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宝塚バウホール星組公演 
『武蔵野の露と消ゆとも』
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☆        幕末悲話                   ★ 
★        『武蔵野の露と消ゆとも』          ☆
☆         作・演出  谷 正純            ★
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 マリコさん(麻路さき)の久々の主演作であり、大切な相手役,あやちゃん(白城あやか)の最後のバウ出演作品となりました、『武蔵野の露と消ゆとも』を観て参りました。このバウはチケットが即日完売で、悲しいかな私はこの週末に1回しか観劇出来ませんでしたので記憶違いがあるかもしれません。お許しください。
       観劇日 1月12日(日) 14時半開演

☆作品全体の感想☆
 なにしろ、初日を観ることができなかったので、12日に観劇するまでは、周りの一握りの初日観劇者達の印象を聞くのみでした。曰く「オーケストラが一切なくってとっても静かで緊張感に満ちている。笛の音がもの悲しくて、それだけで泣けてくる。ストーリーはよくできていると思う。京言葉が楽しい。幕末の歴史は知っておいた方がいい。おしゃ花(バウの近くの喫茶コーナー)に流れる館内放送が聞こえてくる位、静か。お腹をすかせていったら恥をかくに違いない。」というような分かるような?分からないような?感想でした。
 後で聞けば初日は小林公平氏・植田理事長・春日野八千代さん・松本悠里さんを初めとする、宝塚のお歴々がずら〜〜っと並んでご観劇だったそうで、出演者の緊張たるや想像を越えるものがあったのではないでしょうか。

 さて、私が初観劇したのは初日から通算で3回目の公演でした。出演者もスタッフもようやく慣れはじめてきたころとでもいいましょうか、あらゆる進行が滑らかだったように思いましたので、初見にふさわしかったかもしれません。(って初日が見れなかった負け惜しみかもぉ〜〜(^^;))
 谷先生は秋に雪組さんで「アナジ」を上演されたばかり。谷先生の轟さんへの思い入れをすごく感じた快作だったので、その後すぐのこの公演に果たして谷先生のお力が残っているだろうか・・・・?と危惧していたのが正直な気持ちでした。
 ところが、谷先生はこの作品に思い入れをたっぷりお持ちで、前から暖めていらしたもののようで、プログラムのお言葉から泣かせていただきました。

 とにかく絵が綺麗。幕開き、絵巻物を見ているような美しさの中、登場人物達が雛人形のように立っています。その中に現れる橋本実梁(はしもとのさねやな=麻路さき)と和宮(かずのみや=白城あやか)は見つめ合いながらお互いに近づきかけるのですが、周りの人々に翻弄されて歩み寄る事が出来ません。その後の二人の行く末を暗示するかのよう。その幻想的な世界が一変して若き日の実梁と和宮のエピソードにつながっていきます。展開がスムーズです〜っとその世界に入り込めるように思いました。

 このお話は実在の人物が多数登場します。史実が織り込んであるので、骨格がしっかりしているということはあると思います。しかし、実梁と和宮が惹かれあっていた・・・・というこの作品の芯となる設定は、谷先生のオリジナルという事です。ということは、それに纏わるエピソードもオリジナルが多いのでは?と想像しています。そんなオリジナルに近い作品でありながら、ストーリーに破綻がありません。ドラマが多く盛り込まれていますし、展開にテンポがあります。演出もはっとするような印象に残る場面がいくつもあります。また、セリフがいいんです。心に響いてくるようなセリフがいくつもあります。
 谷先生のバウ作品ということで「バスタオルを持って行かねば?」と言っていたんですが、そういう号泣ではなくて、気がついたら涙が出ているというようなじんわりとした泣け方でした。
 終わり方がまたいい!幕が降りてきたときに「こういう終わり方をするんだぁ〜〜、(T^T)素敵すぎるぅ〜〜!」と話の内容もさることながら、終わり方の美しさに泣けてきました。もうもう、私好みの終わり方で、大満足です。

 内容が全く分からない書き方で「一体どんな作品なの?」とお思いの方が多いかと思いますが、チケットをお持ちの方には是非真っ白な頭で観劇していただきたいと思うのです。
 終わってみれば、宝塚らしいフィナーレや、登場人物の気持ちを代弁する歌などが一切なくて、驚かれるかと思います。が、この作品にはそれでよかったのだ・・・と思われる方の方が多いのでは?という印象を持ちました。
 バウホールの作品なのですから、このような演出もいいのではないでしょうか?またこの演出は当たったと思います。

 衣装・装置・振り付けも水準が高いと思います。スタッフの力量と出演者の力量の相乗効果で素敵な舞台ができあがったと思います。

 ただ、幕末の和宮降嫁の時代背景・登場人物の知識は少しあった方がより深く話に入り込めると思います。歌劇やグラフに載っている、物語の紹介文をご一読されてからご観劇されても十分新鮮にご覧いただける作品になっていると思いますので、私はお勧めします。プログラムの物語の紹介文は初見前には少々詳しすぎるかもしれません。ご観劇後にお読みになる方がいいかもしれません。
 そういう私は学生時代に歴史は好きだったのですが、幕末から明治にかけてはあまり興味がなく覚えていなかったので、現在猛勉強中です。

   
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