僕はセンチメンタルツアラーと何時しかしんみりと語り始めていた。彼は昔付き合っていた彼女と何年か前北海道をバイクで
旅をしたらしい。しかし去年別れてしまった。彼は遠くを見つめながらそう僕に話した。
今回は1人あの時2人で走ったコースと逆のルートで走ると言う。なぜならば彼女も1人北海道にきているらしいのだ。
風のうわさで聞いたらしい。もしかしたら彼女にどこか出会えるかもしれないと彼は笑いながらつぶやき、
マグカップのウイスキーを一気に飲み干した。そして僕はきっと会えるよと言って彼に笑いかけた。
焚き火の火が落ち着き、炭火の静かな灯かりがみんなの顔を赤く照らしている。とても充実したやさしい時間だ
僕はバーボンをゆっくりと飲みながらそんなことを考えていた。

隣のキャンプサイトには男2人がやはり酒を飲んでいる。一瞬目が合ったので一緒に飲むかいと誘った。
この2人の組み合わせはなんとも不思議な感じだ。どうやら友達のようだが1人はいかつくてパンチパーマ、
一見やばそうな感じがする。片方はと言えば痩せ型で色白、気弱なお宅っぽい感じ、どう見ても不釣合いだ。
それはともかくとして二人を交えた宴会がまた再開した。パンチ男はかなり酔っ払ってるようでろれつが回っていない、
それを女房役のような感じでお宅男がフォローする。本当はこっちのほうが影のドンなのではないのだろうか。
そのうち彼らは自分たちの場所に戻っていった。
しばらくするとパンチが中華なべを取り出しチャーハンを作り始めた。ものすごい手つきで。きっとこの男は料理人なのかもしれない。
それを見ていた僕たちは少し味見をさせてくれと言って中華なべを奪い、味見と言いながらほとんど食べてしまった。
こんな場所で本格中華を食べられるとは思いもしなかった。

とにかく今日は不思議な一日だったが、いろんな旅人達との出会いがあり楽しかった。そこには笑いがあり、語らいがあり、
それぞれの旅の意味があり、僕はこの友情の岬、霧多布をいつまでも忘れないだろう。

                                                            おわり
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