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 モンスターハンター・ゼロ外伝 「黒き神の記憶」

 クエスト1 「こりゃ、まいったね」
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 幾重に重なる葉雲が朝日を隠し、大樹海の底は昼なお暗く潜む者を隠しきる。重くむせ返る緑香が深い樹林をひんやりと満たす。時折、白や黄、赤や青の光球が、茂みの間をユラユラと渡る。昆虫の瞬きか、それともモンスターの眼光か。草色の軽装甲冑に身を包むナツキは、存在を闇に溶かし、音も立てずに道無き道を東へと急いだ。辺りはモンスターの気配が充満し、いつ出くわすとも限らない。無用な戦闘は極力避け、一刻も早くこの大樹海を抜けなければならない。
『こいつは強行軍はやめた方がいいね。とりあえず明るい内に行ける所まで行くか』
 ナツキは細心の注意を払いながら、広大な大樹海の只中を進んだ。

 ナツキが大樹海の横断を選択したのは、まったくの気まぐれと言ってよい。商船の臨時護衛ハンターとして雇われた彼女は、一週間前、港町ギャリアギャリアへ到着し、その任を終えた。給金で路銀も潤うと、しばし安宿に転がり込みくつろいでいた。酒場の湿気た賭博で小金を巻き上げていると、商船の船長が魚竜撃退の仕事を持ってきた。近くの漁村に魚竜ガノトトスが現れ漁が出来ないというのだ。暇を持て余していたナツキはふたつ返事で引き受けると、魚竜に手酷い傷を負わせ撃退した。モンスターも生き物である以上、自分の餌場を確保するため縄張りを主張する。裏を返せば、痛い目にあったモンスターはその場所を放棄し、当分その場所へは近付かない。武器も貧弱なこの当時、ガノトトスの様な二十メートルを軽く超える大型モンスターを撃退することは、並大抵のことではない。陸に海に華麗に戦い、怪我ひとつせず魚竜を撃退したナツキに、漁師もギャリアギャリアの人々も賞賛を送った。ましてやそれが、絶世の美貌と豊かなプロポーションも持つ若い娘ともなれば尚更だ。安宿はスペシャルスイートへと換わり、目の前には極上の酒と料理が並ぶ。町を歩けば常に注目の的だ。町長は、ぜひ町専属のハンターにと日参する。ナツキは三日と保たず辟易した。そして特に苛つくのが若い男たちだった。
 モンスター溢れる暗黒期、要塞化した町を繋ぐ街道は、常にモンスターと遭遇するリスクを負う。街道を渡る者といえば、商人とその護衛、町を追われたお尋ね者ぐらいで、ナツキのようなフリーランスはむしろ素性の知れないアウトローとして煙たがられるのが常である。それが盛大な歓迎を受けた挙げ句、美貌目当てに次々と男たちが群がってくるのだ。いつの時代にも小蠅の様な男たちはいるものだ。ナツキはにこやかに微笑みながら心中げんなりした。
『こりゃ長居しないに限るね』
 仕事にありつく街となると、それなりの規模がいる。港町ギャリアギャリアから最も近いのは、東にある宿場町エルサンドだった。だがギャリアギャリアとエルサンドの間には広大な大樹海が横たわっていた。エルサンドへ向かうには、北に延びる街道を進み、時計回りに大樹海を迂回するしかない。途中の集落に宿を借り、大人の足でもたっぷり一週間は掛かる道のりだ。大樹海を横断する事が出来ればエルサンドには二日で着くが、そんな無謀を試みる者は滅多にいるものではない。モンスターハンターという職業がまだ確立していないこの時代、どれほど腕に自信があろうと、数多のモンスターが縄張り争いを繰り広げる大樹海を横断するなど、命が幾つあっても足りないからだ。
