戻る

宝塚バウホール星組公演 
『武蔵野の露と消ゆとも』
3/3

 出演者評の続きです。

 ☆ 有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみやたるひとしんのう)=朝澄けい
 ブンちゃんの代役となったさえこちゃんの元の役の代役にたったのはかよちゃん(朝澄)。大抜擢でしたね。このチャンスをモノにするのか、無駄にするのか・・・・。かよちゃんの将来の事もありますが、大事な役所だけに作品全体の成功に係わるのでは?とも心配していました。
 が、それも杞憂に終わり、かよちゃんは見事にチャンスをモノにしました。とても研三とは思えないセリフの確かさに驚かされました。立ち姿も非常に美しく、マリコさんの実梁と話している姿も、実梁よりも位が上であることが出ていて堂々としたものでした。
 和宮のいる徳川を攻めるときに、実梁と同じ気持ちから官軍で指揮をとるのですが、その気持ちを語るときの有栖川宮は格好いい男だったと思います。

☆ 観行院(かんぎょういん)=城比呂絵 (和宮の生母)
 城さんが日本物でお母さんをされるのって大好きです。今回もたおやかな、でも芯の強い素敵なお母さんを好演してくださっています。観行院が死ぬ時の和宮への言葉に泣かされました。兄の実麗(さねあきら=立ともみ)とのやりとりも見所の一つです。

☆ 橋本実麗(はしもとのさねあきら)=立ともみ (実梁の父)
 その実麗・・・・素晴らしい。いやもう、一般に持つ弱々しいお公家さんのイメージそのままです。観行院とのやりとり、立ち居振る舞いが見事。「貧富、貧富」と立ち去る時には笑いが起き、拍手したくなるくらいです。雅な雰囲気の中に別の雅さというかのんびりとした空間を作り出している気がします。あってもなくてもいい役柄ながら、絶対にいて欲しいキャラクターだと思いました。

☆ 岩倉具視(いわくらともみ)=夏美よう
 ハッチさん(夏美)が悪い男をやると、本当に悪い男なんです。今回の岩倉具視もほんとやなヤツです。どこまでもやなヤツです。綺麗なハッチさんがたくらんだ目をするとほんとに悪そうなんです。さすがです。
 また一緒に組むのがちよさん(朋舞花)なんですが、この二人が組んだら怖いもんなしだなぁ〜と思ったりして。

☆ 桂小五郎(かつらこごろう)=英真なおき
 じゅんこさん(英真)が長州藩の志士「逃げの小五郎」を雄々しく演じています。あらゆるところで言うので「逃げの小五郎」という言葉覚えました。
 幾松といるところを新選組に囲まれて、「俺を桂小五郎としってのことか。」と剣を抜くところが格好よく、さらに逃げちゃうあたりもじゅんこさんがやるといさぎよくってステキ!

☆ 天璋院(てんしょういん)=出雲綾 (家茂の養母、大奥で権勢をふるう。)
 和宮に武家風を押しつけるところまでは、ゾフィーばりの演技でさすがです。
 でまた、和宮から頭を下げた瞬間に表情が変わるところなど、細かいところまで役が掘り下げられているところはいつも通りで好感がもてます。大政奉還後に和宮に頭を下げるところなど、泣かされました。

☆ 考明天皇/徳川慶喜(こうめいてんのう/とくがわよしのぶ)= 千秋慎
 孝明天皇の時は、天皇らしい重々しさが、慶喜の時は、大政奉還を決断したいさぎよさがそれぞれよく出ていて、好演だったと思います。
 出番が少ないながら、天皇として、兄として和宮につらい勅命を下さねばならないつらさ、徳川家存続のため将軍職を退く事を決めたつらさが伝わってきました。

☆ 堀川紀子(ほりかわもとこ)=朋舞花 (岩倉具視の妹。今帝の寵姫)
 ハッチさんと一緒に出てきて、実梁や有栖川宮に嫌みを言って去っていく。それだけなんだけれど、ハッチさんと組んだら最強コンビで強い印象が残っています。インパクトのある存在なだけに他の役につけなくて出番が少ないのが可哀相。

☆ 橋本幹子(はしもとみきこ)=万里柚美 (実梁夫人)
 「おめでとう!ユズミさん。マリコさんのお嫁さんになれてよかったね。」と言いそうになるくらい、嬉しそうな柚美さんです。実梁に子供ができた事を告げるときの嬉しそうなこと。いやぁうらやましい。
 女官のお化粧をもう少し研究が必要かも。彫りの深いお顔だちの柚美さんですので、今回は苦戦を強いられているというところでしょうか。

☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆.・.・.・☆

 というように、いつものことながら、ほぼほめまくりのRになっておりますが、これは嘘偽りのない私の感想です。「谷先生!素敵な作品をありがとうございます。」とお礼を言わせていただきたいです。
 谷先生の脚本・演出もさることながら、「精鋭」という言葉に相応しい出演者達。期待に応えて見応えある作品を作り上げてくれました。

 最後のフィナーレは幕開けと同じようにまるで人形のように立っている出演者達にスポットがあたっていき、実梁と和宮が上下の花道から歩み寄り見つめ合った中、静かに幕が降ります。
 そして、もう一度幕があがり一列に並んだ出演者達の誇らしい顔。マリコさんとあやちゃんの笑顔を見た時、良い作品に当たった幸せを実感しました。

 「和宮」がタイトルロールで和宮の降嫁問題が主軸の話がいいとおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、それはこの作品とは別の話。
 この「武蔵野の露と消ゆとも」という作品は「もしも江戸城開場の勅使となった和宮の従兄橋本実梁と和宮が互いに想い合っていたとしたら・・・・。」というお話です。
 「和宮降嫁の話」というよりは「幕末のはかなくせつない恋物語」という風に観るのが良いのではと思います。


   
   戻る      つづき