大樹海でクロと別れたナツキは、久しぶりにハンターズギルド本部を訪ねた。ギルド代表室でサガと再会すると、ナツキはさっそくテーブルの上で背嚢をひっくり返した。中から様々なモンスター素材が転がり出てくる。サガは目を見開いてそれらを次々と手に取った。
「まさかこれは尾槌竜の玉石ドボルストーン!? こっちは恐暴竜の宝玉! 雷狼竜の天玉に極上黒真珠まで! これは噂の火竜の天鱗か!! ナツキ、いったい君はどういう旅をしてきたんだ!?」
サガは希少素材の山に手を振るわせた。ナツキは誇らしげに胸を張った。
「いろいろあってね。そんなことより、サガ。こいつでアタシのライトボウガンを強化しておくれよ!」
ナツキは目を輝かせてサガに頼んだ。だがサガは、呆れた顔をしてナツキを見ている。
「え……なに?」
「非常に言いにくいんだが……希少素材だけあっても武器の強化は出来ないんだよ。強化を補う普通の素材もないとね」
ナツキはサガの言葉に白目を剥いた。サガは嬉しそうに希少素材の山を腕に抱えた。
「こいつはギルド工房の装備研究資料として有効活用させてもらうよ。長旅でさぞや疲れただろう。飯でも食べてくつろいでくれ。大した料理はないけどね。いや〜、貴重な素材が手に入った。お――い、工房長はいるか――?」
そう告げると、サガは満面の笑みを浮かべて代表室から出て行った。真っ白に燃え尽きたナツキは、泡を噴いてそのままバッタリ床に倒れた。
おしまい
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