 ナツキが旅支度を調えると、同行を申し出る男たちが現れた。どう見ても足手まといにしかならない連中だ。ナツキは何の気為しに羊皮紙に描かれた地図を見ると、大樹海を指差した。
「旅の足は急ぐものよ」
 男たちは血の気を失い、ナツキは内心安堵した。勿論ナツキは誰よりもそのリスクを心得ている。未知のモンスターと遭遇し、命を落とす可能性は充分にある。運が悪ければ、自分の旅はそこで終わる。だが、それだけの事だ。ナツキの意識は、流しのハンターのそれに戻っていた。翌朝早く、ナツキはギャリアギャリアの人々に見送られながら、東の大樹海横断へと旅立った。

 あのナザルガザルでの出来事より既に二年が経過している。ナザルガザルを離れた後、サガはハンターズギルドを創設し、その存在が少しずつ広まり始めていた。二ヶ月ほど前、ナツキはギルド本部を訪ね、サガと再会した。
「相変わらずのフリーランスか。いっそナザルガザル村でヴォイスを手伝ったらどうだい。君とならいいコンビだと思うんだがな〜」
 サガは日に焼けた顔で笑った。モンスターハンターとなったヴォイスの実力は、近隣の地方へと轟き始めていた。ギルドの紹介もあり、ハンターを志す若者も続々とナザルガザルに集い始めている。
「あたしゃ、旅暮らしがお似合いさ」
 ギルド代表室の長椅子にくつろぎながら、ナツキは自分を笑った。ナツキはサガから一枚のパイザ(牌子)を渡された。赤のクロスの紋章が描かれている。
「ヴォイスと相談してギルド専属のモンスターハンター部隊『ギルドナイツ』を創設したんだ。そいつはギルドナイツのパイザでね。ハンターズギルドでそいつを見せれば、食事でも装備でも無償で支援を受けられる。旅先で使うといい」
「そいつはどうも」
 ナツキは改めてサガの財力に呆れた。サガは更にナツキのために新しい装備を提供した。草色の軽装の甲冑には一部モンスター素材が使われ、今までの物よりかなり丈夫になっている。今日、バトルシリーズの名で知られる甲冑のプロトタイプだ。そしてもうひとつ、サガは慎重に真新しいライトボウガンを取り出した。
「ナザルガザルで雷神と呼ばれる珍しい飛竜に会ったのは覚えてるだろ? ヴォイスがあいつの腱を集めて送ってくれたんだ。君が来たらボウガンの強化に使えってね。こいつは貴重品だぞ」
 雷属性を持つ飛竜の種類は少ない。飛竜の代表格であるリオレウスやリオレイアは逆に雷を苦手とする。ナツキは試作ボウガンを受け取ると、動作を確認した。雷神の腱を利用した弦は、今使っている物より圧倒的に強かった。ボルトハンドルを引き、チャンバー(矢弾室)を覗く。中は案外狭い。
「これだと参式弾は使えそうもないね。噂の速射機構も無いようだけど」
 ハンターズギルド設立により最も進歩した武器はおそらくボウガンだろう。サガは各地で独自に進化した技術を束ね、どこでも量産が可能なように構造の標準化に着手した。ハンター装備が貧弱だった暗黒期、ボウガンの構造や弾体は地方によってまちまちだった。大抵は、カラの実やカラ骨の欠片などバレット(矢弾)に使えそうな素材を弦の力で打ち出すだけのシンプルな物で、狩りよりはモンスターの襲撃から村を守るための撃退用として使われていた。ハンターズギルドでは、これら無数に調達可能な基本となるバレットを壱式弾(現在の通常弾1)と規定し、規格化した。バレットの規格化は運用範囲を広げ、ボウガンの構造を規格化させる。この事が元々狩りへの使用者が少ないボウガンを、防衛用の補助火器から主力武器の一翼へと進化させる結果をもたらした。
