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 act.31 エピローグ999
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 ネオサイラス村。ジルの家に大勢の人が集まっている。リビングのとばりの向こうでは、キュアが出産の時を迎えていた。
「ジル。少しは落ち着かんか! 男がジタバタしても始まらんじゃろ〜」
「はあ……」
 床に腰掛けたウーが、とばりの前をウロウロするジルに、ここに座れと指さした。
「ジル! 生まれたかい?」
 そこへ、服を返り血で染めたカフーが飛び込んできた。
「何じゃ、カフー! 血生臭い格好で入るでない! けがれるじゃろうが!」
 ウーは飛び上がると、すごい剣幕でカフーを追い出した。
「キュアにも栄養付けてもらわなきゃと思って、みんなで大猪を獲ってきたんだ。それじゃあ捌いて、先に宴の用意でもしてるから」
 カフーたちは、荷馬車から落ちそうな大猪を、村の広場へと押していった。
「まったく。ワシまで血生臭くなってしまったわい」
 ウーがぶつぶつ言いながらリビングに戻ると、突然背後から怒鳴られた。
「長老、やはりここでしたか! 長老が不在では開墾計画の決議が出来ないではありませんか!」
「今度はマテイか。お前がまとめとるんじゃ。ワシなどいなくても問題なかろう」
「何を仰います! ネオサイラスの長老として威厳を示していただかねば困ります!」
 何時如何なる時でも折り目正しいマテイの態度に、ウーはげんなりしてため息を吐いた。
 その時、とばりの奥から赤子の泣き声が響いてきた。
「う、生まれたぁ!!」
 ジルがガバッと立ち上がった。全員の視線が声の方へと向けられる。固唾を呑んで見守っていると、厚いとばりが開き、バニラがヒョコッと顔を出した。
「生まれたッス、ジル!」
「オオ! 男か? 女か?」
 ウーたちも駆け寄る。バニラはイヤらしい目つきでクスクスと笑っている。
「どっちでもいいッスよ」
「どっちでもいい?」
 とばりをくぐり、ジルが中へと入る。キュアの隣りに、ふたりの赤ん坊がスヤスヤと眠っていた。
「お兄ちゃんと妹よ。母子共に健康」
 助産婦を務めたマハノンが、ジルに場所を譲った。感動に震えながら、ジルが枕元に座った。
「やった……やったな、キュア!!」
「ジル……」
 涙を浮かべるキュアの手を、ジルは優しく握った。
「オー、双子か!」
「シッ!」
 居たたまれず覗き込むウーたちを、マハノンが唇に指を当てて制した。ジルは我が子を愛しそうに見つめている。
「この子たちの名前だけど……どうしても一つしか思い浮かばないんだ」
「わたしもよ、ジル」
 ふたりは見つめ合い、その名を口にした。
「お兄ちゃんがゼロで」
「妹がメロディー」
 ウーたちもそっと近付いてきた。
「ゼロとメロディーか。何だか嬉しいような懐かしいような、いい名前じゃな」
「村を継ぐ若者として、早速わたしがビシビシ鍛えましょう!」
「早速って、今生まれたばっかッスよ!?」
 新しい命を幸せな笑いが包み込む。ふたりの赤子は、平和な笑みを浮かべ、心地よさそうに眠っている。ふたりの可愛らしい左手の甲には、竜の形をしたあざが刻まれていた。

 
玉繭物語3 〜生命の樹〜
 
終わり

 
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For the best creative work