もありましたが、今の土方の言い方がベストだと思います。妙に気に入ってます。
大劇場のとき土方が「山崎君、新選組は男しか生きていけないのだよ。」と言ったのを受けての山崎(英真なおき)の「土方さん…。」は、(あなたは
なんて恐ろしい人なんだ…。)という風でしたが、土方が財布を加納の家族への香典替わりに…を受けての東宝版では(あなたの気持ちは分かっています。)というような言い方になっていますね。私は山崎というのは土方の忠実な部下だったという印象があるので、東宝版が好きです。
第七場 姉妹、そして…お小夜再び
お小夜の声がしっとりしてきたなぁ〜という印象です。この場面、「どうか近藤様にぃ。」と土方に頭を下げるあたり、大劇場では声を張り上げ気味だったように思える事もあったトンミちゃん(月影瞳)ですが、東宝では押さえていて好感度がアップしたように思います。
沖田が土方とお小夜を目撃し、土方が言い訳する場面。「誰にも言うなよ。」という土方に沖田が「なら私にも黙っていればいいのに。」と答えます。これを聞いた土方、大劇場では(何ぃ?)とびっくり眼ですっとんきょうな顔をしていましたが、東宝では沖田をすねさせた事をちょっと反省したのか、なだめるように「お前は別だよ。」と言うところがすごく自然です。その後の(早くあっちへ行け!)という風な仕草にも沖田への愛情がたっぷり詰まっていて、沖田が可愛くて仕方がないようです。
銀橋でのトンミちゃんの愛らしさがパワーアップしていました。土方に荷物を持ってもらうときの仕草、「土方様がお疲れでなければ。」と答える抑揚、土方が「私は平気だ。」と答えた後、お小夜をチラリと見るのですが、その時に何とも言えない愛らしい笑顔で土方を見つめているのです。鬼の土方と言えども口元が緩んでしまう一瞬です。
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