 ナツキのようにボウガンを狩りに用いる者の間では、射出力だけでなく、バレット自体を強化、工夫する者も多かった。ハンターズギルドではその中から、比較的ポピュラーな素材で量産が可能な物を規格化していった。壱式弾に比べ威力もあり、安価なカラの実・ハリの実から作ることができるバレットを弐式弾(現在の通常弾2)と定め、この弐式弾のサイズがチャンバーやバレルなどボウガンの基本サイズ、基本構造を決める基準となった。参式弾(現在の通常弾3)とは、着弾後に弾頭が分裂し多段ヒットによる追加ダメージを与える大型バレットを指す。今日のライトボウガンの代名詞とも言える速射機構も、或る地方で開発された物をハンターズギルドで標準化した物だ。
 試作ライトボウガンを裏返す。ナツキは銃身の下にあるマウンターに気付いた。
「このバレルの下にあるマウンターは何?」
 ナツキが尋ねると、サガはボウガンを受け取った。
「雷神の腱は、パワーは申し分ないんだが制御が難しくてね。速射機構には馴染まなかったんだ。雷耐性のある弦だから雷撃弾が扱えるが、実は荒い制御で良ければ相当大きいバレットでも扱える事が分かった。そこで、試しにこんな機構を付けてみたんだ」
 サガは一握りほどの太さがある筒状の物を取り出すと、試作ボウガンのマウンターにその筒を取り付けた。
「こいつはこのボウガン専用に開発した雷撃榴弾だ。雷撃榴弾は弾体が大きいだけに非常にデリケートでね。使う時にこうやって取り付けて使う。うっかり暴発したら大変だからね。この筒状の銃身は安定器と弾倉も兼ねてるんだ。弾体の換装はどこか落ち着いた場所でやらないと無理なので、基本は一発しか使えない。その代わり威力の方は折り紙付きだぞ。射程は短いが、火竜の頭に叩き込めば一発で脳みそを焼き尽くす。君なら扱えるはずだ」
 バレットの調合方法も複雑で、腕に自信がなければ扱えない一撃必殺の切り札装備だ。
『サガの奴め。要するに、雷撃榴弾のテストをやれって事じゃない。厄介なライトボウガンよこしやがって。まったく只より高い物は無いね』
 ナツキは雷撃榴弾を納めた背嚢の保護ケースに触れると、大樹海のブッシュの合間を風のように進んだ。

 目立った戦闘も無く、ナツキの大樹海横断は順調に進んだ。この当時の一流ハンターは皆、数百メートル先にいる大型モンスターを察知する。現在でこそ千里眼スキルなどとご大層に呼ばれているが、暗黒期のハンターにとっては基本スキルのひとつに過ぎない。ナツキは安全な物陰を見つけ昼食を取った。
『案外、大型モンスターの気配が少ないね。チャンスがあれば、ついでに肉の補充でもしておくか』
 小休止を切り上げ出発する。しばらく進むと、前方の葉雲の切れ間から黒い塔のような物が見えた。上部が焼け落ちた桁違いに大きな巨木の幹。高さは三百メートルぐらいあるだろうか。
『ここにもユグドラシルが在るんだね。まあ、こんだけ深い樹海だし、不思議はないか』
 ユグドラシルは樹海で一番高い。飛竜にとっては、そこを縄張りとする事は樹海一の強者である証だ。それ故に、朽ち果て洞となったユグドラシルの中では飛竜に遭遇する確率が高い。当然、そんな場所を通るわけにはいかない。ナツキはユグドラシルを回り込むよう左手に進路を変えた。
 水の臭いがする。川が近いのだ。水辺には草食獣が集まり、その草食獣を狙う大型モンスターも集まる。リスクの高い場所だが、水の補給もしておきたい。ナツキはそのまま河原へと進んだ。安全を確認し、手早く水筒に水を汲む。河原の先では、何頭もの草食獣が水を飲んでいる。どうやら肉食モンスターはいないようだ。肉を調達するには都合が良い。ナツキはボウガンに弐式弾をセットすると、気配を殺し草食獣の群れの方へ近付いていった。右手にはユグドラシルがそびえている。飛竜の気配も無い。
