里親ボランティアを始めて3年目にしてはじめて、ごく一般的なスズメを手がけることになった。赤裸ではないが、まだ羽軸がツンツン残っている。初心者にはちょうど育てごろ。
 わが家の鳥の名前はすべてお菓子にちなむことになっている。足輪の色がピンクと緑だったので、即決。「桜餅のさくら」と「ちまき」。
向かって左
「ちまき」
2日ほど年上らしい
向かって右
「さくら」
2日ほど年下らしい




5月9日
2羽のスズメうちに来る。ふつうのケージにワラフゴごと入れ、80wのヒヨコ電球で保温。
お食事は2〜3時間おき。最初の1回ぐらいしか口を開けないので、強制給餌。エサは……

@ 水に浸したドッグフードとマイナーフードをぐちゃぐちゃとつぶして半々に混ぜたもの。そこにさらに小鳥用の“むきえさ”を少し混ぜる。
A 乳児用ポポンSのうすめ液に浸したミルワーム−半分に切る



5月12日
出してやると2羽ともけっこう飛べる。天井近くの壁にセミのようにとまったり、空中でホバリングしたりと、教えてもいないのになかなかの技術である。


5月14日
スズメの成長ってめちゃくちゃ速いんだなぁ



5月15日

朝、ちまきが具合悪そうにうずくまっていた。すぐに個室(小さいプラケース)入院。高めの温度で保温し、スペシャルドリンク(水にフォーミュラー病鳥用とポポンSをとかしたもの)をスポイトで飲ませ安静を保つ。一眠りしたら元気を回復した。


5月16日
ムキエサの割合を多くする。ドッグフードとマイナーフードはつなぎ程度。同時にケージの床にムキエサをばらまき、入れ物に入れたエサも用意し、自分で食べるよう促す。ミルワームもビタミン漬けのものばかりでなく、小さめのものは生きたままやるようにする。床のエサには見向きもしないが、ミルワームは床から拾って上手に食べる。




5月17日
さくら、床のエサを拾って食べ始める。ちまきの方が大きいのにできない。エサをくわえたさくらを親と勘違いしてか、さかんにさくらの口をつついている。スズメでもだんだん個性が出てくる。


5月18日
スズメってヤツはうるさい!!


5月21日
一人残ったちまき。口の端の黄色いところもあまり目立たなくなり、大人っぽくなってきたが、中身はまだまだ子ども。体をふくらませ、羽を震わせてエサをねだっている。
所用で一日留守にする。ちまきさくらもエサは自分で拾えるようになっているので大丈夫だろうと判断。帰ってきたとき見たら、2羽とも止まり木に止まっていた。その2時間後……家族の「スズメが変だ!」の声にあわててのぞくと、床にさくらがのびていて、それをちまきがさかんにつついていた。すぐに助けだしたが、もう虫の息。体も冷たくなっている。保温もスペシャルドリンクも効果はなく、痙攣を起こし目を閉じ、口を大きく開けてあえいでいる。1時間後、わずかな生を終えた。

ごめんよ、さくら!私が悪かったね。床のエサを拾っているから、てっきり食べられるようになったと思っていたんだけど、きっと足りていなかったんだね。後できくと、スズメは巣立ちの頃が一番難しいらしい。何だ、スズメなんて簡単に育つじゃないか、と一瞬油断した心の隙を突かれたようだ。さくらが身をもって教えてくれたことは無駄にしないから。窓から見える杏の木の下でゆっくりお休み……。



5月24日
ちまきの方は順調に育っている。ミルワームは幼虫も成虫も喜んでバクバク食べるし、青虫も名前の分からない小さな虫もよく食べる。日光浴をさせると外のスズメと鳴き交わしてコミュニケーションをとっている。


地元のスズメにご挨拶

水浴び訓練もできたし、外のスズメとご挨拶もできた。他のスズメとのトラブルもないようだ。というより、お互いまったく無視しあっている。でも、ちまきがピーチク鳴くと、時々チュンチュン大人の声で返事が返ってくる。「よしよし、いつでも仲間に入れてあげるから、おいで」と言ってくれているのだろうか。それとも「おい、チビ、うるさいぞ!」と怒られていたのかも知れない。ああ、スズメ語を解せたらなぁ……。

ともあれ、この調子ならもういつ放野しても大丈夫だろう。







6月5日
放野決行! 朝、ベランダにいつものとおりケージを出し、その前にエサをばらまいた。いつもと違うのはケージのとびらを開けっ放しにしておいたこと。ちまきはすぐに外に出てきた。しばらくエサをついばんだあと、その周辺をうろうろする。そのうち、外に興味を持ち、伸び上がって眺めていたと思ったら、ギリギリの端っこまで行ってしばらくまた下を覗き込んでいる。そのうち意を決して家の前の川に向かって飛び立った。河原の草むらに着地したところまでは見えたが、その後木の陰になってしまって見えなかった。その後何度もベランダにスズメは来たが、全部別の大人のスズメであった。それから2度とちまきの姿は見ていないが、きっと元気にやっていることだろう!
ドアを開けるとすぐに出てきた。
それにしてもエサが多すぎた!
のびあがって外を眺める。


これで、ごく一般的なスズメの記録は終りです。
ご声援有難うございました。




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