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宝塚バウホール星組公演 
『武蔵野の露と消ゆとも』
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 それでは主な出演者について・・・・。

☆ 橋本実梁(はしもとのさねやな)・・・麻路さき
 久々のバウ主演。そして、ファン待望の日本物。期待通り、まずは美しい烏帽子・直衣姿に目の保養〜☆。ポスターも美しかったのですが、カラーで見るとその美しさ・華やかさが一段と増します。官軍の大将姿もお似合いでした。
 耐える男・・・・なんて、もう得意中の得意のマリコさんですし、舞踊会連続出演を請われた方だけの事はあって、所作等にも不安はなし。
 「○○いわさっしゃる。」「○○でおじゃります。」というような公家言葉も滑らかに出てきて、普通のセリフ覚えよりもずっと難しかっただろうにと感心しました。
 周りの人々がモロにお公家だったりモロにお武家だったりする中、武芸に秀でた実梁はお公家なんだけれども、芯が強い感じがよく出ていたと思います。
 普段大河ドラマなどを見ていますと、お武家側から見た作品が多く、お公家さまは十把一絡げななよなよしたイメージの設定が多いように思うのですが、今回は公家側の世界が主で、そうしてみるとお公家様にもいろんなタイプがいます。
 実梁の口から公家言葉が出てくると、なんだかやんわりとした空気になって、それは他のお公家さんたちにも言えますが、彼らお公家さんの世界が中心なだけに、大波に翻弄されているような時代ながらも殺伐とせず、どことなく雅です。

 実梁は、冒頭将軍家への降嫁が嫌で裸足で逃げる和宮とのやりとりから和宮に対する優しさが滲み出ていました。和宮の事を第一に考えているからこそ、和宮を降嫁させる説得役も引き受けるし、ただ和宮を大事にするだけでなく、自分の好きな和宮にだからこそ「他人に不幸を渡さぬために・・・・降嫁を承諾して欲しい。」と話します。江戸城に入城するときに「実梁の顔が見とうないのじゃ。」と和宮に追い返された時、言葉の裏に隠された和宮の気持ちを嬉しく思いながらも、別れの寂しさを踊りに託します。この1幕の幕切れの美しくもの悲しいことと言ったら・・・・。
 
 2幕の冒頭、幻想の場面で将軍家茂(彩輝直)に和宮を取られる実梁。そのせつない表情に早々とぐっときます。
 1幕で和宮に降嫁を納得させるつらい仕事をいい使った実梁は、2幕でも和宮の嫁ぎ先である徳川家討伐の先陣をかってでます。そして、かつて入城前に追い返された江戸城に勅使として入城した実梁。和宮と再会し、再度お互い堪え忍ぶ事を確認して踊る連れ舞は美しかった。実梁の和宮へのお願いがまた実梁らしいもので、よかったです。

 とにかく、正統派の二枚目です。日本の古風な男の美学が詰まっているという感じ。ヘルマン・エドモン・ビリィ・ジェイ・トートと二枚目路線(ビリィはちょっと違うか・・・。)まっしぐらのマリコさんですが、実梁は容姿はもちろんのこと、その内面が超二枚目だと思います。そして、マリコさんはまたもや、ファンの期待を裏切る事なくそんな実梁を体現して見せてくれました。

☆ 和宮親子内親王(かずのみやちかこないしんのう)=白城あやか
 ポスターを見て内心「あれ?あやちゃん、おすべらかしはまずいのかも?(^^;)」と心配したこともあったのですが、それも余計な心配で、舞台上のあやちゃんはポスターよりも数段美しかったです。

 1幕の和宮は発散出来る役で、特に前半は「降嫁なんかしとうないっ!」の一点張り。実梁にもそう言いまくり、また実梁が和宮に”とっても弱い。”なにせ、従妹とはいえ和宮は内親王様。増して和宮が好きな実梁は多少の事では目をつぶりますし・・・・。ここのあやちゃんとっても可愛いです。マリコさんと並んでいるとほんとうにお転婆さんで、でも憎めなくて愛らしい。ついつい甘い顔になる実梁の気持ちはよ〜く分かります。

 そんな実梁に降嫁を諭されショックを受けますが、その真意を理解し、「他人に不幸を渡さぬために。」の実梁の言葉を胸に降嫁していきます。ここで踊る実梁との連れ舞は、絶品!途中、和宮が扇を落とし、実梁が拾って渡す時の二人の仕草、表情には泣かされました。
 和宮はこの時から、朝廷と幕府の仲を取り持つ自分の立場を理解して一回り大きく成長します。
 で、その成長の仕方がとても自然です。エリザベートのそれとはまた違い、この和宮では少しずつ成長する様を見せてもらえます。降嫁を決心し、その道中での出来事、江戸城に入るとき、大奥に入ってから・・・。という割とインターバルが短い中での和宮の成長をあやちゃんがきっちりと演じきってくれています。
 
 「エリザベート」は幸せな終わり方といえばそうなのでしょうが、私はこの「武蔵野の露と消ゆとも」の終わり方も恋愛物として幸せとはいえなくても人間的に幸せな終わり方だなぁ〜と思います。 マリコさんとあやちゃんコンビの最後の主演バウ作品として恋愛的なハッピーエンドをお望みだった方が多いかと思いますが、私はこの「武蔵野の露と消ゆとも」が最後でもいいと心から思いました。

☆ 徳川家茂(とくがわいえもち)=彩輝 直
 ブンちゃん(絵麻緒ゆう)休演のため、急遽たった代役。もともと、このバウでは3番手扱いだったさえこちゃん(彩輝)は1つくりあがっった2番手の役目をしっかり果たしてくれたと思います。1幕のひな(美耶エリカ)とはしゃぐ場面ではなかなかドキッとさせるラブシーンを見せてくれたし、ひなが死ぬ場面での絶叫には泣かされました。
 2幕で和宮をかばう場面、慶喜(千秋慎)に自分の思いを託す場面などでは大人の男を感じさせ、ここのところの急成長振りには感心しました。やはり急な代役ということで、さえこちゃんに何か芯のようなものが出来たのではないでしょうか?今後の活躍が本当に楽しみです。

   
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