 川辺の細長い原っぱが見えてきた。茂みから観察する。数種類の草食獣が思い思いに草をはみ、水を飲んでいる。量を取るなら大型のアプトノスだが荷物にする気は無い。これだけ種類がいるのだ。味のいいケルビがいいだろう。ケルビはモンスターというよりは鹿そのものだ。ナツキは若い一頭の雄に目を付けた。矛先のような角が二本、頭頂から真っ直ぐに生えている。角の色具合から若さが読める。若い雄ケルビは警戒することなく草をはみながら歩き回っている。ナツキは身をかがめ風下から接近した。草色の甲冑が偽装になる。標的が向こうを向く。ナツキは低姿勢のまま歩を早め音も無く接近した。回りの草食獣がナツキの存在に気付き始める。距離約二十メートル。もう十分な距離だ。ナツキは振り向く標的に合わせ、頭部にバレットを撃ち込んだ。仰け反る頭部に更にもう一発。それで総てが終わった。そのまま獲物に駆け寄る。興奮した別の草食獣が二頭、ナツキに向かい突進しようと身構える。ナツキはそれぞれの足下に一発ずつバレットを撃ち込み機先を制した。
 ナツキは仕留めた獲物の所まで来ると、次弾を装填してからライトボウガンを肩に掛けた。半数以上の草食獣が慌てて逃げていく。何頭かは遠巻きにナツキを窺っている。邪魔者がいない事を確認すると、ナツキはナイフを抜き獲物の解体に掛かった。ヒレ肉、ロース肉から確保するところが彼女らしい。続いて後ろ足に掛かる。予想以上に大きなもも肉が採れそうだ。血の臭いは消臭処理すればよいが、荷物になるのはいただけない。採るべきか迷っていると、突然悪寒が走った。距離五十メートル。茂みの奥に何かいる。ナツキはナイフを仕舞いつつライトボウガンのグリップを握る動作を一挙動で行った。
 暗くて視認は出来ない。気配から大型モンスターだ。ナツキは内心肝を冷やしていた。これ程接近するまで大型モンスターに気が付かないなど、滅多にある事ではない。間違いなく未知のモンスターだ。ナツキは全方位の気配を確認しつつ前方の茂みを注視した。低木が揺れている。暗くてモンスターの姿が分からない。
『足音が聞こえない。物陰から襲いかかるタイプかしら。厄介だね』
 このまま明るい河原にいた方が得策だ。ナツキはその場を動かず、いつでも撃てるようライトボウガンを腰溜めに構えたまま様子を窺った。モンスターが茂みの合間から姿を現す。
『なるほど。見えないわけだ』
 ナツキはその姿を見るや一瞬にして分析した。そのモンスターは、光を反射しない漆黒の体毛で覆われている。黒豹の様な印象を与える飛竜だ。尖った耳、猛禽のような黒い嘴、ルビーのような赤い目をしている。足音がしないのは、大きな肉球を持つからだろう。前足は手としての機能を持ち四つ足で歩いているが、それ程太い前足では無い。どちらかというと歩くのは得意ではなさそうだ。少なくとも、突進力を武器とするタイプではない。向こう側になりよく見えないが、後ろ足は発達していそうだ。おそらく黒い体を活かし音も無く物陰から忍び寄り、一気に飛び掛かり相手を仕留める狩猟スタイルのモンスターだろう。力押ししない分、賢いモンスターと考えられる。ナツキは知る由もないが、そのモンスターは二百年後のモンスターハンター全盛期に、ナルガクルガの名で知られる事になるモンスターであった。
