霧多府の岬キャンプ場は街からかなり高く登ったところにある高原のような場所だ。周りは、その名のとうり
深い霧に覆われていた。この時間になるとキャンパーがかなり多い。以前に来たときは静かだったのだが。
だけどここはお気に入りの場所だ。
とりあえず疲れた体を引きずり、荷物をバイクから降ろし、丘状の芝生で覆われたテントサイトに場所を確保する。
サイトには笑い声があちこちで聞こえ、肉を焼くにおいが腹が減った僕の胃袋を刺激する。荷物をおきタバコをふかし、
一息ついたところで哲也を探すことにした。まだ来てないのかと駐車場を探してたら、いつもの愛想のいい笑顔が近付いてきた。
テントを張り本日仕入れてきた、肴を広げビールを飲んでいると、女性が2人近付いて来て良かったら食べてくださいと、
おにぎりやら、バーベQやらを持ってきてくれた。この人達は30歳前半ぐらいで、今日は子供会のキャンプらしい。
と言うことは人妻。。。何ともこの響きに弱い。どうやらこの街の町長の娘らしい。よく分からないが、得をした。
しばらくなんやかんや話したあと、彼女たちは戻っていった。そうこうしてると今度は、薄汚い男が2人こっちに
近付き一緒に酒を飲もうと誘ってきた。僕たち2人も二つ返事でオーケー!自分たちの肴と酒を持って、いざ出陣。
そこにはむさ苦しい男達2、3人がたき火の前で溜まっていた。今日も楽しい夜になりそうだ。それにしても今夜は訪問者が多い。
今回も奇妙で人間離れした連中が顔を揃えている。バイクで来たセンチメンタルツアラー、チャリで日本一周している
通称ボロ、バイクに銭湯でよく見かける黄色いケロリンの桶を積んで旅しているケロリン。年は皆18から23ぐらい。
たき火の上の金網に貝がどっさりとのせられ焼かれていた。その貝は、ボロとケロリンで岬の崖をロープで下り
採取してきたものだと自慢げに話した。恐ろしく人間離れした、食糧確保術だ。果たしてこいつらは
、いつもそうして生きているのだろうか。
嬉しそうに焼きあがった貝を僕たちに勧める。食べようとしたとき2人が叫んだ。そこの黒いところは食べちゃ駄目!と。WHY?
と聞くとどうやら黒い部分は、体にとても害があるのだという。どんな害かは、恐ろしくて聞かなかった。そういうことは
早く言って欲しいものだ。やはりこいつらは人間じゃないのかもしれない。密かにそう確信した。
たき火を囲み、酒のピッチも上がりみんな1つになって話が盛り上がった。いつもそうなのだが、酒が入ってくると次第に
それぞれの旅の戦歴の話になってくる。要するに武勇伝だ。それと旅先で出会った奇人変人や伝説の
旅人の話で盛り上がる。これがまた何とも楽しいのだ。いつまでも笑いがつきない。それと同時に
酒も大量に皆の胃袋に吸い込まれていく。やはりたき火の灯りと旅人同士の出会い、語らいは最高の酒の肴なのかもしれない。
そんないかした出会いを求めて旅に出るのだろう。