 例え初見でも多くの情報を引き出す所は、さすがに超一流のハンターと言える。ナツキを驚かせたのは、この黒いモンスターの能力よりも、姿そのものだった。明らかに小さいのだ。尻尾の先まで入れても十メートルそこそこしか無いだろう。顔もどことなく丸顔で幼く、明らかに子供のモンスターだ。ナツキは視線を切ることなく改めて周囲の気配を探った。このモンスターは問題ではない。警戒すべきは親の存在だ。だがナツキは直ぐにそのリスクを否定した。よく見ると体中に乾いた泥や枯れ草が付いている。血糊のような跡もある。本来ならコロコロと太っていなければならない時期だというのに、体つきはむしろやつれてさえ見える。おそらくもう何日も餌を食べていないのだ。体中の汚れは毛繕いする者がいない証拠だ。血糊は他のモンスターに襲われた跡だろう。母親が死に、一匹で樹海を彷徨っているのだ。如何に凶暴なモンスターであろうと、親に死なれた子供では、待っているのは死あるのみだ。この子供モンスターもそう長くは生きられないだろう。大自然は無慈悲で甘くない。
 漆黒のモンスターが茂みから出てくる。傾き掛けた日差しを浴び、眩しさに足が止まる。赤い瞳でじっとナツキを睨んだ。だがナツキは、このモンスターの狙いが自分でないことを見抜いていた。足下のケルビを狙っているのだ。自分で餌を採れない子供では、死肉をあさるしか術がない。赤い瞳がチラチラとケルビの死体を見る。ナツキは思わず吹き出しそうになった。瞳に力がこもる。突進するため筋肉が動き出す。ナツキは踏みだそうとしたモンスターの足下にバレットを撃ち込み威嚇した。目の前で弾けた土埃に驚き、黒いモンスターは突進できず身を縮めた。
「ギャウギャウギャウ!」
 モンスターは警戒したまま声でナツキを威嚇した。ナツキは思わず吹き出し笑い出した。一気にジャンプして飛び掛かってくれば、如何にナツキでもその場から離れるしかなかったはずだ。この子供モンスターには、そうする余裕もないのだ。それだけ怖い思いをしながら、何日も生き抜いて来たのかもしれない。吠え続けるモンスターにナツキは話しかけた。
「分かった分かった。お前にも分けてやるから待ってな」
 モンスターとの距離は充分ある。ナツキは視線だけでモンスターを牽制し、ケルビのもも肉を手早く切り取った。肉の塊をポーンと放り投げる。モンスターの顔の前にドサリと落ちた。モンスターは一瞬驚いた顔をすると、恐る恐る肉に顔を寄せ臭いを嗅いだ。久しぶりの肉だ。両手で素早く隠すように押さえ、ガツガツと食い始める。ナツキはフッと笑うと、残りのもも肉も切り取った。食い終わったタイミングで放り投げる。ナツキは自分の取り分も投げてやった。子供のモンスターは夢中になって生肉を食べた。だが、成長期の挙げ句、何日も食っていなかったのだ。ケルビ一頭で足りる筈がない。子供のモンスターは、食べ終わると前足を揃えてナツキにお代わりを催促した。
「ギャウギャウ」
「よわったね……お前、内臓は食うのかい?」
 ナツキはホワイトレバーを投げてやった。モンスターは赤い瞳を輝かせ、嬉しそうにかぶりついた。
「おや。お前の好物だったか」
 嘴を鳴らし嬉しそうに食べたが、それも直ぐに無くなった。
「ギャウ!」
 クリクリした赤い瞳を爛々と輝かせナツキを見ている。『目は口ほどにものを言う』とはハンターにとって重要な格言だ。言葉の通じないモンスターでも、その目を見れば何を考えているかが読める。人間と違い、モンスターの瞳には嘘がない。この子供のモンスターは、ナツキのことを餌をくれる相手と判断したのだ。瞳には敵意の欠片もない。事ここに至り、ナツキは自分の失敗に気が付いた。どうせこの子供は直ぐに死ぬ。目的がケルビの肉と分かった段階で、気にせず立ち去れば良かったのだ。少々威嚇したところで、このモンスターは後を付いて来るだろう。いっそ自分の手で殺すべきか。ナツキは、行儀良く座ってこっちを見ている子供モンスターを見ながら頭を掻いた。
「こりゃ、まいったね」

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